42. 1日目・周囲の観察

とりあえず販売の流れの確認はできたので、ミューちゃんの後を追って休憩スペースに行くとしよう。


ちょっと時間も空いたことだし周囲を観察してみようかな。


ミューちゃんの対面の椅子に座って敷地の前の通りを眺めてみると、結構な数のプレイヤーが忙しそうに駆け回っているのが見える。たぶん自分たちの店の準備やライバル店のリサーチ等をしてるのだろう。メインのイベントではないけど売上で順位がついて景品がでるらしいから、クランでお店を出しているところは本気度が違うのかもしれない。


「まぁ、僕の店は関係ないかな。」


「みゅ?なにがかんけいないの?」


独り言にミューちゃんが反応してしまった。ちょっと恥ずかしいぞ。


「前の通りをみてごらん、人が忙しそうにしてるでしょ。」


「うん。なにかあわててるね。」


「そうだね、あの人達は自分達のお店の準備とか、似たようなお店の確認をしたりしてるんだよ。」


「ほかのおみせのかくにん?どうして?」


「一番になったら景品がもらえるのと、自分たちの作ったものが一番すごいって自慢したいのかもね。僕のお店は他のお店と競争するつもりがないからね、だから関係ないんだよ。」


「みゅ~、よくわかんない。みゅーは、おにいちゃんのつくったものすきだよ。」


可愛いことを言ってくれる。ナデナデしよう。


「ありがとう。ミューちゃんの為にもっと良いものを作れるように頑張るよ。」


「みゅ~~。えへへ~。」


そんな可愛いミューちゃんだがこのイベントを楽しむには大きな問題が1つある。それは僕が敷地の外に出られないことだ。ミューちゃん一人でプレイヤーがたくさんいるなかをウロウロさせるわけにはいかない。迷子になったり、悪い人に捕まったりしたら、下手をすれば世界が終わる、冗談ではなくて本当に終わる。


だから僕は考えた結果、友達を頼ることにした。とりあえず拓人に依頼をしたところ、PVPの大会以外の時間はフラフラしているとのことだったのでミューちゃんの護衛を任せることにした。開人くんと、未来ちゃんもイベントには参加しないらしく拓人の応援以外やることがないみたいで快く快諾してくれた。


おっ!噂をすればというやつだろうか、前の通りに赤い髪の背の高いイケメンが現れた。聞いていた通りの容姿なので間違いないだろう、顔は現実と一緒だし。


まだこっちには気づいてないのかな?となると、やることは1つ。ここはイタズラの1つでもしてあげるのが友達としての役割だろう。


ということで、インベントリを漁る。なにかいいものないかなー。


フルーツ、フルーツ、果物、果物.......バナナの皮、フルーツ、果物、果物..

インベントリの整理を真面目に考えよう。


バナナの皮をインベントリから取り出す。そう、お馴染みの【魅惑のバナナスリップ】だ。お猿達がバナナを食べる度に在庫が増えるのでインベントリにはそこそこの数がストックされている。


「ミューちゃん、あそこに赤い髪の人がいるでしょ。」


「みゅ?うん。」


「よく見ててね。今からこっちに来るからね。」


【生命の力】をHP50%を代償にして発動。お猿達の鬼ごっこから少し成長して今では変換効率4%になったのだ。ステータスを200%上昇させた状態で全力で赤い髪のイケメンに向かってバナナの皮を色々な思いを込めて投げつけた。イケメン爆発しろ!!


「みゅっ!あかいひとのおかおにあたった~!」


よしっ!ストライクだ!そしてここからだ!


当たったバナナの皮が顔から剥がれ地面に落ちたのをイケメンが確認している。そして、何かに誘われるかのようにバナナの皮を踏んで滑ってこけてしまった。


「あかいひと、ころんだよ~!」


「そうだねー、ころんだねー。」


ああ、僕もあんな感じで転んでいたのか、バナナの皮の被害者が増えたことを心のなかで喜ぼう。

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