第109話見張りの一幕
マーナと話しながら魔物が来ないか見張りをする。
話をしながら過ごしていると、あっという間に交代時間の深夜になっていた。
私はそろそろ交代の時間と思い立ち上がって男性陣のテントへ向かった。
テントの中に入ると、毛布を羽織ったアベルとアトムくんが眠っている。
二人ともぐっすり眠っていたので、私が入って来たことに気付いていなかった。
私はまずアベルを起こそうと肩を掴んで揺すりながら声を掛けた。
「アベル起きて、交代の時間ですよ」
私が声を掛けながら、アベルの身体を揺すっていると、眠そうな声を漏らしながら薄目を開けた。
「う・・・ふぁ~、交代の時間か?」
欠伸をしながら聞いてきたアベルに、私は「はい」と答えると、アベルは上半身を起こし、まだ眠そうに目を擦りながら、もう一度欠伸をした。
そんなアベルが起きるのを確認してから、アトムくんを起こすために声を掛けた。
アトムくんの肩を揺すり起こすと、目を擦りながら身体を起こし、まだ焦点があっていない目で私を見ながら、話しかけてきた。
「もう、交代の時間ですか?」
2人が起きた所で私は頷いて答えた。
「交代の時間ですよ、川も近いですから顔を洗えば少しはすっきりするかもしれませんよ」
私は声を掛けると男性陣のテントから出て焚火迄戻って来た。
しばらくすると、アベルとアトムくんがテントから出てきた。
二人はテントを出た所で伸びをしてから焚火の所まで歩いてきた。
「お待たせ、交代するよ」
アベルは言いながら焚火の近くに腰を下ろすと、マーナがお茶の入ったカップをアベルに渡した。
アベルはカップを受け取りながら、周りを確認してから聞いてきた。
「何もなかったか?」
アベルの質問にマーナは頷きながら。
「何もなかったよ」
マーナは答えると立ち上がり伸びをしてから。
「じゃあ、あたし達は休むね、マリア行こう」
マーナはそう言い残し、女性陣用のテントに入っていった。
私はアトムくんにお茶の入ったカップを渡すと、焚火に掛かったポットを指さし。
「もっと飲みたいときはその中に入ってますからね」
私はポットのことを教えるとマーナに続き「じゃあ、おやすみなさい」と声を掛け、マーナを追いかけてテントに入った。
side アベル
俺はマーナ達がテントに入っていくのを見送った後、お茶を飲みながらゆっくりしていた。
アトムもお茶を飲み一息ついた後、キョロキョロと周りを見始めた。
たぶん見張りのために気を張ってるんだろう、俺はクスリと小さく笑いアトムに声を掛けた。
「そんなに気を張ってると疲れちまうぞ」
俺が声を掛けるとアトムは大きく息を吐き、肩に入っていた力を抜いて答えた。
「そうですね、俺、野営って初めて何でちょっと緊張してたみたいです」
誤ったアトムは、今度は剣を取り出して磨き始めた。
布で丹念に磨いては焚火の光に照らし、汚れが無いか見てはまた磨いていた。
そんなアトムを見ていて、俺もエアロの剣を取り出して磨き始めた。
剣を磨きながら俺はアトムに聞いてみた。
「その剣大事にしてるんだな」
俺が聞くとアトムは顔を上げてから笑い、答えた。
「そうですね、この剣は無力な俺にマリアさんがくれた力ですから、何も無かった俺に力をくれたのはあの人です。
今ラナや孤児院のチビ達が笑っていられるのも、全部マリアさんのお陰です、だから少しでも俺はあの人の力になりたいです」
アトムは剣を磨きながら、決意に満ちた声で俺の質問に答えた。
その声を聞いて俺は、エアロの剣を焚火に翳しながら考えた。
俺も同じだな・・・死にそうになって、マリアに助けてもらって、パーティーまで組んでもらって、防具も武器も貸して貰って、おかげでオークが普通に狩れるようになった。
それだけじゃなくてワーラントやブッシュメカックまで倒せるようになった。
まあ、あの2種に関しては、マリアが居なかったら倒せなかったと思う。
正直、俺とマーナだけだったら、確実にやられてたはずだ。
おかげで安定して稼げるようになって、上手い飯も食わせてもらえる。
なんか考えるとマリアに頼ってばっかだな、せめて何か、マリアの力になれることがあればいいんだけどな。
俺はアトムの気持ちを聞いて、自分もマリアに返し切れない恩があることを思い出していた。
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