#25 切り札を使う頃合いを見極めないといけないよね
-70-
――貴賓室から抜け出した私は一般観客席へと入っていく。匂いと知覚魔法を駆使し慣れた気配を関知する・・・が
「あらガジュラ様?」
――隆々とした男が全身包帯姿で・・・だ。
「ヴィラ・・・何で此処に・・・この騒ぎはなんだ!?」
「今それどころじゃないのですの、どいて下さる?」
「なにぃ?!」
「今は不測の事態ですので、ネイア達と合流しなければならなくてよ?」
――ネイアと言う言葉を聞いてみるみる頭に血を登らせ睨み飛ばす顔に皺が出来上がった。奴は獣人の中でも目下反ローレライの一派・・・、ネイア姫に対しても似た感情を持つ・・・。
――それゆえこの男を私は好かん。
「穢れ姫が此処にいるのか!!どこだ!!」
――しかも、冷静さも欠き己の事しか考えない・・・。だからこそか・・・。
――凝り固まった概念を疎い、私はレイグローリへ身を置いた事も分からないだろう・・・。
「言ったはずです、私は有事で動いているのです。動けない者の戯言を・・・」
「うるせぇええ!!人間に媚びた牝が!!脆弱な人間い尻尾を振った奴の言葉なんぞ聞けるか!!」
――内心怒気を込めて言い放つも奴は、周辺を驚かせる様な怒号の叫びをした・・・。
――ああもうめんどくさい・・・そう思った・・・矢先に黒装束の鳥仮面が横やりを指す。
「ヴィラ様?どうかなさいましたか?」
「貴女は確か・・・」
――彼女は空気を察し、私の肩に手をかけ観客席へと促す様にうなずいた・・・。ガジュラがそれを良しとせずに私を引き留めようとした・・・と思う。観客席出入り繰り間際にあの黒騎士が立っており、私に頷く。
――私は走って観客席へ出た途端に。
ゴォオオオオン!!・・・・
――小さい悲鳴と一緒に凄まじい重い音が響いた。
――黒騎士が声を上げ、「獣人のニーちゃんがぶっ倒れやがった!!マジやべぇぞ!!」とワザとらしく騒ぎ立てたのを聞こえた。
-71-
何だ今のは・・・悪寒が走った・・・って言うかなんかおっかねぇ魔力知覚したんだけど・・・それ以上に・・・。
コイツの厄介さは異常だ。暫く距離を取って魔法攻撃で牽制をかけるフリをしつつ・・・。
『氷結刃』と『灼焔閃』を交互に打ち出し一点集中攻撃を仕掛け、金属に直接破壊する策を講じた・・・・が。
(安い手では魔法障壁で弾かれる・・・・?)
だとすれば・・・、その牙城を切り崩す策はアレしかない・・・。
「・・・いくぜ!!・・・『螺閃輪』!!」
俺の掌に光輪が展開。
奴の装甲に無数の白線が刻まれる・・・・も奴はそれに構わず大剣を振りまわし始めた。
その動きに合わせ、腕や蛇腹装甲の隙間に『螺閃輪』で削り落としていく。
骨の折れる攻め手だが・・・既に奴の動きは常軌を逸している特に俊敏さだ。
まるで別の個体に成り代わったかのような・・・疑念すら浮かぶ。
「うおぉおお???」
ギュオッビュッホ・・・ヴォッ!!
それにしても・・・関節部のダメージを気にもせず・・奴は剣を振り回しやがる。
一見すると矢鱈出鱈目なモノ・・・向き合った俺からすれば、その挙動の勢いは殺さず無駄が無かった、斬撃の剣閃で竜巻と衝撃波、砂埃と塵が辺り一面を狂わせる。
『重鎧士』の剣撃パターンは東方の型だが・・・北方の剣技も混ぜた剣筋は恐ろしい程に繊細で油断が出来ない、見事な剣撃・・・・。
「グゥッ!!」
物言わぬ巨躯の剣撃に何度も受け止める、数を重ねて段々違和感が確信へ変わっていった。
(おかしい・・・剣裁きもそうだが・・・重い?!)
