30. 初めてのGMコール

委員長からPVPのイベント情報をもらった夜に運営のアナウンスが流れた。内容はこうだ。


【第二回 来訪者頂上決戦!!開幕!!】

来月末に、来訪者のNo.1を決定するぞ。魔法やスキル、LVによる区別はなしの無差別大会だ。イベントの概要は全員にメールを送信するので確認してほしい。我こそはと思う来訪者はどんどん参加してくれ。


そして、届いたメールがこれだ。


【ヤッホー、楽しくやってるみたいね。あなたの大好きなお母様よ。PVPのイベントは絶対出なさい。そしてド派手になんかやりなさい。刺激のないプレイヤーどもにゲームとは何かと言うのを見せつけてやりなさい。そして、一番は私を楽しませなさい。じゃ、よろしくねー。】


僕はメニューを呼び出してGMコールをした。


『いつもΩファンタジーで遊んでいただきありがとうございます。GMの浜野です。どうかされましたか?』


女性の声だった。マイマザーではないのでこのまま用件を伝えよう。


「すいません。イベントに関してのメールが運営から送られてきたのですが、内容がおかしいので確認してください。」


『承りました。確認いたしますので少々お待ちください。............申し訳ございません。一部の者の介入があったみたいです。再度正式なメールを送信いたします。』


「母がすいません。お手数ですが、お願いします。」


過去のポエミーな日記を紙に書いて冷蔵庫の扉に張り付けてやろう。


『...........』


返事がないぞ?どうかしたのかな。


「浜野さん、どうかされましたか?」


『ハッ!申し訳ありません。清音さんのご家族にまともな方がいらっしゃると思わなかったので思考が止まっていました。』


ハハハハ!マイマザーちゃんと仕事してんのか!


「ははは、気にしないでください。思い付きとテンションで動いてる人なので。」


『私の立場からは何も言えませんが。個人的に応援していますので頑張ってください。メールの方は正式なものが届いているはずなので、後程ご確認願います。では、また何かありましたらご連絡してください。』


「ありがとうございます。」


さて、改めてイベントの概要を確認しよう。


・参加人数により予選の形式が変わる

・本選は一対一のトーナメント方式、出場枠は参加人数により増減する

・使用不可なスキルは無し

・持ち込み可能なアイテムは5種類各5個まで

・装備制限無し、但し装備中の物に限る

・プレイヤーLV、スキルLV、ステータスはそのまま適応される

・会場へは転移アイテムを用いて移動する(後日配布)

・イベント当日、会場の場所のみ時間加速が行われる

・細かいルールは、大会当日に説明



ふむ、大体は予想通りの内容だね。気にしないといけないのは、予選かな。トーナメント、勝抜き、サバイバル色々予想されるけど、マイマザーの【ド派手に】を考慮するとサバイバルが濃厚な感じがする。


持ち込みアイテムも厳選しないとね、たぶん一般的なプレイヤーは回復アイテムをメインで持ってくるはずだ。こっちも回復アイテムを新しく開発するべきか.......ダメだ、普通すぎる、後で何を言われるかわからない。楽しませるつもりはないけど、出るからには普通ではダメだ。何より僕が楽しくない。


 主様の依頼のお菓子作りを継続で行いつつ、アイテムと装備の製造。各スキルのLV上げは先生と師匠に相談しよう。やることがたくさんあるぞ。


それに僕のLVは1だ。他のプレイヤーと比べてスキルはいいものがあるかもしれないけどステータスは弱いはずだ。予選で負ける可能性も大いにあり得る。もちろん出るからには勝つつもりだけど、手も足もでない可能性も考えておいた方がいいかもね。


取り敢えず、お菓子をたくさん作ってマスタークラフトのLVを上げよう。今日は石窯を使ってみるつもりなので、焼き菓子の定番のクッキーを作ろうかな。


お猿たちにもそれぞれ個性があるみたいで、お菓子を作っていると5匹とも集まってくるのは変わらないけど、お願いすると手伝ってくれるお猿が2匹いる。近いうちに見分けがつくように何か考えないといけないかな。


クッキー生地も完成したところで、型抜きようの枠がないことに気が付いた。

無いものはしょうがないので、今回は手でちぎって成形しよう。できたものをフライパンの上に並べていく、鉄板みたいなものがあればよかったけど取引板には出品されていなかったのだ。鍛治ができるようになったら色々作ろう。


170℃で15分くらいかな、石窯の扉の横についているつまみを回す。余熱はいらないみたいだ、ここは流石魔道具なのだろう。クッキーの形が少し不揃いだけど手作り感があっていいということにしておこう。



『おや、今日はクッキーですか。』


できたクッキーをリビングの机に置いたタイミングで主様からの念話が飛んできた。


「ええ、道具が足りないので完璧とは言えませんが。」


石窯も問題なく使えたし、稼働中のMP消費も全然気にならなかった。というか減ってなかった、MP自然回復の量の方が多かったみたいだ。


クッキー ★4

シンプルなクッキー。保存のきく焼き菓子。HP.MP.SP10%回復

工夫が足りたいのが残念× アレンジに期待☆ 女神的に▲


うーん、テキストはシンプルだけど。また変な意見がくっついてる。.....よしっ!スルーだ。


「キャー」


「キャ、キャー」


うんうん、この前のプリンほどじゃないけど喜んでるみたいだ。余ったら保存もきくし、他のお菓子と組み合わせることもできる。また明日、違うお菓子を作ろう。


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