第156話 夜の電話3

 スマホを石見先輩に渡してからしばらくして俺の元へとスマホが返ってきた。


「じゃ、ゆえちゃんまたねー。あっ後輩くんと話す?話したい?話したいよねー」

「石見先輩。元気すぎ。あと一応夜なのでお静かに」

「ごめんごめん。はい。後輩くんありがとう」


 俺はなんかニヤニヤしている石見先輩からスマホを受け取る。


「はぁ、結崎?生きてる?」

「あっ、松尾君——疲れた」

「ははは……大丈夫か?」

「——めっちゃ精神的に疲れた」

「だよなー。何話しているかは石見先輩が隅っこ行ってわからなかったが――ニヤニヤしてたし」

「もう、いろは先輩……何も言い返せなかった」

「ははは……」


 電話口からはちょっと複雑そうな結崎の声。気になるというか。石見先輩だからね。いろいろ言われたのだろう。ってか、ホント石見先輩電話中小声だったんだよな。普段からそれでいいのに。ってか、複雑そうな結崎の気分をなんか紛らわすには。


「あ、えっと結崎」

「うん?何松尾君?」

「その――せっかくだしそのうちどこか遊びに行こうか……結崎がよければ」


 そんなことしか思いつかなかったのだが――これデートのお誘いでは?えっ?俺何してるの?石見先輩居る前で。と言ってから思っていると。


「えっ……あ、うん!」


 とりあえず、よしらしい。明るい結崎の声が聞こえてきた。なお、今のやり取りは石見先輩に監視されているため。


「あー、なんかデートの話してるー。これは付き合ってる疑惑だ。疑惑疑惑ー」

「……ミスったか?」


 俺が石見先輩の声を聞きつつつぶやくと。


「松尾君。嬉しいけど……いろは先輩元気にしただけ……かな?」


 スマホからは結崎の『あははー』という声が聞こえてきたのだった。


「——だな。でも、まあそのうち行こうか。気分転換に」

「う、うん。行こう――その――2人で」


 2人を強調してきたよ。って、マジで結崎?人変わらなかった?と。俺が思っていると。


「もう。無視しないでよー。後輩くん。まあ朝まで取り調べするけどー」

「……」

「松尾君……ファイト――かな?」

「——いやだわ」


 すると石見先輩がまた俺の手にあるスマホを自分に引き寄せて。


「ゆえー、後輩くんもらうからー」


 そんなことを宣言していたのだった。だが。今の結崎はちょっと力があったのか。少しスマホから離れている俺からでも聞こえる声で。


「石見先輩!松尾君に迷惑かけないでください。大人しくしてください」


 そんなことを言っていた。まあ言わなくてもわかると思うが。


「にひひー」


 石見先輩には効果なしである。ってか、結崎の声もハッキリ聞こえてきたが。結崎よ。そっちの方が近所迷惑にならないようにな?である。そんなことを思いつつ俺はスマホを石見先輩から話し再度話そうとすると。


「……松尾君」

「うん?」


 結崎の声が先に聞こえてきた。ってか、石見先輩。今度はぴったり俺にくっついて話を聞こうとして来ているんですが。先輩。あなた女性でしょ。今更かもだけど――警戒とかなんかしないの?こんなに男子にベタベタしていいの?などと俺が思っていると。


「最悪——いろは先輩は外に追い出したらいいと思う。うん」

「くすっ」


 結崎の発言に思わず笑ってしまった。そう来たか。結崎でもそんなこと選択肢に入れるのか。そんなことを言われた石見先輩はというと。


「ちょ。ゆえちゃん厳しいから。って、聞こえたからー聞いたからね。今度会ったら覚えておくんだよー」

「いろは先輩もです。松尾君に迷惑かけないように」

「これは久しぶりにゆえちゃんとバトル――」

「はいはい。はぁ、結崎。とりあえずまたな。こっちはなんとかする」

「あ、うん。わかった。その――おやすみ」

「ああ」

「あっ、2人で終わらしたー」


 石見先輩が何か言っていたが俺は結崎をこれ以上巻き込むってか。長ければ長いほど石見先輩が余計なこといいそうなんでね。通話を終了させたのだった。

 多分今度結崎と会ったら、いろいろ言われそうだが。いきなり別の女子と2人っきりだからな。今までの俺ならなかったことなんだが。どうもおかしなことに最近なっているんでね。いろいろ疲れる夏休みだよ。


 ホントこの隣でニヤニヤしている先輩どうしましょうかね。マジで毛布か何かで縛った方がいいだのだろうか――それは訴えられるか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る