第6話製作品の価値

さって今日のお夕飯はなんでしょ。

私がテーブルの上を片付けたことを、見ていたのか、席に座ると、アイナちゃんがトテトテと近づいて来て。


「マリアおねえちゃん、あさからずっとなんかしてたけどもういいの?」


アイナちゃんの質問に私は笑顔で。


「とりあえず終わったわよ、これで問題も解決すると思うわ」


私の答えを聞いたアイナちゃんは、自分のことの様に。


「わぁ、よかったです」と喜んでくれた。


そんなアイナちゃんに、私が持っていたメビロの小銅貨を渡し。


「お夕飯お願いね」と笑顔でお願いした。


アイナちゃんは「はいです」と答え、すぐに厨房に駆け込んでいった。


しばらくすると、ナタリーさんがトレーに夕飯を乗せて、持ってきてくれた。

 トレーの上には、豚肉の様なお肉とパン、それとコップが置かれていた。

 持ってきてくれたナタリーさんが、トレーを置きながら。


「今日は新鮮なオーク肉が入ったからね。オーク肉のステーキさ」


ナタリーさんはそう言うと、すぐに他の客の配膳に向かった。

 オーク肉?オークってあのモンスターのオークよね?有名な豚の魔物、ゲームの時散々倒したし、オーク肉の納品クエも散々やったのは覚えてる。

 けど、食卓に上がってる所を見たことなかったのよね。

 こうやって消費されてたのか。


じゃあ食べて見ますか、見た目はまんま豚肉ね、上に乗ってるのはニンニクみたいな根野菜かしら?

 私はナイフで切ったオーク肉を口に運ぶ、口に入れると、ニンニクに似てるけど少し癖が違う、根野菜の香りと塩のシンプルな味付けだった。

 豚よりは猪のお肉に近い味がする、野生の獣独特の匂いがするけど、それがまた良いわね。

 うん今度自分で狩ったオーク肉、料理してみようかな?

 そんなことを考えながら食事を楽しんでいると、ペックさんが声を掛けてきた。


「食事同席してもよろしいですか?」


私は笑顔で「ええ、いいですよ」と答えた。


私の答えを聞いて向かいに座ったペックさんが、夕ご飯の注文を済ませるのを見計らって。

 ポーションの件が解決したことを、伝えようと話しかけた。


「今朝は大変失礼をしました。

 あの後調べた結果、瓶が譲渡不可だったらしく、移し替えたら譲渡不可が解除されましたので。

 これで売ることができると思います」


私はそう伝えるとペックさんは笑顔になり。


「今朝は大変落ち込んでらしたので、心配いたしました。

 もしよろしければ、ポーションを見せていただけませんか?」


ペックさんに言われ、私はストレージから無駄に豪華な初級ポーションを取り出した。

 取り出したポーションを見たペックさんは、驚愕した顔になり。


「そのポーションは!素晴らしい瓶ですな、ポーション瓶だけでも大銀貨5枚。

いやオークションにかければ、小金貨ぐらいは出す貴族様もいらっしゃるでしょう!」


驚愕するペックさんを見ながら。

 そうでしょ、なんせカイジンさんの作品だしね。

 ゲームの中でも、あの人の作品は競売掲示板でも、馬鹿みたいな値段ついてて、買えるプレイヤーは超一流の証みたいになってたもの。

 買ったプレイヤーが大漁のPK(プレイヤーキラー、プレイヤーを襲う行為のことね)にあってせっかく買った装備、取られたってこともあったし、

ギルメン(ギルドメンバーね)はPKに目を付けられて、よく襲われてたし。

 そんな人の作品だもの、これでペックさんが買い叩こうとしたら、他に持ってくわよ。

 私が懐かしい思い出に浸っているとペックさんが。


「マリアさん?それでそちらのポーション譲っていただけるのでしょうか?」


揉み手をしながら上目使いで訪ねてきた。


私は笑顔で「ええ、よろしくお願いします」と答え。


ペックさんはいそいそと懐から、小金貨を出して渡してきた。


私が小金貨を受け取ると、テーブルに置いてあったポーションを手に取り、回しながら観察し始めた。

 その後はペックさんに、この国のことや地理、王都までどのくらい離れているのかを聞いた。

 今、私のいるトラットの町から歩きだと10日は掛かるらしい。

 馬車でも5日、道はあまり良く無く、あまり急ぐと脱輪や轍に嵌って、返って時間がかかってしまうと嘆いていた。

 道が悪いんじゃ仕方ないわよね。

 王都とトラットの間には、キッシリアって町が有るらしい、町の規模も此処より大きいみたい。

 食事が終わった私は、ペックさんが食事を終えるのを待ってから、席を立とうと声を掛けた。


「今日はありがとうございました。

 今朝のことが有ったから、ポーションを売る工夫の糸口が見えましたので、大変感謝しています。」


私が深くお辞儀をして、感謝を述べるとペックさんは。


「いえいえ、私もカップやこのポーションだけでも、声を御掛けした甲斐がありましたよ」


ペックさんは笑顔で答えたくれた。

私はペックさんと別れて自分の部屋に戻ることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る