First Game - 資料集

First Game - 初期プロット









◆◆◆禁忌FORBIDDEN◆◆◆禁忌FORBIDDEN◆◆◆禁忌FORBIDDEN◆◆◆




これ以降は、本編に纏わる深刻なネタバレを含みます。

本編を読んでいない方は、絶対に開かないでください。

ミステリーの面白さをほぼほぼ潰すことになりかねません。

この警告を理解した上で、問題ないという方だけこの先にお進みください。




◆◆◆禁忌FORBIDDEN◆◆◆禁忌FORBIDDEN◆◆◆禁忌FORBIDDEN◆◆◆








◇◆◇【First Game初期プロット】◇◆◇


『Chapter1』

被害者:釜瀬 米子 犯人:古枝 初

事件概要:本編より変化なし

トリック:本編より変化なし


Chapter1は、構想してすぐに書き始めたので、まあそこまで大きくプロットとズレることはありませんでしたね。

この事件のコンセプトは、『意外な魔法による殺人』と『公平性の提示』、『お試しで解けるやや難易度の低い問題』でした。ファンタジーミステリーである以上公平性を示さなければなりませんし、連作型である以上は解く快感を最初に味わってもらった方がいいかなと思ってこのコンセプトを設定しました。

Chapter1ではミスリードのためにベルトコンベアだの鏡だのを設置したわけですが、アレのせいで館を斜めにするという方法を取らざるを得なくなり、館内見取り図の作成が一気に難しくなったのはいい思い出です。

ちなみに初の魔法のトリガーである『約束の刻』という単語ですが、初はこれを『死』という意味で使用していました。彼女がそんな意味を込めているのにはその過去に理由があり、作中で言及されている通り彼女の両親は死亡しており、そのせいで『いつか人は死ぬ』という価値観が初の中に深く刻まれました。それを魔法のトリガーである単語に結び付けて、ああいう形で使用していたのです。

初はすらすらと詠唱できていましたが、彼女曰く、即興詠唱は恥ずかしがらないことが肝心とのことです。実際彼女にとっては、あの詠唱自体も気分を落ち着けるのに一役買っていました。空澄のように適当な詠唱でも魔法は発動するのですが、初はそういう適当なやり方は嫌っていました。




『Chapter2』

被害者:神子田 忍 犯人:神園 接理

事件概要:旧個室での密室殺人

トリック:[確率操作]の壁抜けによる殺害に見せかけた物理トラップでの殺害


ここから初期構想より乖離し始めます。理由としては、第二章の被害者が男の娘になるとこの作品のリスペクト元である某作品と展開が被ってしまい、流石にマズいかなと考えたからです。あと別の章での【犯人】の変更の煽りも受けました。別の章に移したらどうかとも思いましたが、Chapter3はモラル崩壊、Chapter4は殺し合いの大転換というストーリーライン上の役割があったために動かせず、被害者や【犯人】、トリック諸共に変更せざるを得なかったのです。

どうしようかと悩んだ結果、旧個室という曰く付きの場所で事件を起こすなら心霊殺人なんて面白そうだとなり、本編のような形になりました。だからああやって幽霊要素を混ぜたりとやっていたのですが、完成した原稿は心霊要素と本筋の絡みがかなり弱くなっていて、まだまだ実力不足だと思い知りましたね……。

ちなみに、二人が幼馴染みというのは当初からの設定だったのですが、恋人というのは書いている途中にノリと勢いで勝手に生えてきた設定です。なので僕が持つキャラクター設定の完全版にも、二人が恋人だなんて一言も書かれていませんでした。

