第84話商隊

アトムくんの武器も決まったことなので、改めて北東の森に向かうことにした。

 アトムくんは自分の武器が嬉しいのか、武器を振りながら歩いていた。

 そんなアトムくんにアベルが笑いながら注意した。


「アトム!嬉しいのはわかるが、余り振り回すと事故の元だぞ」


アベルの言葉に反応して、そちらを見ながら双剣を鞘に納めてから、頷き答えた。


「分かりました、大体の範囲も分かりましたから、素振りはこのくらいにしておきます」


アトムくんの返答を聞いて、アベルは驚愕してしまった。

 私も嬉しくて振り回してるだけだと思っていたのに、攻撃範囲を確認していたなんて、どこのプロハンターさんよそのうち鬼人化しそうで怖いわね。

 さすがに鬼人化なんてスキル無かったけど、それに近いスキルは有るから、もしアトムくんが双剣を使いこなすことができれば、覚えさせても良いわね。

 私が考え事をしていると、剣戟の音と怒号が聞こえてきた。


私達が進む先を見ると300メートルほど先で、馬車らしき影と、その周りで動き回ている人のようなものが見えた。

 その周りには人より一回り大きいものも見えたので、たぶん魔物に襲われているんだと思う。

 私達は誰からと言わず走り出し、私は皆に指示を出した。


「マーナ、影縫いで魔物の動きを止めて、アベルとアトムくんは動きの止まった魔物の息の根を止めて!私は怪我人がいないか確認した後戦闘を手伝います」


私が走りながら言うと皆頷いて、準備のため武器を抜き弓を引いていた。

 近づくほど状況が分かるようになってきた。

 どうもオークの集団見たい、見える所にいるのは4匹ほどだけど、その中に装備のいいオークが一体いて、どうも連携をとって、馬車を守っている冒険者を追い詰めているようね。

 ブレストプレートに大剣を持ったオークが、指さしながら、他のオークたちに支持を与えていたので、私はマーナに影縫いの指示を出した。


「マーナ!あの偉そうなオークを一番先に動きを止めてください」


私の指示を聞いたマーナが、後100メートルで敵に接近できる場所で止まり弓を引き構えた。

 キャトルーはマーナが止まったことに合わせて、私の肩から飛び降りマーナの近くで立ち止まった。


「ボクはマーナさんと一緒にいますにゃ」


 マーナが構えている間も私達はオークに近づいて、二人が切りかかれる距離に入った所で、マーナの弓がオークの影に刺さった。


「フゴ、フゴオオオ!」


ブレストプレートを着たオークは、動けないことに気付くと叫び声をあげていたが、直ぐにアベルに首を飛ばされ、オークは首から血を噴水の様に上げた。

 多分上位種だったのだろうオークがやられて、浮足立っているオークたちの下に、次々と影縫いの矢が撃ち込まれていく。

 マーナの影縫いの矢に合わせるように、アベルとアトムくんで手分けして、オーク達の首を跳ねて行った。

 その隙に私は馬車に近づき、怪我人がいないか馬車の護衛の冒険者に聞いていた。


「加勢します、怪我人はいませんか?」


私が声を掛けると、リーダーだろう男がこちらに振り向き、返事をしてきた。

 

「すまねえ、馬車の車輪にもたれかかってる仲間を見てやってくれ!」


リーダーの返事を聞いて、私は馬車の車輪の辺りに視線を向けると、小柄な男性が腕を押さえて座り込んでいた。

 小柄な男性に駆け寄ると、声を掛けて意識が有るか確かめる、男性は痛みを耐えながら苦しそうに答えた。


「大丈夫ですか?」私が声を掛けると「ああ、腕が折れてるが意識は有るぜ」と返事があった。


私は直ぐに小柄な男性に『ヒール』を掛け傷を癒すと、周りの状況を確認した。

 馬車の前方にいたオークは、アベル達の攻撃で後2匹にまで減っていた。

 馬車の後ろにいたオークは2匹とも健在で、何とか一対一で止めて居る状態だった。


私は二人の冒険者に聞こえるように指示を出した。


「お二人とも2匹の攻撃を防ぎますので、隙を見て攻撃してください」


二人の冒険者に声を掛け、冒険者に向けられた攻撃をナイトシールドで防ぐ。

 オークは突然現れて自分の攻撃を止めている私に驚いているようで、一撃入れた後どうしたらいいか辺りを見回したが、結局攻撃することを決めたようで、手に持った棍棒を振り抜いてきた。

 その攻撃も私が受けると「ブフゥ!」と怒気を孕んだ鼻息を吹き出し、更に攻撃するために棍棒を振りかざしてきた。

 私が一匹のオークの攻撃を受けている間にもう1匹のオークが冒険者を攻撃しようとしていたので私はそちらの防御に入った。

 ゴウンと鈍い音をたて棍棒は私の盾に受け止められ、私を攻撃していたオークは空振りをして前のめりによろめいていた。

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