第39話解体は初めてです

私が装備を整え、アベル達が見ている方を向くと、5匹のウルフがこちらに駆けて来る所だった。

 私は盾を前に掲げ、アベルに並ぶ様に立つ、アベルに目配せをしてから、私は左から駆けて来るウルフに視線を向けると、丁度マーナが矢を放った。

 マーナの放った矢は、先頭を走っていたウルフの眉間に吸い込まれ、命中したウルフはつんのめるように倒れ、動かなくなった。

 後続のウルフは止まるかっと思ったが、止まる気配を見せず、そのまま突っ込んでくる。


前衛にいた私とアベルに、ウルフが接触する寸前に、「このぅ!」と言う気合の乗った声と共に、マーナがもう一射放ち、私に向かっていたウルフの肩に当たった。

 ウルフは少し態勢をよろけさせたが、そのまま私に突っ込んできた。


私は突っ込んでくるウルフを盾でいなし、自分の横を通り抜けるウルフの腹へ、下からメイスを叩き込んだ。

 私に殴られたウルフは、くの字に折れ曲がりながら、数メートル飛ばされて落ち、動かなくなった。

 一撃で倒せるなら案外脆いわね、余り本気で殴ると挽き肉になっちゃうかも・・・。


私が1匹倒して感触を確かめていると。


「りゃああぁぁぁ!」と言う、気合の入った声でアベルが、ウルフの腹を切り裂いていた。


アベルは一瞬驚いた顔をしたが、まだ残っているウルフへ駆けって行った。

 マーナも、アベルが狙っているウルフとは別の、もう1匹のウルフに矢を放っていた。

 一射目は腹に当たり、よろけているウルフにすかさず二射目を放ち、ウルフの目を射抜いた。


その間にも、アベルはウルフに近づき、上段から剣を振り下ろした。


「せい、やーーーー!」


振り下ろされた剣は、ウルフの眉間にめり込み、深々と突き刺さった。


ウルフを倒した私は、2人の動きを見て。

 動きは悪くないみたい、思ったよりスムーズにウルフを倒してたわね、この分ならオークとかも倒せそうね。

 戦力分析をしながらアベルへ近づいた。


「お見事です、以外と動けていましたね、アベル達の実力なら、オークでも楽に倒せるんじゃないかしら?」


私が褒めながら近づくと、アベルは首を横に振りながら。


「普段はウルフ一匹に3、4撃、攻撃を与えて、やっと倒しているんだ。

 でも今日は1撃で倒せた。

 支援があると無いとでは、こんなに違うなんて・・・」


「そうよね、あたしも何時もより、当たり易かったように感じたし、一番最初のウルフなんて、一発で倒せるなんて思わなかったもの」


2人の反応に私は、そっか、支援掛けてたんだ、と今更ながら思い出して。


「確かに支援で能力は上がってたかもしれませんけど、支援で上がった能力に振り回されていないだけ、二人は優秀だと思いますよ」


私が褒めると二人はちょっと頬を染め、アベルは頭を掻き、マーナは左手を頬に当てていた。

 2人の様子に微笑みながら。


「倒したウルフはどうするんですか?」


私がウルフの処分を尋ねるとアベルが。


「此処で解体してしまおう、マーナ周囲に注意を払っていてくれないか?俺が解体するよ」


アベルがそんなことを言い出した。

 私、魔物解体なんてやったこと無いわよ?現実でも解体なんてやったこと無いのに、そうだ!


「私、解体したことがありませんので、見張りしてますよ」


「そうか?ならマーナ、他のウルフの解体頼むよ」


「りょ~か~い♪」


私は解体できないことを言うと、アベルはすぐ承知して、マーナに解体を頼んでくれた。

 私は周りの様子を見ながら、アベルが解体しているウルフの様子を見ていた。

 

アベルは、自分の背負い袋から縄を取り出し、ウルフを木に逆さに釣るし、その下に穴を掘り、首の動脈から腹を裂き、中身を穴の中に出した。

 その後、短剣で足の方から慎重に皮を剥いでいく、凄い早業で30分もしない内に、皮を剥ぎ切ってしまった。

 アベルは皮を剥いだウルフの肉を、今度は切り分け始めた。

 その様子を見ていた私はアベルに。


「肉も買い取って貰えるんですか?」と聞くと。


アベルは苦笑いを浮かべ。


「これは俺達で食うんだ、肉は貴重だから、硬いけど食べれないわけじゃ無いから」


アベルは答えながらも、一生懸命肉を切り分けていた。

 肉食獣は臭いって言うけど、どうなんだろ?せっかくローリエあるから、これと一緒に煮込んだら、少しは食べれるかしら?

 

私が考え事をしている間に、肉を切り分けたアベルは、背負い袋から取り出した布の上に、肉を乗せ布で包んで、次のウルフへ向かった。


「私が持ちましょうか?」


私がそう提案すると、アベルは少しすまなそうにしながら。


「じゃあ、お願いしようかな?」


私の言葉に頷いて、肉と皮を渡してきた。

 私はアベルから渡された肉と皮を、そのままストレージにしまうと、アベルは目を向き、硬直してしまった。


「え?今渡した肉と皮は?」


「私、アイテムボックスの様な物を持っていますので、荷物は全部そこに入れられるんですよ」


「アイテムボックス?スゲー初めて見た!」


私のストレージの事を話すと、アベルが驚きながら叫んだので、マーナが、解体した肉と皮を持って、不思議そうに近づいてきた。


「アベル、どうしたの?」


マーナがアベルに問いかけるとアベルは。


「マリアがアイテムボックス持ってるんだって、で、今解体したウルフの素材を入れてもらったんだ」


アベルが興奮しながらそう言うと、マーナも驚いた顔をして。


「じゃあこっちのもお願いできる?」と聞いてきたので。


ストレージに入れてあげた。

 マーナはその様子に、驚きながら見ていたが、笑顔になって。


「じゃあ、今日狩った分全部持って帰れるね」


マーナがそう言いながら、次のウルフの解体に向かった。

 二人はウルフの素材を持ち帰れることに喜び、ペースを上げて解体をし始めたので、私は周りの警戒をしながら、ローリエの葉を取り続けた。

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