当初のコンセプトは『密室トリック』と『大切な相手の喪失』と『ファンタジーミステリーで敢えて魔法をミスリードに使う』でした。変更後のコンセプトは『叙述トリック』と『大切な相手の喪失』と『殺し合いの恐怖』と『空澄の怪しさの演出』です。Chapter3の初期の被害者を見てもらえばわかると思いますが、そちらも変更になっていて、Chapter4の作戦のためには早めに[呪怨之縛]を確保しなければいけなくなったため、この章で空澄を大きく動かすことにしました。ついでに、彼女の怪しさを徹底的に演出しようと思い立ち、ワンダーの捕獲とか殺人未遂とか動機への関与とか、滅茶苦茶な立ち位置に配置しました。心霊要素の演出はうまくいきませんでしたが、こちらはうまくいったのではないかと思います。




『Chapter3』

被害者:猪鹿倉 狼花 犯人:雪村 佳奈、雪村 凛奈

事件概要:彼方が朝階段を下ると二階の床が崩落し、下にいた人を押し潰す

トリック:双子の魔法で壁や床を無視して移動、アリバイの確保(それ以前には遊戯室の機械を魔法で組み合わせた機械殺人も考えていました。二人の魔法のやや不自然な書き方はこれが理由です)


こちらは被害者だけが変わっています。彼方が踏んだことにより床が崩落し狼花を死なせるという最低最悪のシナリオになっていたのですが、Chapter4の構成を考えていたら摩由美が退場しておいた方がより謎が深くなるのではないかと思い、それに伴って被害者が変更されました。

この方法で殺人が起こった場合、『床が落ちるように仕組んだ本当の犯人を見つけられなかったら彼方が処刑される』という展開になって、自分が狼花を殺してしまったという罪の意識に苛まれロクに推理もできなくなった彼方を夢来が救うというシナリオになるはずでした。

なおどちらのシナリオでも佳凛が生まれていたことだけは変わりませんでした。

ちなみにここで語らせてもらいますが、本編において摩由美があんな脆い計画に縋って行動してしまったのは、これも彼女の過去に理由がありました。摩由美は母親を亡くしており、その事実に心が耐え切れなかった結果、『自分は実は霊能力者であり母親の霊と会話することができる』という妄想に縋りオカルトに傾倒しました。それ故思い込みが激しくなっており(パラノイアに片足突っ込んでる域)、自分の立てた計画を過信してあのような形になりました。また被害妄想癖の持ち主でもあったので、精神的に追い詰められた状態にあったChapter3以降は、本当はここにいる全員が自分を狙っているかもしれないなどと考えていました。これも、まるで追い詰められたかのように行動した理由の一つですね。

この章のコンセプトは当初から変わらず、『狂気的行動によるモラル崩壊』と『彼方の心をへし折る』ですね。殺人という時点で普通に頭おかしいですが、そこから更に踏み込んだヤバいことをやらかす奴を登場させた方が、より主人公を揺さぶれると思ったのです。事件構成が変わったことで彼方の心を折るというシナリオ上の演出に障害が発生しましたが、そこは空澄が提示した『死者の剣』という概念を利用することで解決しました。

――なお、死者の剣という単語はキャラ設定に全く載っていなかった単語で、Chapter2を書いていたら途中で勝手に出てきた単語です。あの話を書き終えた後、作者自身知らない単語の登場に一番驚きました。この辺は即興執筆タイプの弱点みたいなものですね。彼方がおかしくなるのはChapter3からだったはずなのに、あれのせいでChapter2からおかしなことになってしまいました。なぜだ。




『Chapter4』

被害者:棺無月 空澄 犯人:唯宵 藍、萌 摩由美

事件概要:本編よりほぼ変化なし、ただし共犯関係を活用して行動する予定だった

トリック:未定


Chapter4で空澄があれやこれやする件に関しては、初期プロットの通りでした。ただしトリックを考えていた際、むしろ作戦に必要なメンバーを全部【犯人】・【共犯者】・被害者で固めてしまうよりも、一人欠員にして空澄の魔法で魔法を保持するという展開にした方がより空澄の魔法を有効活用できるのではないかと思い、結果、他の章にも変更が及ぶ大改革に至りました。

本編を見ればわかる通りこの章の事件はChapter2に大きな伏線を置いてきたものだったのですが、これはその場で解ける類の伏線だったので、この事件に到達する前に読者様にバレてしまうのではないかとヒヤヒヤでした。

