第9話当たり屋に会いました
変な人に絡まれました。
これじゃ堂々とアイナちゃんに飴あげれないじゃない。
そもそもあげるなって?嫌よ!私はアイナちゃんが喜んでくれる限り飴をあげるのを辞めない!
朝食も終わったから出かけるとしますか、今朝はペックさんも見かけなかったから王都に戻ったのかもしれないわね。
先に商業ギルド行こうかしら、冒険者ギルド行くのは昼ぐらいで良いわよね。
直ぐ行ってさっきの人達と鉢合わせになるなんて嫌だから。
えっと移し替えたポーションは10本、最高級ポーション瓶の方は今回は売らない。
私は一階に降りてカウンターに居るアイナちゃんに鍵を渡して出かけることを伝えた。
「ちょっと商業ギルドと冒険者ギルドに行ってきます」
「いってらっしゃい、マリアおねえちゃん」
アイナちゃんに見送られ、私は大通りに出た。
昨日はずっと、宿の中にいたから、町の風景をしっかり見たのは始めてね。
へインさんに連れられて、森の木陰亭に向かってた時は、自分の状況が全然解らなくて、まあ今も分かって無いんだけど。
それでも2日前よりは落ち着いてるから周りも観察できる。
私は活気のある街の喧騒に目を奪われながら、周りをキョロキョロしながら歩いて行く。
周りの人から見たら完全にお上りさんね。
通りの端には露店が立ってて、呼び込みの声が町の喧騒に負けないくらい大声で私の所まで聞こえてくる。
私は気になって、あっちにフラフラこっちにフラフラ、メビロでもプレイヤーの露店見て周るの好きだったな。
時々掘り出し物売ってて、ついつい買っちゃうのよね。
なんで自分で使えないレアな剣とか鎧買っちゃたんだろ?
でも有るわよね、お祭りで買ったはいいけど、後々になって考えるとなんで買ったんだろ?って思うもの。
誰でも1回は有るはず。
私は露店を見て周るけど、なんか料理の屋台が多い?今食べてから出てきたからお腹減って無いのよね。
なので露店は見るだけで買わなかった。
私はキョロキョロしながら歩いて居たもんだから、右を見ている時に左肩に衝撃が。
驚いてそちらを向くと肩を押さえて倒れている男性が。
「いってえ!何処見て歩いてんだ!!こりゃ骨折れてっかもしんねーな!」
地面に座り込んで、肩に手を当てながらそんなことを叫び出した。
私はうわぁと内心は思ったけど、笑顔でそばにより腰を下ろして『ヒール』を唱えた。
私が『ヒール』をすぐに唱えたのに吃驚した顔をしたけど、男性は嫌らしい笑みを顔に張り付けて。
「『ヒール』なんかで骨折が治るか!神殿行って治療してもらって来っから中銀貨1枚出しやがれ!!」
男性が叫ぶが、私の見立てじゃ私の『ヒール』で治らないのなんて部位欠損ぐらいなのよ。
「ではこれでいかがですか?『ハイヒール』骨折くらいなら治ると思いますが?」
私がハイヒールを唱えると男性はまた驚いた様に目を向いたが、また嫌な笑みを張り付けて。
「まだ治ってねーな、回復量少ねー見てーだ」
「でしたら『フルヒール』いかがですか?」
まさかフルヒールまで使って治ってないなんて言わないわよね?
私のフルヒールで全快しない人なんて見たことがない。
でも男性はまだ肩を押さえ叫んでくる。
「回復量が少なくて治ってねーって言ってんだろ!神殿行くから中銀貨寄こしやがれ!」
男性が叫ぶもんだからすでに、私たちの周りには人垣ができている。
ふーん意地でも治って無いって言い張るんだ、だったら。
私は右手で男性の腕を掴み、左手で男性の肩を掴んで、ちょっと引っ張ってみた。
ゴキュと肩のあたりから音がして。
「ぎゃああああ!いてえ、いてー!」
騒ぎながらゴロゴロと転がるので、『ヒール』を掛けてあげた。
すると男性は、すごい勢いで身体を起こし。
「何しやがんだ!いてえだろ!」
とまた叫んでくるので、私は笑顔で。
「どうですか?治りましたか?」と聞く
すると男性は、慌てた様に肩に手を当てて、「だからいてーて言ってるだろ!」と叫びだす。
私もアレで懲りないんだ、と一瞬驚いて、困った様に苦笑してから。
どうしようか困っていると「何の騒ぎだ!」と人垣の外から声が掛かった。
人垣を掻き分けて来た衛兵さんに、これまでの経緯を話し。
衛兵さんが男性に「まだ痛いのか」と聞くと男性は「もう痛くねーでさー」と頭に手を当てながら答えた。
そそくさと離れていく男性を笑顔で見送り、衛兵さんに向き直ってからお辞儀をした。
「ありがとうございました」
私がお礼を言うと衛兵さんが「マリアちゃんも何事も無くてよかったです」と言うので。
私は何故名前を知ってるのか気になりながら、頭を上げるとそこにはヨランさんが立っていた。
今日はへインさんはいないみたいだけど別の衛兵さんと一緒だった。
「今日はどうしたのですか?」とヨランさんが尋ねてきたので。
私は「これから商業ギルドに行く所なんですよ」と答えた。
「ではお気をつけて、大通りは人込みに成り易いのでああいった輩や引ったくりも出ますので」
ヨランさんはそう言うと巡回に戻っていった。
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