第4話 露焦る
「よっ藤原、森田さん」
「こんにちわ♪」
少し遅く起きた俺と楓は、待ち合わせの為、川野辺駅前に向かった。
待ち合わせの相手は藤原とその恋人でバスケ部の"マネージャ"の森田さんだ。
最近この2人とは一緒に行動することが多い。
今日も最初は俺と楓と露で買い物に行く予定だったんだけど、藤原も行きたいってことになって、"和君が行くなら私も!”って森田さんも同行することになったんだ(バッシュを見に行くんだけどね・・・)
ちなみに森田さんがマネージャになることは藤原には当初秘密にしていたらしく、この間行われた新人歓迎会でサプライズ発表された。
亮兄も雫姉もサプライズとか大好きだからノリノリだったな。
森田さん自身、スポーツは苦手だからバスケ部には入れないけど、藤原と一緒に居たいからということで、忙しい受験勉強の傍ら夏川さんや日岡さんにバスケのルールや戦術も教えてもらっていたらしい。
ほんと健気だよな。藤原も感激してたし。
ただ、まぁそんな感じで入部早々の新人がイチャイチャとお熱い雰囲気だしてたから、若干先輩方の目つきは怖かったけど。
「や やぁ田辺。それに小早川」
「ん?天野じゃん。何で藤原と?それと隣の人は・・・」
藤原と森田さんと話をしていると、何故か同じバスケ部の天野ともう1人知らない男性が声を掛けてきた。
「あ。俺は初めましてだよな。小久保 忠司だ。
バスケはやってないんだけど、倉北学園で天野とはクラスが一緒だったんだ。今日も飯でも行こうかってブラブラしてたんだけど駅前で藤原達見かけたんで声掛けたんだよ。あ、藤原とは川北中で一緒だったんだ」
「そうなんだ」
川北中の同級生か。なんだかいいよなそう言うの。
俺は親父の転勤であちこち移動してたから昔馴染みの同級生とかってちょっと憧れるな。
「小久保は倉北ではテニス部で全国にも行ったんだよ」
「たまたまだよ」
「凄いですね。大学でもテニス部に?」
「ええ。まだ入部したばかりで下っ端だけど倉北時代に尊敬していた先輩も居るので」
ん?倉北?先輩?
「もしかして阿部さんって方?」
「え?阿部先輩を知ってるんですか?」
「知ってるって程じゃないんだけど、この間体育館の前でテニス部にスカウトされて・・・」
「あ~~先輩勧誘やってましたね。そりゃご迷惑を。でも悪い人じゃないんで」
「はは。そうですね優しそうな方でしたね」
高校でテニス部だったなら結城や渋川さん達の事も知ってるかな?
そんなことを考えながら会話を続けていると隣に居る天野が落ち着かない様子で何やらキョロキョロしていた。
誰かを探してるのか?
「どうしたんだ天野?誰か探してるのか?」
「た 田辺。露様は来るんだよな?」
「「露様??」」
思わず楓と顔を見合わせてしまったが・・・天野って露と知り合いだったのか?
だとしても"様?"
ちなみにバスケ部には元々雫姉(田辺)が居たわけだけど、俺と露が入ることで田辺が3人になる。
雫姉は元々"田辺先輩"とか"雫先輩"って呼ばれてたらしいんでそのままの呼び名だけど、俺と露も同じ田辺で紛らわしいから、俺は"田辺"、露は見た目妹キャラということもあり"露ちゃん"って呼ばれることになった(本人は恥ずかしがってたけど)
この間行われた歓迎会で亮兄が酔いながら宣言していたんだけど・・・"露様"?
「僕さ、この間の歓迎会で露様に再会してさ・・・運命を感じたんだ」
「運命?」
っていうか再会ってことは、やっぱり天野は前から露の事を知ってたって事?
「あぁ~思い起こせば中学3年の夏。
僕は都内の私立中学のバスケ部でエースだった」
あ、なんか語りに入ったな。
面白そうだし少し聞いてみるか。
と思っていると
「あ、倉北って各地の中学から生徒をスカウトしてきたりしてるんだ。俺は地元だったけど天野は都内の学校からスカウトされて倉北に来たんだよ」
「「へぇ~」」
小久保の解説が入った。中々親切な解説だ。
そういえば倉北には福島のライバルだった小泉ってのも仙台の学校からスカウトされてきたとか言ってたよな。
あ、いつのまにか藤原と森田さんも話を聞きに来てる。
「でだ、大会決勝。
残念ながら僕達は負けちまってな・・・正直優勝して全国に行くつもりだったから凄くショックで・・・倉北からバスケ推薦の話もきてたけど辞めちまおうかってくらい落ち込んでたんだ。
だけどな、隣のコートで行われていた女子の決勝を見てもう一度頑張ろうって気になれたんだ」
「女子の決勝?」
「あぁ。そこに露様が出ていたんだ。得点差を見る限り負けは確実だったんだけど仲間を励まし諦めずにコートを駆ける露様は・・・美しく女神のように見えた」
「そ そうか・・・」
"女神???"・・って言うか天野ってちゃんと話したことなかったけどこんな奴だったのか。バスケやってる時と随分感じが違うな。。。
「その時は彼女たちも敗戦して話しかけられるような雰囲気じゃなかったんだけど、後日女子バスのメンバから露様の名前を知ることが出来たんだ」
「そっか。じゃあ露とも会ったりしてたのか?」
「・・・高校に入ってからバスケを続けてればどこかで会えるんじゃないかと思ってたんだけど・・・」
「あ、俺達の通ってた高校って男子校でな。女子バスとの絡みなかったんだよ」
「そ そうなんだ・・・」
とここで小久保のフォロー。
・・・気付けよ入学前に!
でも、高校時代は会う機会もなく今回大学のバスケ部で再会したのか?
だとすると・・・確かに運命とか感じるかもな。
「で、田辺。来るんだよな?露様は」
「え?あぁちょっと実家に顔出してからって言ってたからそろそろ来るはずだ」
「そ そうか・・・何だか緊張するな」
天野って見た目は女子受けしそうなナンパな感じだけど女性慣れしてないのか?
真面目に照れてるし結構真面目な奴なのかも。
・・・とはいえ、あんまり従姉妹に変な奴は近づけたくないんだが。
「ねぇ天野君」
「何だい小早川さん」
「天野君ってさ、今までの話を聞いてると露ちゃんの事が好きなんだよね?」
「「!!」」
楓・・・ストレートだな。
みんな驚いてるぞ。
「あ あぁ好きだ。
でもまともに話したこともないし、露様はそもそも僕を知らないはずだ。それに露様は僕にとっては眩し過ぎるくらいなんだ。だから、まずは友達から始めたいと思ってる」
天野も真面目に応えてるけど友達か。
でもまぁそりゃそうだよな。
露の方は、天野の事知らないだろうし、いきなり告白とかされてもな。
って・・・あ。
「そ その・・・友達からでお願いします」
顔を真っ赤にした露が天野の後ろに立っていた。
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