剣撃技術がこの戦いで異常な程の圧を増している・・・。踏み込みからのあの寸胴から剣撃の重みと速さは、ブラッシュアップしていくかの様な異質な気配が重なっていく。
「そして・・・動きも・・速い・・・」
更に加味する異様な機動力。その剣の圧、重ねて運動能力とのアンバランスさが異常性と合わさり危機感へとシフトした。
(おかしい!!関節のダメージだって手ごたえはあった・・・のに・・・これは・・)
幸い俺にはダメージは皆無・・・全身傷だらけの『重鎧士』は腕の装甲と足の一部が見事に削げ落ち、見るからに禍々しさがあった。
ゴギュゴギュュギュギュ・・・・ゴゴゴゴ・・・ギギギ・・・ヴォヴォヴォ・・・
軋む機械音、観客が歓声も潜めていき・・・不気味な風体に皆怖がり始め。異常性が伝播していく感覚が肌に通って感じる。
(・・くそ・・・致し方が無い・・・か)
腹をくくる・・・俺は大きく息を吐く・・・全身の魔脈をフル稼働させる、魔力配分を知覚を始め筋力に傾倒しつつ・・・剣の切っ先にまで魔力を満遍なく。
全身の魔脈を通った魔力、俺は叫んだ。
「『アルマ!!』」
ゴッォツッゥ
その瞬間に『重鎧士』は剣撃を振り下ろす・・・・
観客の悲鳴と土煙が晴れた時、驚きの声が上がった、何故ならひび割れた石畳だけだったからだ。
-72-
――主審達が見回す中で私が叫んだ。
「上よ!!」
――うっすらと輝きの衣を全身から纏うレージだった、宙に浮き仁王立ちだ。
「一気に決める!!」
――彼は叫ぶな否や、一気に急降下。常識外れの行いに主審達はまるで異常な光景に驚くばかりで絶句し困惑する。
――そんな光景を貴賓席で黒騎士と共に私は観戦していた。
――目的はネージュ様の護衛だ。しかし、目の前の光景に対し黒騎士は見解を述べた。
「なるほど・・・アレが身体強化魔法による限界を超える魔法・・・俺がやって見せたアレとは違うな・・・」
――『重鎧士』は・・・残滓に翻弄していると言えば良い。薄く輝くのレージの姿を捉えはする・・しかしそれは『足跡』なのだ。
「そうね・・貴方の場合は魔脈の活性化による自己強化魔法・・・反射能力や視力、筋力まで・・・ね・・・けどあの子のは・・・」
――その挙動の異常性、跳躍と言うにはあまりにもそれとは違う・・・正体はは放出する魔法力によって促す『飛行魔法』による副産物。
「五感強化・身体強化・反射反応・知覚感覚の処理・・・更に飛行魔法による異常挙動による超常的な運動能力が加味する『究極の自己強化』魔法とも言う訳ね・・・」
「飛行魔法・・・なるほど・・・俺には無理な道理だ・・・回復なんかも無理だしなぁ・・・」
――『重鎧士』は完全に翻弄され、装甲がみるみる剥がれていく。
――両腕、頭部、股下の装甲とその周辺とあっという間に光を染まったレージが奴と過行く度には剣撃が撃ち込まれ。
ズドォオン!!・・・ボ・・・ズドォゴゴオオオ!!
――勢いよく飛び散る甲冑の破片は壇上舞台の周辺の芝に飛び散る。
「うおぉおおおおおおお!!!」
――トドメと言わんばかりにレージが雄叫びを上げる。真っ向勝負の斬撃技を放つ。四方に輝くと無数のレージの残滓が両手足を一気に切り伏せる。
――黒騎士は口笛を吹いて賞賛する。
「四神源流!!
――無数の残像が一点に集約する・・・そこにレージが実体化するように現れた。
「閃ッ!!」
――『重鎧士』の両手両足はバラバラに、頭部は愚か胴体部分が音を立てて地につく・・・。
「ばかなぁああああああ!!!」
――向こう側で、山派貴族筆頭のガボネ・ガボンネ改めパプリカ爺が叫んでいた・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます