31. お金もってる?

マイマザーの所業を運営に報告してから暫くたったある日。


「.....増えてる?」


今日もお菓子を作ろうと氷冷箱の中を確認していると、材料が昨日よりあからさまに増えていることに気が付いた。氷冷箱のなかには卵や牛乳等が多量にストックされている、はっきり言って多少増減していても気付かない程にある。それが目に見えて増えているのだ。


僕以外に誰が使うのだろう?先生か、師匠か、はたまたお猿達か......わからないね。こんなときは主様に素直に聞いてみよう。


「主様、少し聞きたいことがあるのですが。」


今日もリビングのテーブルの上にいる主様の分体に話しかける。


『どうかしましたか?』


「たいしたことではないのですが、氷冷箱の中の材料が増えていたので誰が入れたのか知りたくて、ご存知ないですか?」


『ああ、そのことですか。マジカルモンキー達ですよ。セトのまねをして取引板で物の売り買いをしているみたいですね。昨日はいつもより多く何か買っていましたよ。』


え?取引板ってプレイヤー以外も使えるの?それよりも、【いつもより】って言ったよね。前から氷冷箱に物を出し入れしていたのだろうけど全然気がつかなかったよ。


「ありがとうございます。少しどうなってるのか聞いてきます。」


主様にお礼を言い、そこら辺を動き回っているお猿達に事情を聞いてみることにした。


「おーい、ちょっと集合。」


「キャー?」


なにー?といった感じで五匹とも集まった。


「ねぇ、君達がどうやって取引板を使ってるか見せてくれない?」


「キャ!」


お猿達は短く返事をすると、テーブルのところにある椅子をずりずり押して壁にかけてある取引板の下まで持ってきた。


「キャ、キー、キャ」


「キャキャ」


椅子の座面の上で二匹が話し合っている。静かに成り行きをみていよう。


スクショチャンスだ!お猿の頭の上にお猿が乗っている。なるほど、こうやって高さを確保していたのか。じゃあさっきのはどっちが下になるか話していたのか。それはともかく、二匹が重なっている姿は後ろからみると白玉団子が縦に4つ並んでいるように見える。


「キャー」


お猿は取引板をポチポチといじっている、迷った感じがないので画面の内容は理解しているみたいだ。.....ん?お金もってるのか?


「お金持ってるの?」


「キャッ!」


馬鹿にするな!とでもいった感じで声をあげるのと同時にお猿の小さい手から金貨が姿を表した。


お金を持っているのはわかったけど、どうやって手にいれたのだろうか?


『あら~、今日もさわってるのね。この子達も飽きないわねー。』


ライフさんがふらっと現れた。なるほど、この精霊がお金の出処なのだろう。つまりは僕と同じことをしたわけか。


「ライフさん、こんにちは。この子達いつから取引板で遊んでたんですか?」


『こんにちは、セトちゃん。たしか、プリンを作った次の日くらいだったかな。最初はペチペチ叩いてたけどセトちゃんの使ってるところ思い出したんだと思うよ。』


取引板が設置された次の日には興味を持ってさわっていたらしい。


『お金も持ってないから何もできないみたいで可哀想だから、枯れ葉を渡して自由にさせてみたんだ。そしたらうまいこと売れたみたいでセトちゃんのいない時に材料買ってお菓子を自分達でつくってたよ。』


忘れてた、お猿達もオリジンモンスターだった。ただの可愛いだけのお猿ではなかった。


「お菓子は何が作れるの?」


取引板で遊んでいないお猿達に聞いてみた。


「キャー、キャキャー」


僕を指差しながら一匹のお猿が答えた。.....考えろ、現実のマイシスターとのコミュニケーションと一緒だ。お猿達は僕を常に見ていた、ということはまねをしている。取引板も僕のまねをしてさわりだしたみたいだし。もしかして、僕が作った物ならお猿達も作れるのかな?


「僕が君達の前で作った物なら作れるのかい?」


「キャ!」


正解みたいだ。問題は、お猿達は僕の言うことを100%聞いてくれる訳ではないので、お猿達のやりたいようにやられたら材料がなくなってしまう。あれ?でも増えてたよな、ちょっと聞いてみよう。


「ねぇ、今お金をどれくらいもってるの?」


「キャー?」


取引板をいじっていないお猿の一匹が返事をしてテーブルの上に登った。


ジャラジャラジャラジャラ......


銅貨に銀貨、金貨どんどん出てくる。どんだけ稼いだんだ。


「ライフさん。」


『どうしたの?』


「渡したの枯れ葉だけですか?」


『そうだよ。500枚くらいかな。』


「やりすぎです!」


『えー、なくなるならセトちゃんにもいっぱいあげるよ。』


「今度貰います。」


情けないがまだ生産物を売れる程のクオリティにないのだ。それはそれとして、お猿達は作った物の材料も補充していたみたいだし、資金もある、僕の懸念はなくなったに等しいので今後もお猿達の好きにさせよう、その方がなんだか良い気がする。


さて、そうと決まれば、お猿達のレパートリーを増やすためにも新しいお菓子を作らないとね。


今日は、パンケーキを作ろう。ハチミツたっぷりのバニラアイスを添えたやつにしよう。.....バニラあるかな?

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