40. 悪い笑顔は子供に見せたら駄目!

イベントまであと3日というところで僕は準備不足に頭を抱えていた。


お店の準備は大丈夫、うん、大丈夫だ。運営への申請も無事に通過したし店舗の形態の発注も無事に終わっている。懸念事項だったコップは、取引板で大量に出回っていた同じものを安く仕入れることに成功した。商魂逞しい生産者の人達がたくさんいるのだろう。


他に必要だと思える物の購入と作成は完了している....はずだ。何分一人でやっているので足りない物は多分あるだろうけどなんとかなるはず、と思いたい。


問題はメインのイベントのPVPの大会の方だ。まずアイテムの更新が終わっていない。前回のイベントと代わり映えしないのだ。これでは面白くないし、数も足りない。


装備は更に悪い、武器の【黒い棒】以外は初期装備のままなのだ。考え方によってはこれはこれでありかなと思うけど。こればかりはどうにもなりそうにない。ライフさんや主様に頼めばいくらでも素材は出てきそうだけどなにか違う感じがするし、頼りすぎるのはよくないし、勝つにしろ負けるにしろ自分の力でやってみたい。


黒い棒を振り回す初期装備(村人スタイル)のプレイヤー.......客観的に見ると初心者がふざけて参加しているように見えるのではないかな?


よし!決めた!相手が油断しているところを倒すスタイルでいこう!決して諦めたわけでもないし、自棄になったわけでもないよ。ホントダヨ。


無いものは仕方ない。切り替えよう。イベントまでにアイテムを作らないとね。こんなときは主様よりフクロウな先生に相談してみよう。





「ドラゴンフルーツですか?」


「ホー、その通り。セトくんはまだ採取していなかったはずではないかね?」


先生に相談した結果、ベイビーシリーズの果物を紹介された。


「そうですね。まだ採取したことはないですね。」


「ホーホー、ベイビーソルジャードラゴンフルーツですぞ。少し加工することでこの果物の種は面白いことになるのですぞ。」


先生に詳しく話しを聞いていると、とてもとても面白いことになる物ができることがわかった。


「へー、それはそれは、面白そうですね。」


「ホー、セトくんはやはり顔にでますな。悪い顔をしておりますぞ。ミュー様には見せてはなりませんぞ。」


おっと!顔に出ていたらしい。ミューちゃんが見ているところでは気を付けよう。さっそくお猿たちに頼んで採取に向かおう。




イベント前日。なんとか間に合った!持ち込みアイテムの品数はなんとかなった。ドラゴンフルーツを採取した場所の近くに違う種類の凶悪なベイビーシリーズがあったのもラッキーだった。だけど前回のイベントで出品したアイテムの改良までは手が回らなかった。


それもそのはず、ミューちゃんが目を覚ましてからここのところ、ミューちゃんのお世話をしながらお猿たちと遊び、主様と談笑しながらミューちゃんと遊び、先生の授業を受けながらミューちゃんと遊び、師匠の訓練を受けながらミューちゃんと遊んでいた。


うん、ほとんどミューちゃんと遊んでいた。オリジンの皆さんは「使徒であるセトの仕事」だと言って、ミューちゃんのお世話はすでに僕の生活の一部とかしている。正直に言えば、圧倒的に手が足りない、せめて後1人ミューちゃんの遊び相手が誰かいて欲しい。



「ミューちゃん、明日の準備はできたかな?」


「うん。おきがえもじゅんびできたし、あとはきんとぐーをもっていくだけ~。」


【きん】と【ぐー】、2つ合わせて白金貨2枚(200万円)のキングボールラビットモフモフクッションベッドだ。凄く気に入っているらしく名前をつけるほど大事にしている。


「きんとぐーは、僕が明日インベントリに入れて持っていくからね。」


「わかった~。」


明日は遂にPVPのイベントだ。不安もあるけどそれ以上にワクワクしている。やっと他のプレイヤーと会えるし、コミュニケーションがとれるのだ。


お店も大会もどちらも頑張ろう!


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