第97話私心配です

この5日間でアベル達は変わりなく過ごしていた。

 冒険者ギルドもこの5日間でちょっと変化があった。

 私と決闘をしたボックスが、その日の夜に自分のパーティーを解散して旅に出たみたい。

 そんなに私にやられたこと、堪えたのかしら?

 もし、私の言葉に思う所があって旅に出たのなら、さらに強くなって帰って来るのかもしれないわね。


冒険者ギルドでは、ボックスのパーティーの解散とボックスの旅立ちの話題で賑わっていた。

 私達が朝の掲示板の前で依頼張り出しを待っていると、レインさんが私達に近づいてきた。

 この忙しい朝に態々話しかけてくることが稀なので、不思議そうに見ていると、レインさんが話し始めた。


「忙しい時にすいません、皆さんにはギルドから指名依頼がございます」


レインさんの言葉に私達は顔を見合わせた。

 私達ってそんなにランクも高く無いのに珍しいわね、でも指名が来るぐらいには名声が上がって来たのかしら?

 私達はお互いの顔を見回してがら、緊張と興味が綯交ぜになった顔をしていた。

 そんな私達にレインさんは依頼の内容を伝えるためにと3階会議室に向かうことになった。

 

レインさんに連れていかれた会議室に入ると、中にはギルバートさんが待っていた。

 私達が会議室に入ると、レインさんは一礼して会議室から出て行ってしまった。

 取り残された私達はギルバートさんに注目すると、ギルバートさんが話し始めた。


「取り合えず座り給え」


ギルバートさんに促されて私達が席に付くと、ギルバートさんが話始めた。


「朝早くからすまないね、君たちには北東の森にいって、以前と同じ状態に戻っているか確認して来て貰いたい」


ギルバートさんの話を聞いて私はどうしようか悩んでしまった。

 北東の森は広大で、1日では絶対に無理だからだ。

 孤児院の子達には、戦えるようになってきている子もいるけど、でも何日も離れて大丈夫かしら?

 料理はラナちゃんができるようになってきているから、心配ないと思うけど、問題はあのあたりスラムが近いから、余り治安が良く無いのよね。

 あの子達に何かあったらと思うと、なかなか遠出が出来ないのよ。


私が悩んでいると、アベル達が私の様子を窺って話しかけてきた。


「マリア、孤児院の子たちが心配なんだろ?ならギルバートさんに、1日一回誰かに見に行ってもらうようにしたら、いいんじゃないか?」


アベルの提案にギルバートさんも頷き。


「孤児院の確認ぐらいならランクの低い冒険者でもできるから、依頼として出せるぞ」


アベルとギルバートさんの提案に、私はどうしようか迷ってしまった。

 問題はその確認してくれる冒険者が、信用できるかなのよね、冒険者って結構乱暴な人も多いから、子供たちと喧嘩になったら困るもの。

 特にアントニーくんは、結構物おじしないで、何でも気になったことを言っちゃうから、喧嘩にならないか心配なのよね。


2人が提案した件に私は悩んでいると、ギルバートさんが更に提案してくれた。


「もし気になる点があるなら、面接してみたらどうだ?」


ギルバートさんの提案に、私は心配ではあるけど頷いた。

 私が頷いたので、ギルバートさんは孤児院の確認の依頼を、どうするか話し始めた。


「取り合えず報酬はお前らの報酬からだせばいいか?」


ギルバートさんが孤児院確認の報酬を聞いてきたので、私はギルバートさんに聞いてみた。


「普通こういう依頼は、どのぐらいが報酬になるんですか?」


私が聞くとギルバートさんは、顎に手を当て摩りながら答えた。


「簡単な依頼だし、100ローンってとこだろうな」


ギルバートさんの答えにアベルも頷きながら。


「銅等級の時によくやったな~町のお手伝い依頼」


アベルはいいながら、苦笑いをしていた。

 アベルの呟きに、マーナも頷き、アトムくんも一緒に頷いていた。


「じゃあ、依頼料は一回100ローンで、期間はお前たちが帰ってくるまででいいな?」


ギルバートさんの言葉に皆で頷いて肯定して見せた。

 それから、ギルバートさんが依頼書を書き、ギルド職員を呼ぶと依頼を張り出すように言って、職員さんが出て行くとこちらの依頼の内容を話し始めた。


「これで心配はないな?まあお前たちに依頼する内容は、北東の森に行って最低3日は過ごして、生態系が元に戻っているか確認してもらいたい。

 浅瀬にワーラントやブッシュメカックなんかがいなきゃ、戻って来ても構わない」


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