#5 異世界のテストは当たり前ですが前世の世界よりも厳しい・・・
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『統合コロッセオ』の建造内の設備には、シャワールームを始めとしたレストエリアやクラブハウスが完備されており。普段は高等部の学徒達が交流の場としている、内装はギリシャ風を意識したロココ調と言われる素材で出来上がっていた。
クラブハウスのテラス。円型テーブルに四人分の椅子。レージ、ヴィラとクシュリナが座っている、後衛系のテストで俺がアホみたく悪目立ちしていた所為もあり。レージの居るこの場は変な空気になっていた。
その空気を周りを睨んだヴィラ、口元抑えて笑いをこらえているクシュリナ。
レージはあの母にこの件を話した所で母が理解できず、それを父ラグナが黙って肩を叩いて首を振ると言う光景が目に浮かんだ。思わずため息をついた。
過剰過敏的にヴィラが反応する。
「チョット!!あなた!!今回と言う今回はため息で済むと思っていらっしゃるの!!」
「あっ・・・はい・・・スイマセン・・・」
もうそれしか言えない、言葉はそれしか出なかった。立場逆転のクシュリナに宥められてヴィラ。そんな中に子兎のミスティア・ミロスが現れた。
代わりの服と言うモノが、プライベート用のロッカーに置いてあった。座学構内用の制服姿。セーラー服にも似たそのデザインは、中等の男子も同じで。共通のデザインだった。二の腕の腕章は赤かった。どうやら赤は後衛、青は前衛、薄紫は騎兵学科を表していた。
しかし・・・すげぇな・・・異世界の女の子って・・・
文学系の顔つき地味と知的と幼さ、目元を少し隠した感じの垢抜けなさって言うのが凄い。色々混ざり合ってない、シャワー上がりの黒茶色の艶っぽい髪がある意味凄い犯罪臭をはなつ。
ハッキリ言って御本人に直で言ったら泣く、自己主張のそれは。
出来る事ならギリギリまで喉をからし、腹の底まで飢え切った餓鬼状態で頬張りたいレベルだ。
タップリ、たわわの実りを熟しすぎて腐らせてた甘肉。ちょっとでも嗅いだら青臭すぎて鼻をつまみ。一度、
「アナタ、ミスティア・ミロスしょ?魔導学科の中で目下、超有名人で今年から高等の後衛学科にネレイド家の恩賞で特別編入する・・・災難ねぇ~」
「え・・・?」
ミスティア・ミロス、中等二期生なんだが、実は飛び級が認められた生徒だとクリシュナから聞かされた。その名前にヴィラは反応する、彼女は魔導国家スフィア・アーツの中でも飛びぬけてた逸材。その最大の理由・・。
「有名も何もこの子は魔眼を宿しているのよ・・・」
「ん???でもこの子・・・・」
魔眼・・・と言う言葉に共感を持ち彼女の顔を見つめる、ぽっと顔を背けるも、一度目をつむって。眼鏡を取る、彼女の目には、母とは微々たる違いではある。だがその目に宿ったのは金色の魔眼。
「え・・??ええ・・・??ナニコレ?!!」
驚いたのは眼鏡の方だった、ぱっと見は普通のメガネだが魔眼を遮断し封印する効果を持つ。そして目の負荷を軽減するための代物として造られた器材だ。それを手に取った。
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ヴィラのツッコミがすっ飛ぶ。
「ソッチ?!ちょっと驚きの方向性ズレて居ませんの?!」
「え・・あ・・・」
なんせ魔眼持ちの母と突き合わせている、それだけインパクトが薄すぎた。逆にメガネの方が遥かに興味深かった。母エルフィは六星魔眼であったし、俺の魔眼も同じである。思わず誤魔化す為に、母の座学で見知った話題を振る。
「あ!!おお・・・おぉ!!五星魔眼!!・・じゃぁコントロールや制御だけでなく、維持や継続特性が特化しているから。電撃魔法だったら・・六星魔眼の様な自己強化した上で高出力タイプとは違って技巧的に使えるから・・・あ・・別に六星魔眼が不利って訳じゃなくて・・電撃が精緻な制御で・・一番難しいって聞かされて・・・」
思わず俺は母の座学から学んだ知識を続ける。一同ハッっていう顔になる。
「でぇ、電撃状態で維持継続と誘導って言うのは、ほら魔脈の魔力の配分コントロール滅茶苦茶緻密で。魔眼覚醒しても才能無いと逆流も起こす事故を防ぐ為に、制御に意識するから動けないじゃなから・・・使い手が少ない理由もそこだから・・・使えたら魔獣によっては・・・」
しかしそこをバッサリ、クシュリナの露払いの後の追い打ちをヴィラが口を開いた。
「六星魔眼?四星魔眼じゃなくて?アタシ噂ですら見聞きした事が無いんだけど。にしても魔法には随分詳しいわねぇ?キミ」
「ホントですわね、貴方の知識にはひどい偏り方をしていらっしゃいますわ・・・それに六星なんて、そんな魔導師が居たら噂どころか伝説級になりますわ・・・。」
なんですと・・・?俺は思わず凍った。俺の言動っていうより、世間知らず、セオリー無視の行動、ズレた常識を抱えた割に魔法に関しての造詣の深さの異常性を指摘した。ウカツ!!
