第165話貴族の青年
日々売り上げが伸びていく露店で、私達は忙しくハンバーガーとカツサンドを作っていた。
時々困ったお客さんは要るけど、大分安定した営業が出来る様になっている。
「いらっしゃいませー!」
大きな声で呼び込みをするアベルとマーナ。
「最後尾はこちらになります!」
アントニーくんとチェスターくんが列の整理をしてくれていた。
残りの私を含めた女性陣は料理を作って受け渡していた。
「こちらハンバーガーになります、お熱いので気を付けてお召し上がりください」
私は今日は渡す役だ、接客のアルバイトの感覚で笑顔で手渡していく、皆嬉しそうに受け取ってくれるので私も嬉しくなる。
私達は一生懸命お客さんの対応をしていると露店の前に一台の馬車が止まった。
馬車自体は珍しくない、私達の露店がある場所は商業ギルドの目の前だから、取引の為商人の馬車が出入りしている場所だから、馬車が来ることは珍しくない。
でも私達の露店の前に止まった馬車は、豪華な装飾がされたボックスタイプの馬車で、ドアには紋章があしらわれていた。
調理していた私達も並んでいたお客さんも全員の目がその馬車に向かっていた。
私達が注目する中、御者の男性が御者台から降り馬車のドアを開く。
開かれたドアから降りてきた者は、金髪を肩まで伸ばしグレイの瞳をした豪華な服を着た青年だった。
年齢は私より少し上かしら?17、8歳ぐらいに見える。
整った顔立ちのその青年は自信に満ちたグレイの瞳で露店にいる私達を見渡し。
「最近この町で人気になっている料理が有ると聞いて着て見たが・・・露店では無いか、本当にこの様な露店でそんなに美味い物をだしているのか?」
青年は髪をかき上げながら呟く、するといつの間にかいた執事服を着た老紳士が頭を深く下げながら答えた。
「ええ、今、巷で噂のカツサンドと言う物とハンバーガーと言う物になります。
坊ちゃまが態々来ずとも私が代わりに買ってきましたのですが・・・」
白髪をオールバックに纏め、片目にモノクルをした老紳士の丁寧な所作で青年に言う。
その動きの一つ一つが洗礼されていて、執事服の下でもわかる筋肉の隆起が強者の風格を醸し出していた。
この執事さんギルバートさんぐらい強いわね、動きに無駄が無い。
「このトラットの名物になっていると言うでは無いか、ならばどういった料理でどんな者たちがやっているのか気になるでは無いか」
私が老執事さんに気を取られている間に青年が何か言っていたけど、視察にでも来たのかしら?この人貴族よね?なのに自分で来たんだ、結構行動力有るのね。
「それでこの露店の店主は誰だ?」
青年の声に私は露店を回り込み、青年の前に出るとお辞儀をしながら答えた。
「私がこの露店の店主のマリアと申します、貴族様とお見受けしますが態々ご足労いただきありがとうございます」
私が青年の前で丁寧に挨拶をしてお辞儀から身体を起こす。
改めて顔を見ると青年は顔を赤らめ呆けていた。
少しの間静まり返り、返事が無い青年に声を掛けようかと思った所で、老紳士が横から肘で突いて「坊ちゃま?」と声を開けた。
相変わらず顔の赤い青年は老紳士の声に反応し。
「え、あ、ああお前がこの露店の店主か?では僕に話題の料理を持ってまいれ」
青年の言葉を聞き私は動こうとしたけど、注文を聞いていなかったことを忘れていてもう一度青年に抜き合い注文を聞いた。
「どちらをお買い上げですか?カツサンドでしょうかハンバーガーでしょうか?」
私が聞くと青年はまだ赤い顔で「両方だ!」と言った。
その声を聞いたラナちゃんがカツを揚げ始め、マリーダさんがハンバーグを焼き始めた。
「貴方はもう結婚されているのか?」
私も料理の為に露店に移動しようした所で青年が声を掛けてきた。
私は最初何を言われたのか解らなくてキョトンとしてしまったが、内容を理解して青年に微笑みながら。
「いませんよ、でも今は結婚は考えていません」
私は青年の質問に答えると青年は一度肩を落として心底ガッカリした顔をしたけど、すぐ顔を上げて。
「今結婚相手がいないのなら、僕と結婚を前提に付き合っては頂けないだろうか?」
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