第148話 精算も終わった
長宮さんと別れて『さあ家に帰ろう』って、ことで暑い中大学前駅へと向かっていると俺達は声をかけられた。
「あれ?松尾?ってか。結崎や先輩まで――」
「うん?あっ、六石」
制服姿の六石発見。どうやら今日は午後から部活らしく。今から学校へ行く?という感じだった。やはり運は俺に、というのか。いろいろ精算していただかないと、ということで会わせてくれたらしい。って六石は俺ではなく。石見先輩でもなく。一通り俺達を見てから――急に結崎の方を見て固まっていた。
あっ。そっか。大人しいバージョンになったんだった。
「って、待て待て、え?結崎——?えぇー!?妹?いや姉か?うん!?」
イメチェン結崎を見て六石パニックになっていた。それが普通の反応か。そういえば学校に居る時は――結局結崎はクラスメイトとかとは、誰とも会わなかったんだな。俺と、長宮さんは在良君大木君と会っているが。結崎はあの場に居なかったしな。他で誰かとも会っている雰囲気なかったし。
「あ――えっと――本人なんだけど――」
六石の挙動不審な行動に、結崎少し俺に近寄りつつそんな返事をしていた。ってか、確かに六石の言う通り。今の結崎なら結崎家妹、または姉で通る気がする。
もしこの場で結崎が『妹です』『姉です』を言ったら。いろいろ起こっていた気がする。
「……何が起こった……って、雰囲気まで――なんか変わった?えっ?おい松尾何が起こった説明求む」
すると、今度は六石が俺を引っ張り聞いて来た。
「……いろいろあったんだろ」
「松尾君大雑把すぎ」
適当にとりあえず返事をすると後ろから結崎の声が聞こえてきた。
「じゃ結崎が説明を――」
「あははー」
俺は結崎の方を見つつ返事をしたのだが。結崎サッと視線を外してきた。
「逃げたか」
「ってか、松尾はハーレムかよ。結崎に先輩と出かけてるとか」
「はい?」
「2人も連れて」
出かけている?まあ昼ご飯を食べには来たが。って、これハーレムなのか?俺は巻き込まれただけだし。それに。
「ちなみに数分前まで長宮さんも居たが」
「……何だと――松尾意外といろいろしてるんだな」
「違う。巻き込まれただけだって」
「後輩くんが無理矢理誘っ――」
「いろは先輩。黙る」
「後輩くんー。ゆえちゃんに怒られたー」
「でしょうね」
唐突に石見先輩が何か言い出したが結崎がすぐに止めてくれた。ナイスである。すると六石が何か思い出したらしく。自分のカバンをあさりつつ。
「ってか、そうだそうだ。松尾会えて良かったわ。連絡しようしようで忘れててよ。いろいろ返済するわ。電車はまだ大丈夫——じゃないからパパっと」
「覚えていてくれて良かったわ。忘れられていたら、長宮さん蓮花寺さんに声かける予定だったから」
もちろんそんな予定は無かったがな。
「いやいや、それは怖すぎるだろ。夏休み明け学校行けないわ。じゃなくても長宮――居ないよな?近くにまだ居るなら様付けないと俺――命が終わるんだが――」
「そこまでか。って、返済は早めが基本だな」
「まあ、金はな。ってことでこれこれ。ってか、結崎は何があったんだ?急にあれヤバいだろ」
六石からお支払いなどをしてもらっていると、六石がそんなことをまた言い出したので、俺は結崎を――って、気が付いたら結崎と石見先輩は、俺が六石と話している間に時間がかかると踏んだのか。それとも暑かったからか。近くのお店に石見先輩とともに入って行くところだった。って、石見先輩が結崎を引っ張っている感じなので何かを見つけたとみた。
「まあ急に変わったな」
「あれは――イメチェンってか、やばいだろ。似合いすぎ。実はあれが正しい姿——?いや、今までも綺麗だったけどよ」
これもしかして――結崎の人気がさらにアップ?なのか?
「まあ、いろいろだな」
「いろいろしか言わないな松尾は、興味ないのか?」
「いろいろなんだよ」
いや、ふと思ったが。あまり結崎の人気上がらないでほしいな。と、いろいろあったからな。
「何だそれ?ってか、昨日水ぶっかけたお詫びは――後日何か奢るよ」
「あー、別にいいんだがな」
「いやでも、まあ、長宮に絡まれたら助けてもらわないとだからな」
「その助けには入りたくないな」
俺もう巻き込まれたくないし。疲れるんだよ。相手するの。何故か最近よく絡まれるし。一緒に居るから。
「頼むよ。松尾はなんかわからんがクラスのお偉いさんたちと上手に渡り合ってるじゃないか」
「……お偉いさんね。確かに目立ってるグループ」
「そうそう――ってヤバい、電車ー!じゃ、松尾。俺部活あるから」
「ああ、そうそう学校廊下とか死ぬくらい暑いぞ。水分必須」
「だよなー。今日は午後からって。地獄なんだよな。まだ午前中の方が――」
「今日は朝も地獄だったぞ?」
「ってか。今気が付いた。学校行ってたから3人とも制服なのか」
「制服で遊んでたわけではないな」
まさかの今それ?って――六石時間。知らんぞ?
「っか、電車だよー。じゃマジで電車出るから行くわ。またお詫びは今度」
「ああ」
精算を済ませた六石は猛ダッシュで駅へと向かって行った。走ると暑いぞだが。時間がギリギリみたいなので仕方ないだろう。ってか、日差しの下で話していた俺達。暑いわけだ。馬鹿だな俺達。あれだ。暑すぎて自分たちの居る場所を忘れていたらしい。
六石と別れた俺は先ほど結崎と石見先輩が入って行ったお店の方へと向かったのだった。
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