28. 試作プリン
ボウルを2つ用意し、卵を割って卵黄と卵白に分けていく。
「さわったらダメだよ。」
「キャー、キャー」
卵を割り出したくらいから、お猿達がシンクの端に座ったり、僕の体に登ったりしているのだ。目を離すと手を伸ばしてくるので常に注意を払う必要がある。
「今回は試作だし、シンプルにしよう。」
卵黄の入ったボウルに牛乳と砂糖を加え、よくかき混ぜる。よし、これでプリン液の完成だ。コンロに水を張った鍋を置き、沸騰させる。
「.....しまった、器がない。.....仕方ない、今回はこのままいこう。時間がかかるけどしょうがないかな。」
「キャー?」
「何でもないよ、もう少し待っててね。」
普通は小さい容器に入れて鍋に入れて蒸すのだけど、容器のことを忘れていたので、ボウルのままいくことにした。
さて、蒸している間に時間があるので、卵白を使ってメレンゲを作っていこう。卵白の入ったボウルに砂糖を入れて泡立て器でひたすら混ぜる。
カシャカシャカシャカシャ。無心で混ぜ続けるのだ。
氷があればもう少し楽にできていたのに、事前に用意できていなかったのが悔やまれる。
「キャー」
「こらこら、ダメだよ。まだ美味しくないからね。」
またお猿が手を伸ばしてきたので軽く注意する。
くいくい、と服を別のお猿に引っ張られた。
「キャー、キャー」
「なんだ?手伝ってくれるのか?」
「キャー」
ちょっと疲れたのでお猿たちに任せてみることにした。
「じゃあ、ちょっとお願いしようかな。」
「キャー!」
任せて!と、言わんばかりに鳴かれたのでお任せすることにした。
「さっき僕がしてたみたいに、ぐるぐるして、白くてフワフワになるまで混ぜるんだよ。」
「キャッ!!」
ラジャッ!!っと、元気よく返事されたような気がした。
「キ、ウキ、キャー」
「キャー」
お猿が話し合っている?2匹だ。他のお猿たちは遠巻きに見ているようだ。
お猿が泡立て器をボウルから流しへポイッと投げる。
「へ?」
いやいや、なに投げてんの?!
「ウキャー!」
イエーイ!って感じだろうか、まだだ、まだ食材を無駄にしていないので注意する必要はないはずだ、お猿たちを信じよう。
「キ、キャー」
「キャキャー」
1匹のお猿が抱きつくように横からボウルを両手で押さえた。もう1匹は中を覗き込むようにして立っている。
チャパチャパ.....水分が跳ねるような音が聞こえてきた。
おや?混ざってる?.....お猿2匹は動いてないな。ということは、魔法か!さすがマジカルモンキー。確かに現実ではないし料理に魔法を使っていけないと言われたわけでもない。どうやら、僕の視野が狭くなっていたみたいだ。
魔力視を発動し魔力の流れを見てみる。日々の努力のお陰で他者の魔力の流れを見れるように最近なったのだ。
「魔力を浸透させてるのか、なるほど。」
魔力を浸透させ、もう片方がそれを動かしているのだろう。僕にできるかな?今度練習してみよう。
ほどなくしてメレンゲが完成した。考えていたより早く終わったので、プリンの蒸しが終わっていない。フライパンを用意してカラメル作りに入ろう。
フライパンに水を少し入れ、砂糖を投入する。甘すぎるとプリンの味がカラメルの味になってしまうので濃すぎず薄くしすぎずを意識して作るのだ。ちょっと苦味があるとプリンが美味しく感じるので、オレンジの皮を少し刻んで入れる。うん、いい感じだ。
プリンもいい感じに蒸し終わり、氷冷箱にそのまま入れて冷やす。ボウルで作ったのでどうなるかと思ったけど何とかうまくいってよかった。
「キャーー」
「もう少しだよ。」
まだー。と、言っているように聞こえる。
プリンの温度が下がるのは一瞬だった。さすが魔道具なのか、ゲームだからねなのか、どっちのリアクションが正解かわからなかった。
リビングのテーブルの上に大きめの平皿を用意しボウルをひっくり返す。ボウルの底をトントン叩き空気をいれプリンを皿へ落とす。緊張の瞬間だここで重力に負けてグチャッと潰れてしまえばボウルプリンは失敗に終わってしまう。
そっと平皿からボウルを離す、ちゃんとプリンは剥がれていたようですんなり持ち上がっていく。よし!成功だ、潰れずにプルンプルンしている。
完成したボウルプリンに少し苦味のあるカラメルをまんべんなくかけ、メレンゲを添えて完成だ。
プリン(特大)★5
スタンダードな固めのプリン。素材を活かした昔ながらのプリン。食後三時間HPの自然回復量UP(中)。
素朴だけど食べやすさが魅力🖤カラメルの少しの苦味が素敵🖤女神的に◎
......なんだこれ、テキストにおかしな文章があるぞ。.....害はないみたいだし放っておこう、【女神的に】は放置だ。主様の機嫌が悪くなるようなことは口にしないし、考えない方がいいはずだ。だからスルーだ。
「さあ、完成だ。またせたね、食べていいよ。」
お猿たちはスプーンを持ってスタンバイは万全だった。すぐにプリンにスプーンを突き刺して食べ始めた。
「ウキャー」
「キャー」
「美味しそうで何よりだよ。」
試作で喜んでもらえてよかった。プリンは妹の琴音によく作ってあげていたから少し自信があったのだ。
『プリンですか。』
主様から、念話が飛んできた。まぁ、目の前でお猿たちがはしゃぎながら食べているのだ興味も引くのだろう。
「ええ、主様も食べますか?器の用意してなかったので大きいものしかないですが。」
『では、一口いただきましょう。』
どうやって食べるのか見ていると、お猿がスプーンでプリンをすくって主様に食べさせた。
『ふむ、いいですね。もう少し素材を良くすればもっと美味しくなるでしょう。』
「ありがとうございます。今回は、試作なので簡単な物ですが手の込んだものもその内作れるようになると思います。素材に関してはライフさんに、協力してもらって探してみます。」
お金がないからね。ライフさんの枯れ葉をまた売らないといけない。今回作ったプリンみたいな試作の料理を売ってもいいかもしれないね。
『期待しています。すぐにと言うわけではありませんのでゆっくりで構いませんよ。』
「わかりました。知人からレシピも教えてもらいましたので色々やってみます。」
美味しそうに食べるお猿たちを見ながら、主様の優しさに全力で答えようと僕は改めて思った。優しい主様からの依頼だ絶対にこなさなくてはならない。
....リアルでも練習しよう。早速今日の夕飯の手伝いから始めるとしよう。
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