しかし、六星のくだりを擁護したのが、ミスティアだった。
「いえ・・六星って言うのは・・・口伝の噂の中や絵本のモデルとしても有名です。たしか・・六星魔眼の魔女を処刑直前に、野蛮人が彼女を奪って当時の国王を脅し姿をけした・・「贄の魔女と剣の使途」いう昔話がありまして・・・、その魔女のモデルはとある名門の魔導師一家の貴族だとか・・・。」
「ふーん・・・・」
ヴィラが顔を強張り、クシュリナが薄笑い。魔導国家って言うのは南東地の先の島々。北西地から反時計回りでやってきたことを暇つぶしで話した事がアダとなって見事な矛盾が生み出された。
ミスティアはレージの帳尻合わせのリアクションに、少しモジモジしていた。
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試験項目も色々ありながら、終盤に差し掛かる。一般受験者がほどんど失格ないし途中退場する。それらに代り、推薦や在学の特待生らの学徒が増え始める。
斬撃刺突技能、そして最終実技試験の見学だった。
斬撃刺突技能っていうのは決まったレギュで執り行るテストだ。
実践的仮想敵を相手に行われる。魔力感知と移動系の戦技使用は許可、だが戦闘系、自己強化系は禁止とされる。
試験官側から前もって準備された武器選び、デモンストレーションタイプで行われる。
敵20体と制限時間20分でフルスコアは2000。制限時間スコア1200。時間と共に減っていく。敵は合計スコア800。
一定範囲内に近づくと逃げ回り。その際に刺突と斬撃そして双方OKの三種類パターンが確定。判定ならびに箇所が剣術基本に元ついてその場で設定される。
それらの攻撃の正確さを、減点方式で採点。指定攻撃ミスの場合はノースコア。
制限時間を超えた時点で即失格とみなされ受験はそこで終わる、トライは1回と凄まじく厳しい。
球場クラスの広さに、複雑な建築物が何軒もある中規模の街。スタート前からターゲットの気配は放っていた、仮想敵はペットボトルに似たシルエット内に異様な植物が蠢くちょっと悪趣味な容姿だ。
前と後ろを設けているダミースライムと言うホムンクルスがターゲットだ。目玉に似たコアを切り落とすと液状化すると言う。
俺は『スコア』と聞いてゲームのチュートリアルを不謹慎ながら連想してしまう。
ヴィラが俺の2つ前の出番だった。小振りな佩刀を二刀選ぶ、俺にマントと自身の獲物を外させる。
「私のエモノで御座います、お願いしますねレージ。」
ごく当たり前に脱ぐ、思わず気おされて「お・・おう」と答える。一部は下心のゲスな歓喜の声。
凄まじい縦ロールに対し身体つきのかなり線は細く。陸上アスリートに似た健康さとグラビアなエロスが醸し出す。マントには特有のムンムンとした熱が宿っていた。試験官が用意の合図で即反応すると、唐突なクラウチングスタート。美麗な尻が付き上がって、驚く金色の尻尾が一回ブワリと振る瞬間。『スタァトッ』と腕を振り下ろす。
刹那に土煙巻き上げ、二本足、時に四本足で刹那に切り替える俊敏さ。一息遅れて俺も魔力感知で動きで追う。彼女は四つん這い二本足、三角飛びに宙返りとエリア内に次々に発破に近い音ならす。攻撃箇所の精緻さは欠けていたが、攻撃手法の失敗は決してなく、約4分ほどでさっさと彼女は終わらせる。スタート地点に戻り武器を返す、自身の装備纏いなおすも不満げだった。
「ヴィラ・ヴィギュレィ・ヴィシャ・・・スコア1011っ!!」
試験官が高らかに読み上げ歓声が上がった。
クシュリナの話だと平均は800程。最高で1200がトップスコアと解説した。
「まったく・・・野山をかける方が気分が清々しいですわ・・・」
俺の出番だ、自身と似た両手剣を手にする。それを見た二人を含めた外野が、エッていう顔になる。何故なら、室内戦闘を設けていたからだ。
試験官は再確認を促し、野次馬から失笑が漏れ、スルーする俺は大丈夫と答える。暫くしてからスタートの合図の手を振った。
『スタァトッ』
魔力感知の精度を上げ媒体の行動周期とパターンを把握した。仮想敵は人間同等の認識知覚範囲、逃走動作も全て同じ。厄介なのは指定攻撃範囲、その部分に俺は集中。徹底的に正確に丁寧に指定攻撃を行った。
結果を見て試験官も担当魔術師も困惑し読み上げる試験官も戸惑いを隠せない。
「レーヤ・スレイヤー・・ぇ・・っと・・スコア・・・1520ッ?」
ざわついた外野と観客ら。
時間はネイギュレィの倍の時間をかけた、最短ルートの出来過ぎた動き。
それはゲームの乱数調整を故意で行った、ズルにも似た行為だが。それを知ってを知らずか、二人が話した。
「戦いに勝って勝負に負けたって感じぃ?」
「ええ・・・とても興味深い御仁ですわ・・・」
「凄いです・・レージさん・・・」
獣人は自分より強く賢い者に惹かれ、教官はさも興味深そうな表情を浮かべ。魔眼の魔導師少女は驚きと歓喜に満ちた笑みを浮かべていた。
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