学園編Ⅰ

異世界にもボッチと言うのが居るのはしょうがないよね?

序章 俺の知らない所で色々交錯するんだけどもね

-1-


受験合否選考会会議室


——どういうことだ、彼は?この試験のスコアは本当かね?

——信じられない話だが、事実だ・・・しかも彼には色々曰くがあってね・・・

——一連の機材を破壊させた一件だな?特に魔法実技で魔法国家の魔導師のご自慢の対魔法バックも細切れ状態だ・・しかも内側からな・・・魔導師共から大顰蹙だいひんしゅくを買ってしまったぞ・・・

——魔法関連ならいろいろあるぞ!圧縮、放出、瞬発、無属性安定・・・どれもこれも規格外の結果もしくは測定不能・・ほぼ機材破壊・・・・危険すぎる!!

——しかし・・・彼はネージュ様を直接お助けになった・・・


——ざわ・・ざわ・・・


——それだけじゃない、彼は喋る魔族と対等に戦い・・・マルス・ガルガンから報告では一人で弩豪牛の一派を殲滅させ、その場の医療にも携わった・・・その助けた商家と言うのは最大手のルイーン・ドーニンドーの最大の取引相手という・・・。


——商人どもを怒らせるわけにはいかない・・・それにわが校自慢の神童、カリス・オーディスを完封したそうだ・・・火や氷を撃ち分けて戦った・・・。


——ざわ・・ざわ・・・


——ふーむ・・・我々にとって彼は未知数・・・。だが面白いとは思わないかな?クシュリナ教官?


「えぇ・・もちろん。彼に興味を持つものが多く、全員彼と同じグループにしても良いぐらいです・・こちらを」


——ふむ・・・金狼貴族、飛び級の五星魔眼・・・一浪した黒耳長に・・特別枠の・・陸地人・・それにネイア様と・・・・


——ざわ・・ざわ・・・なんと・・問題児ばかりじゃなァないか・・・特にネイア様は・・・


「まぁ何人かは彼にゾッコンでして・・・私も一人ですが」


——まてまて!!貴様らっ!!いい加減にしろっ!!ネイア様は見違えるほど成長したっ!!・・・この都市の膿共を払拭する切っ掛けを作ったのだ!!今までも害になる行動はとっておらん!!・・・特に色メガネの贔屓目の節穴共が奇麗さっぱり居なくなって清々したと言うのに・・・。この貢献だけでも十分すぎる!!文句が言うのであれば私に言え!!

——左様、奴ら・・・・アイツら間抜け連中は昨今の情勢を理解しておらん。動く無能共の荒らした現場の後片付けには散々苦労させられたではないか?・・・しかしネイア様は行政にも精通し理解を示していらっしゃる、ローレライの血等と言う不純物など些細な事と思え・・・。

——かの者と一連の事件に応戦した者達は部隊編成を前提と兼ねたグループ構成にしよう。その教官は君だ!!クシュリナ・クライス君、元王宮騎士団副騎士団長でフレイム・アマゾネス、キリング・レッド、ブラッド・マーダと言う数多の異名を持つ君にこの者達を預けよう!!頑張り給え!!



「ええ・・こちらも全力で全うさせてもらいます。」


-2-


あの事件から数日後、ルイーン邸の庭園。青芝生の踏み心地を踏みしめていた。


ガッ!!っと鍛錬用の剣を振る。相手はシャラハさんだ、両手持ちの剣で俺の剣撃を受け流す。元はそういう技は向かない流派の使い手の様だ、回避して撃ち込むそういうスタイルだろう。


