#3 付き合いが長くなると見えてくるからしょうがない
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あの麓の村での一件から3年経った。俺は12歳となる。
ちなみにあの日の事はお咎め無しという厳しいはずの母からは寛容と尊大とご慈悲の末の判断をくだされた、ありがたやありがたや・・・。
しかし、俺はあの事件以来、左目に眼帯をつける羽目になった。そしてそれが母が赦した理由でもある。その代わり魔法の鍛錬は厳しいものとなったが・・・。
「・・・まさか、貴方も私と同じ目を持つなんてね・・・しかも片目・・。」
実は左目は失明したわけでは無い、俺の左目には母と同じ魔導師特化特有の魔眼が覚醒してしまった。長々と抑制した封印環のそれは、俺の魔脈を異常活性化しあの一件で発揮した。それを隠すために付けるそうだ。まるで厨二病だヤッター!!
「そのお陰で、封印環5つ・・・俺の頃でも二つがやっとなのにのに易々と超えやがって・・・」
「それでも今の父さんで剣で勝った事が無いよ・・・。」
「今の俺は戦技を駆使しければお前を抑えられん・・・純粋な剣だけでは無理無理・・。」
「俺だって父さんと同レベルの戦技使ってる・・・それでも勝てないよ」
俺は愚痴った、事実だ、正直言えば自惚れな発言。そんな小童の生意気な発言を気にもせず俺を褒め称える。相変わらず俺の評価には甘い父親。
逆に母は厳しい、なんというか魔力の練りに関しては余念が無かった。それ故に父以上の厳しい修練があった。だがそれは大事なんだと自分に言い聞かせる。
「俺が編み出した四神源流。お前はほぼモノにしている、もし封印環を外し、戦技、魔法と手数ならお前の方が上だ。純粋に有利なのはお前の方、後は経験さ・・。」
「でも異常すぎるわね、貴方の成長は。魔脈の活性化は二次性徴と共に現れず筈なのよ・・・。」
母の言葉は手厳しく、辛い。それは心配の裏返しと受け止める、ここ最近は母のマッドな一面が垣間見えてしょうがない。それを蓋にする様にアージュがきり出す。
「そうそう、フォルと一緒に今日はサークと山狩りでしょ?」
「そうだった、サークさん待たせていた・・・んじゃ行ってきます!!」
フォルと言うのは左右の枝分かれの無い角を一巻きにし突き上げた角を生やした白亜の馬だ、一回りも二回りもデカイ野生馬であり。ずいぶん昔は戦馬とも言われてよく使われた。
新霊峰フューザーの深淵の森の奥深くで産気ついたところをサークと一緒に居合わせ。見守ってあげたのだ、しかしその子供を奪おうとする蛮族な面々が現れた。
それは母馬が傷だらけな理由も連中の仕業だった。
冷静なサークが怒ったのは初めてみた。
ガラムと母は俺に口酸っぱく注意された理由がよく分かった。
サークの戦い方は弓術が主だが、地の利、自然を味方にする。耳長の中で恐ろしい毒の知識を駆使する一族だ。掠っただけで絶命する毒矢を巧みに撃ち抜く技術は神業だった。目や口、ともかく撃って当たる所は確実に突き立てる。連中は逃げた先にはいつ仕掛けた分からない罠の数々。サークの術中はその愚者は新霊峰フューザーの冷酷な自然に飲まれていた。
罠の仕掛け方、考え方、そして人の本質の見極め方を彼から学んだ。
2年前のある日、角戦馬の母子が我々の元に現れた。母馬の死に別れを看取り子供を託された。それ以来俺が世話する様になった。
フォルやサークの顔を見るとあの時の事が思い浮かぶ。
「どうしましたか?・・言い当ててみせましょう・・・私が怒っているかどうかですね?」
「あ・・いや・・・はい・・・遅れてスイマセン・・・。」
「ふふふ・・・フォルの事と一緒に私の事を思い出したんですね・・・いけません。フォルが可哀そうです。」
フフフと笑うサークの顔は表情を読ませない何かがあった。とても俺には真似ができない。そう思った。
その笑顔が何となく怖く感じた。
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「レージ、何だこりゃ?」
ガラムは13になった俺の手に持っている獲物を見つめる、一言で言うと十手である。ガラムは鍛冶屋だ、お使いの大半はガラムの仕事、要は農具の整備や手入れの品の搬送だ。ここ最近は頻度が多く、借り入れた農具をぶん回す訳にもいかずたまらずガラムに十手を見繕ってもらった。
「最近物騒だから、こういうの在った方が良いだろうって思って、技術は要るけどね」
ビュンビュンと俺は打ち据える護身用の携帯武器として振った。皆呆れている中に格闘技術の一番高いアージュが感心した。
「鞭打の一種ね、しかも剣を受け止める取っ手もあるし、確かに剣術の心得を持つ者には有効ね嵩張らないのも強みだし・・・」
「よほどの腹に脛かねていなければこれで良いかなって・・・甘いかな?」
「甘いも辛いも無いわ。受ける、避ける、叩きつける、でも打ち付ける場所を的確にしなければ効果も意味ないわ、こんなふうに!!」
ブォンっと鉄扇を振り下ろす。おもっくそ切れ味のいい音が唸る、その顔はあの父ラグナも震えあがる。いや、あの鉄扇の味を知っている顔だあれは。
「アージュさんの格闘技術って医学前提でした・・・け?」
「人体急所を骨格を基本とした上で研究されている、まぁそれを含めて医学が無きしにもあらず。何よりも、新霊峰フューザーの麓という環境が根幹を強くする。いやぁ素晴らしい環境です。まぁ世間の・・・」
おっと、とアージュは自粛した。
アージュは医学の師であり、体術の師でもある。それゆえ封印環の魔脈の診方や感じ方を学んだ。魔力知覚という技術もそれで、魔獣や野党の感知に一役買う。
「原生から育成したこの薬草の数々は都市部のそれより上物・・・オマリーさん、もっと薄くして倍々にして、クソ節穴汚豚ゴミ貴族共に売りつけてもいいんじゃない?」
「や・・やめましょう、坊ちゃんの前でそんな話は・・・」
そう言われてオマリーの顔は真っ青だ。おっとというアージュの表情が鉄扇で顔を隠す。
前々から俺は気になっていた、皆世間に対してヒドイ毒づく言葉を吐き捨てている。それは憎悪と嫌悪に近い感情が垣間見えた。そしてそれを俺に知られたくない、そんな節が垣間見える。
そして俺も触れてはいけない事があれば見て見ぬふりをしようと自分を戒めた。
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新霊峰フューザー、高度800m位に位置する麓の街「アラヤット」。更に高度200mに位置する所にスレイヤー村が存在する。
大体此処に訪れる野蛮人の大半は密猟であり、そう言う連中はほぼ自然とサークの罠によって食い尽くされる。それがバカ者どもの末路だ。
だがスレイヤー村に続く道は拓けており。それ故、野盗連中も現れやすい。
っていうか最近滅法遭遇する。週七日中、半分は遭遇する。アラヤットの町長は首を傾げた。しかし、父ラグナは王都の連中が平和ボケた末に甘々になったんだろうよって、吐き捨てる。
あの人当たりのいいサークですら、口に噤み横に振る。世間に辛辣な一同に聞き出そうとする・・・が。
「坊ちゃん気にしなくていいですよ」
そう言うオマリーの言葉が最も、うさん臭く見える。
何かあったんだ、そんな風に直感し理解する。
その事を知るには、ある人物と出会う事になる。
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