転生無双の勇者の子 魔皇竜を討伐したら世界から追放された元勇者パーティで生まれ育てられた、俺が無双してもしょうがないよね。
#19 因縁と言う程でもないけど向こうが勝手に思っているからしょうがないよね
#19 因縁と言う程でもないけど向こうが勝手に思っているからしょうがないよね
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三日目・・・予選トーナメントでようやく俺の出番が回る。
基礎的トレーニングをこなしていただけであったが。あの黒騎士の存在を勘付いて以来それだけでも不安に感じる、未知の敵って言う恐ろしさはディーヴァと似た印象を持っていたからだ。
とうとう、あのアリソンの姿と対峙する事になった。
石畳の壇上、決闘堂と似たレイアウト。主審副審の三人も腕章には各国のエンブレムを記していた。
「両者!!前!!」
主審の張りの良い声、それとは裏腹に・・・アリソンはやっと来たと言う表情が薄っすらと浮かび上がる。
「いよぉ・・・棄権しなかっただけ立派だなぁ?ええ?」
うっわぁ・・・・
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――・・・何かあったようですね・・・
――あの男の顔に、顔突き合わしたくないってあから様に・・・。
「良い顔してないわねぇ・・・体調が悪いのかしら?」
「いいえ・・・多分、色々トラブルがあったのでしょうね・・・。」
――お母様はあの男の持つ慢性的トラブル症候群を知りはしないでしょう。
「おおよそ、あの対戦相手と色々トラブった末に今の立ち位置についたんでしょうね・・・」
――そうこうしている内に「はじめ!!」と試合開始の声が上がった。
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蜥蜴の獣人って言うのは、肌の厚みが蜥蜴のそれに似ていた。亀の獣人とは違い骨格が人間に近く、長身大柄のワニ人間の様な印象だ。
「ぐぉおおおおおおおおおおお!!!しねぇえええええーーーーーーーーーーーーー!!」
軽く2mはある巨体に凄まじい質量の筋肉の塊が一気に膨れ上がり。それに似合う方向が響いた。その雄叫びで並の者なら怯えるだろう。
アリソンの獲物はハンマーアックス、正面に立つ事すらままならない恐怖の塊がそこにある。
風と轟音が壇上舞台を圧迫し。その圧迫的な迫力はその場にいた観客は一気に騒然とし、悲鳴混じりの声も聞こえた。
それ程までの強烈な横薙ぎの一振りが生み出した一撃は。
ガゴォォォッン!!
突飛な金属音が一気に響く、アリソンの厚い皮膚で覆った顔に深い深い皺が出来上がった。
「?!??」
困惑顔のアリソンが良く見える、自慢の一撃だったのが良く分かる上にそれを事も無げに止められた事を理解するには時間が必要だった。
「ぐ・・おぉぉおお???」
自身の獲物は大の大人を丸々鉄の塊にした様な鉄の塊だ。それに対して俺の武器は・・・。
「なんだそのみみっちぃいボウッキレは!!」
俺はコンパクトな十手で受け止めていた。装飾的なデザインは一切廃したシンプルな奴だ、以前使っていた十手とは別物・・・。
純度100%の魔銀鋼で仕上げた、十手だ。その輝きはアリソンのハンマーアックスより輝いていたし、何より奴の鈍い獲物に蜘蛛の巣の様なヒビが走っていた。
「あがががが・・・・」
自身の獲物が破壊され、絶句・・・そして獲物を投げ捨てると。
「うぉおおおおおおおおおおお!!!!」
一気に両手を突き出し掴みかかる。もちろん躱せばいいだろう・・・が俺は。十手を収めて、奴の突き出す掌と真っ向から取っ組み合う。
「うぉお!?」
「おうよ?どうだい?ここいらで素でやり合おうぜ?なぁ・・・アリソンさんよ?」
この行動にアリソンは驚愕する、正面切って押し相撲に持ち掛けられた事が予想だにしなかったのだろう。
「ぐぉおお・・・・・おおお・・・」
メギメギと押し相撲を繰り出す。組み合って上から押し潰そうとするアリソンの力み具合が圧倒的有利に見える。圧倒し俺は膝を曲げる。
「おおおお・・・・おおおおおおっ!!!」
俺が圧された事で奴の笑筋が浮く、有利になっている事で増長しやすい性格か色々とお粗末だ。俺は顎をひいて中腰気味、腹筋に力ませ徐々に維持。
「げへへへ!!どうだガキィ!!ガメラスの様になりたくなかったら、降参したっていいがなぁ!!」
口ではそう言ってるが目は殺気出している。ああそうか・・・こちはワザとそうやって煽り。降参しても一方的な暴行を加える・・・そう言う目をしている。
「・・・」
「ぎひひひ!!!ひーひっひっひ!!」
笑い声を耳にし奴の本心を垣間見た、こういうタイプは自分が負けるっていう経験が無いからここまで傲慢になりきれるのだ。
しかし、その傲慢さも無くなっていった。腐っても獣人としての本能が機能し、違和感を理解し始めた。
「・・・ぐ・・・てめぇ・・・」
(・・・ばれたか・・・)
硬直した押し相撲、拮抗から停滞する光景は素人目から見てもあからさまな異常な光景へと変化する。
「ぐ・・お・・・・」
「・・・悪いが・・・降参はしない・・・お互いそんな選択は野暮ってもんだ・・・」
メギメギメギ・・・
異質な音が耳に聞こえる、骨と筋繊維が以上の悲鳴を訴える。奴の痛みは相当なものだが・・・見開いた目に、食いしばる歯茎を見せ堪える。
「・・・こっちも負けるつもりはない・・・納得してくれて有難いな。アンタの恥をかかせるつもりは・・・」
その言葉に悪寒を走り、痙攣を起こすアリソンの顔を見たのが最後だ。
何故ならば・・・
俺は一気に握力を上げて、アリソンの両掌が力なく開けきってしまう。両腕を握り上げて、蜥蜴の巨躯を持ち上げた。
三人の審判はどういう顔をしているか分からない、ただ目の前の巨体の相手がとんでもない天地真っ逆さまの格好だ。
「ぬぉおおおおりぁあああああ!!!」
俺は憤怒と一緒に、一気に反対側へ叩きつける。アリソンの顔が見えた・・・。
目を白黒し、口を開けて背面から壇上の石畳にダイブ、「ずっどぉおおおおおおん!!!」っとトンデモない轟音と共に仰向けになって目を回す姿が最後となった。
アリソンの初戦敗退。
控えに戻る際、選手観客席で目立つ黒騎士は手を振っている・・・フレンドリーすぎるだろ・・・。
貴賓室にはあの派手な縦ロールのヴィラとその寡婦が俺に視線を向けている。
そして、ネイア姫、ミスティア、ダルダが一般観客席から観戦。俺が顔を向けると手を振っている。
彼女たちの顔を見て、しがらみを忘れて目の前の試合に全力を尽くすことにした。
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