17. みんな大好き時短アイテム
『おや、もう戻ったのですか?』
「ええ、持っていった本は読み終わりましたので。ページ数は多かったですが、挿し絵の量もあったので思ったより時間はかかりませんでした。」
昼までに制覇すると誓った【植物図鑑】は、なんと三時間で読み終えてしまった。もしかしたら、途中でスキルか何か取得したのかも知れないけど、読書中に通知がくるのは鬱陶しいのでしばらくはoffにしておこう。
「もう2、3冊ほど読んで、いったんあちらに帰ろうかと思います。」
『そうですか、何かあれば声を掛けてください。』
さて、次は何を読もうかな、目の前にある本の山を見る。何冊か植物図鑑より読みごたえのありそうな本が目に入ったが見えてないことにした。図鑑が厚みのある本だったので、ちょっと薄い本を手に取ってみた。
【初級 錬金術】とタイトルにあった。錬金術の教本かな、パラパラと流し読みしてみる。器具の使い方や簡単なレシピ等が図解で描かれている。
『おや、それはスキル書ですね。』
......スキル書だと!レトロゲームでもよくある、読むと技やスキルが覚えられる便利アイテム。みんな大好き時短アイテム。同じものがダブると倉庫やインベントリの肥やしになるガッカリアイテム。の、あの!!
「スキル書ですか?ただの教本に見えますけど?」
興奮を表に出さないように質問をしてみた。
『ええ、力を感じますので間違いないでしょう。資質があれば最後まで読むとスキルを習得できるはずです。』
「資質があればですか。」
『フクロウが無駄な物を渡すとは思えませんので、セトには資質があるのでしょう。取り敢えず最後まで読んでみることです。』
「わかりました。」
主様と、先生を信じて最後まで読んでみよう。その前に、通知の設定をONに戻しておこう。
今回はログハウスのリビングで椅子に座って読書している。
マジカルモンキー達は机の上に丸まって寝ている。モフモフだ今日もスクショを撮っておこう。今回はお猿2匹に主様とのスリーショットだ。カシャッとね。よし、集中して読書に励もう。
.........【スキル 錬金術 初級 を習得しました】
おお!?覚えた。ちょうど読み終わったタイミングで通知が来た。
「主様、ちゃんとスキルを習得出来ました。」
『おめでとうございます。フクロウから預かった物の中にスキル書が他にもありましたので分けておきましたよ。』
「ありがとうございます。」
なんて気遣いのできる人、いや亀なんだ。
主様が分けてくれたスキル書を幾つか手に取ってみる。
【調合 初級】【鍛冶 初級】【木工 初級】【細工 初級】・・・・
生産系の初級のスキル書が沢山あった。ありがたい。
生産系のスキルは技術が必要なので時間が多大にかかるはずだ、リアルなゲームなのでそこの手間も変わらないだろう、そこをある程度短縮出来るのは凄くありがたい。
昼食でログアウトするまでに読めるだけ読んで、僕はログアウトした。
「兄さん、Ωでどこにいるの?」
昼食が終わったタイミングで、珍しく妹の琴音の方から質問された。
「一番大きい大陸から南へ一月の海の上かな。」
「.......?」
首を傾けて不思議そうな顔をしたので、もう少しこちらから話を振ることにした。
「アイランドタートルっていうモンスターの甲羅の上にいるんだ。だから、琴音とゲームの中で遊ぶのは少し時間がかかるかな。」
「......。」
無言は、怖い。ちょっと不機嫌になっているな。ここは、話題を変えよう。
「モカさんも、やってるらしいよ。琴音もやってるって伝えといたからΩで探してみたらどうかな?」
「......モカ姉さん。」
琴音は、モカさんのことを姉さんと呼ぶ。だが、同じくらいの付き合いのある拓人は、兄さんとは呼ばれない。前に理由を聞いたら「よく泣くから。」と、言っていた。頑張れ、拓人。
「結構前からΩを友達と一緒にやっているみたいだから、色々教えてもらったらどうかな?」
「....うん、連絡とってみる。」
ごめんよ、モカさん。妹の面倒を頼んだ。
僕は心の中でモカさんに謝罪しつつ、ログインするために自分の部屋へ戻った。
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