この章のコンセプトは、当初はまだ事件が詳しく作れていなかったため未定で、執筆段階では『見立て殺人』と『アリバイトリック』と『二転三転』と『Chapter5の予行演習』です。予行演習というのは、章を跨いだ伏線回収の見本提示のことです。Chapter5の構造は最初から決めていたため、膨大な伏線回収を押し付ける前に、お試し的なステージを設けた方がいいと思い、一つだけ伏線を設置・利用しました。二転三転というのはストーリーの通り、意外な人物の死・事件そのものの否定・抑圧的状況からの逆転・魔王による再逆転・更にあの子の正体の露見と、クライマックス手前ということでやりたい放題に勢いを作りました。

ちなみにこの章から藍の他人の呼び方が変化しますが、これにも一応設定がありました。そもそも藍の中二病的言動はほとんど作り物のペルソナで、二つ名持ち魔法少女としての威厳を演出したり、あるいは逆に滑稽さを見せて相手と打ち解けるための、魔法少女相手に使うコミュニケーションの一種です。このペルソナは緊張感を増すごとに剥がれていって、自己紹介の時は中二病全開だったのが最初の事件後はやや抑制され、第四の事件以降は人の呼称からも中二病的要素がなくなり、藍の余裕がだんだんなくなってきたことを示していました。普段は中二病の言動はしていないという設定なためエピローグでは素の口調を見せようと思っていたのですが、それだと誰だかわからなくなってしまいそうなので取りやめて、魔法少女同士だからこの口調でもおかしくはないはずと押し通しました。




『Chapter5』

被害者:桃井 夢来 犯人:色川 香狐

事件概要:本編より変化なし

トリック:香狐がスウィーツの創造主を名乗る展開は存在しなかった


Chapter5の事件は、僕がこのマギア・ミステリーを書く際、一番最初に構想した事件でした。複数の事件の裏で伏線を張りまくって、最後の最後に回収するという手法はミステリーでもそうそうない(というか書籍だとほぼできない)ものなので、それを成立させてみたいというのも僕がこの作品を書き進めた原動力の一つでした。そのために設定を練り、キャラクターを作り、キャラ同士の関係性を構築し、各章の伏線の配分を考え、伏線の提示方法を考え……と、ある意味この作品の中心として存在していたのがこの事件でした。

最初はシンプルに『クリームの存在はルールと矛盾する』→『香狐が魔王』というだけの問題にするはずだったのですが、Chapter5での生存者は香狐以外全員、各章の事件の中で何かの役割を持っていたキャラだったんですよね。そうなると単純に『今まで何も役割がなかった人』=【犯人】という発想が生まれかねず、しかもそれが正解だったため、どうしようかと考えた結果、謎の軸そのものをズラすことにしました。今までの事件は結局のところ『誰が』『どうやって』に結びついていたのですが、逆にそれをミスリードとして、『事件を解くのではなく嘘を暴く』という形に変更しました。(結果、夢来の事件を考えても、香狐の事件を考えても、ワンダーが魔王ではないと気づいても、クリームがスウィーツではないと気づいても、『犯人は誰?』という問いを解決できない超多重『振り出しに戻る』構造になってしまいました)また簡単に【犯人】が露見しないように、殺人者とは対極の役割を名乗らせたり、空澄という『怪しさ全開で実は善性だった』という前例を提示することで香狐も同類であるという考えを植え付けたりしました。……まあたぶん、これでも香狐への疑いは拭えなかっただろうと思っていますが。Chapter2での接理のように、【犯人】でもないし被害者でもないが関係者、みたいな形で香狐を事件に絡めようかとも思ったのですが、彼女の性格上ドラマチックな場面が演出できず(物語の魔王なのに……)、苦肉の策としてこのような形になりました。

この事件のコンセプトは『総決算』です。怒涛の伏線回収と、そしてFirst Gameの締めということで、積み重ねたほぼ全てを利用して書き上げました。

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