終章 人のやさしさに甘えると駄目になるかもしれないよね


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丸々一昼夜、俺達は裸で貪り合った、寡婦も俺も根っこが似ていたのかもしれない。俺が求めれば彼女は嬉しそうに体を捧げた、彼女は懇願するのが好きで意地悪な事もした。そんな事を繰り返していった。


「腰かけて下さいませ・・・うふふ」


彼女の本性を理解している俺は気まずさは感じなかった、享楽家の寡婦は全裸で四つん這いになり。尻と尻尾を振る。

其処に腰を下ろせと言う・・・。悪い冗談ではなく本気なのは既に承知していた。

だから・・・俺は迷わず、応じた。不思議と抵抗を払拭しているのは、相手が根っからの享楽家である故の雰囲気がそうさせたのだ。


「う・・・」


呻く寡婦、腰を下ろす俺の身体を受け止め。それでいて、息を荒げて震わせながら悦んでいた。寡婦は言葉を続ける。


「ふふ・・コレで貴方のモノになってしまいました・・・一番乗りですわ・・・」

「一番のり・・・ん・・・ああ・・・」


さも悪戯っぽく言いながら俺は顔を向ける。正直言っている意味の輪郭がつかめなかったが・・・が次の言葉で理解した。


「一夫多妻・・・と言えば理解できましょうね・・・」

「・・・」

「・・・あの子もこの事は暗黙しています、私の娘であり子である以上・・・知って当然・・・世俗の事を知らなすぎる貴方が異常すぎると言うのは強ち間違ってはいません・・ですが、貴方の理解できない基準が多々ある事を知るべきです・・・うふふ」


まるで、俺が転生者と知っているかの様な口ぶりにドキリとした。

見聞レベルでは賢知している・・・教えたのが貴族嫌いのアーシャさんからだが、社会文献として知ってはいる。


「楽しみですわ・・・その時は私が椅子の役目になりましょう・・・公私共々・・・」


俺は子爵との逸脱した関係を持った事に、困惑もあったし消化しきれない腹に溜まった感覚を覚えた。


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「・・・計らいと言うより摘み食いの謝罪のつもりかと思ったけど、されたご本人は満更でもない様子ね。レージ?」


嫌味タップリのヴィラの言葉が耳が痛い。返す言葉が無い俺の顔を見てムッとし。


「幻滅より逆にホッとした所です・・・男としての感情を持っていた事を確認しましたので・・・少々腹の立つものですが。」


カンカン晴れのヴィルガングの海岸沿い、ネイア姫、ミスティア、ダルダ、ハルーラ、シャリーゼらを含めた女性陣らが海水浴を堪能する。

あの生々しい夜から明け、子爵の手引きで入れ違いに到着したヴィラ達は魔族撃退の功労者として招かれ。

孤島と別荘で暫く養生する様に言われた。本音はネージュ様はじめ、一連の出来事でヴォルガング本島並びに諸島の住人らは未だ鎮静化するまで時間がかかりそうだと言う。


ヴィラは、言葉をつづける。それは色々複雑な感情を彼女なりに整理したのだ。


「今回の件で、あの母が関係の浅い貴方に許しきれるのは当然です。同じ種族である私もソレは理解しています。・・・ですが私は母の様に享楽家ではありません・・・父親似でしてね・・・。」


自身の生真面目さを恨むように吐くヴィラの言葉。彼女の父親はれっきとした金狼の獣人だと言う、しかしゲルニカの絡みで討ち死にし。娘であるヴィラを残して逝ったのだ。

獣人の性事情は人間より緩い、それゆえに種違いの血族も絡み合っている。ヴィラには種違いの兄弟姉妹が多くおり、自分でも把握しきれていないのだ・・・。


「同じ男に惹かれるのは性でしょうが・・・私は未だ貴方との距離を詰める度量は無くて・・・ですが・・・まだ未熟な私が自身との踏ん切りをついた頃に・・その時は・・・その・・お相手を・・・」


「・・・君が失望しない様にちゃんとしなきゃな・・・」


情けない事に、俺は奥歯に詰まった様な返事をしてしまった・・・。俺も自身の行いにバツの悪さもあった・・・が。

ヴィラの持つ一途さに甘えてはいけない気がして、俺はそれ以上言葉が続かない。


俺だってそう言う感情があるし、立ち回れないし。時には後先考えないから・・・そう言う事情って文句言えない・・けど・・・他人の考えを蔑ろにはしない・・・それが今の俺の処世術・・・。


「そうですね・・・そうしてもらえると助かります・・・。」


やれやれと言う感じで俺に顔を向けて安堵した笑みを浮かべる。


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し か し


ヴィラの黒スリング系は見事に母親と同じ金狼獣人の趣旨に傾倒しており。その血の本懐はそう言う所にあるのだろう・・・。

俺の視線に気づいて、ジト目顔になると。俺は顔をそっぽ向ける。


ハルーラのハイネックビキニやダルダはモノニキ姿はある意味強烈で。そう言うある種の面々には堪らないものがある。

元々、飄々としたハルーラは何を着ても遜色ないが。逆にダルダのモノニキはかなり相性が良く。着ぶくれ気味のダルダのパンチ力は強烈で、エロポチャ系の一面を垣間見せる。


そして。


あのおとなしい、ミスティアはタイサイド・ビキニと言う。

ハルーラが強要しそうな、パンチ一発核弾頭モンの格好で。珍しく皆とはしゃいでいた。見える所が見えそうで、内心ハラハラしており。眺める起因となっていた。


ネイアは、姫様らしいフレアビキニ姿で。純白な印象が鮮烈で、邪まな感情を払拭してくれる。ウォルガングの気候上もあってか、普段は憂いを帯びていた彼女もこの時ばかりは珍しくはしゃいでいた。


「貴方はそこで、英気を養ってくださいませ・・・色々お疲れの様ですので・・・」


俺の視線の本性を知ってか知らずか、釘をさす様に俺に言いつけていくヴィラの一言に乾いた笑いしか出なかった。


ともかく・・・ここから先は、ネージュ様達の手腕だ。

ヴォルガングとサーヴェランス両国がどの様に動くか・・・それを知るのは少々間を置く事となる。

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