「逆手の技が使えないと辛くない?」

「見抜かれましたか・・流石です、ですがレージ様も四神源流と言うお父様直伝の剣術をマスター成されたとお伺いを・・・」

「父親の剣をマスターって言うより見様見真似のモノマネ剣をお情けで認めてくれたぐらいでな・・・父さんが本気になったら足元にも及ばない・・・よっ!!」


相手が逆手使いもあってスルリと抜けたのは不慣れだったのかもしれない。しかし、剣術のそれに関しては父さんのキャリアの半分もないのも事実。『モノマネ』と言うのも割かしアタリなのかもしれない。父の剣を魔法で補っているのだから・・・。


「たっ・・・たいへんです!!!レージ様!!」


ルイーンが足早に駆けこんできた、シャラハが一歩下がって軽く礼をする。慌てふためくルイーンが休憩用の水差しにコップに水を入れて、飲み干すと。口を開いた


「ネネネネ・・・ネージュ様のご訪問でして・・・!!」

「えっ?」


あの鉄仮面のシャラハも驚いた様子だが、聞きなれない声が響いた。


「受験が終わっても剣の鍛錬を怠らないの見事です・・・レージ・スレイヤー殿」


そこに立っていたのは・・・間違いなくネージュ・ネレイド御本人だ。



-3-


ルイーン邸の応接間だ、その部屋は一際絢爛な装飾を施しながらもグッと落ち着かせた。派手さを抑えていた。シックなセレブ感ある落ち着かせた一室でネージュ様がサイドボードの向こうに座っていた。


「流石の贅の拵え方・・・多国籍商業ギルドのトップ、ドーニンドー商会の長・・・ルイーン殿の邸宅ですね・・・」

「有難うございます・・・しかし礼を言う為にわざわざここまでご足労を・・・」


ルイーンが頭を下げ苦言を促した、それを言い終わらせずに手をかざす。


「私自身の御身を助けた者を呼びつける方が無礼と言うものです・・・それに貴方に色々を聞きたいこともありましてね・・・レージ・スレイヤー殿」


俺は緊張に走った。

「貴方が、勇者ラグナ・エクスバーンとエルシャ・エルフィーアの子供ですね?」


俺は一呼吸置いた、ルイーンに目配せし彼は頷く。


「はい、父ラグナと母エルフィの子です。」


「今は・・・そう名乗っているのね・・・ロウゲツ殿から渡されたオマリー殿の手紙で貴方の村での顛末を聞きました、自決する娘を制止してくれただけでなく。受験日の時は魔族の者から私を助けた事。改めて礼を言います・・・。」


聞けばネレイド家と分家のナイアド家との軋轢は凄まじく、その対象にネイアが標的になったと言う。

もちろんネイアの周りに庇護する面々が居たが、都市組織を始めとして連中の手による腐敗が異常で大多数に流される者が多かった。その原因がナイアド家の面々。身内だけに、ネレイド家にとっては難しい問題だった。


「だった?」

俺は思わず口にしてしまう。それを聞いたネージュ様が切り出した。


「元はネイアの活躍もですが・・・。ネイアの従兄ヴェルソー・ナイアドが端を発した失態を切り目に一族の汚職と腐敗の痕跡を芋づる式に検挙できたのです。それは騎兵局上層のハンス・ヴィーパー副騎兵局長も身柄拘束の上に取り調べを、奴もナイアド家と一緒にこのレイグローリーを食い物にしていたので・・・。それもこれも勇者と勇者の子である貴方達の活躍です。」


「俺は別に・・・父さん達の修行にネイア様が食らい付いた心意気を買ってあげてください・・・。父たちに話せばきっと、間接的にネージュ様やネイア様を助けられて万々歳と大手を振って喜びますとも。」


それ俺のお陰?・・・疑問に思った。なんせその一連の発端はネイア自身の活躍だ、彼女が切り開いた道だ。それが事実だからだ、学園で逢うか如何か分からないけど。改めて俺は学校と言う世界に足を踏み入れると言う事を実感してしまう。


ネージュ様との緊張する中での対談が続いた。無礼の無いようにふるまうので必死で、受験の時の緊張感なんて足元にも及ばなかった・・・。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る