第116話 夏休みが――消える?3

 図書室の中は空気が淀んではないが――暑かった。カーテンが閉めてあったのもあるかと思うが。既に暑い。ということで、まずは石見先輩とともに窓を全て開けるという作業をしたのだった。


 図書室の窓は高い位置にも窓があるのだが。そこを開けるのは大変なので、とりあえず届くところは全部開けた。すると、すぐに図書室内に暑いなりにも風が抜け出して。


「——うん、まだマシか」

「だね。ってことで、後輩くん。ちょっと雑談してからはじめようか?まず何から話す?」

「——えっ?って、散々今話してませんでした?作業して?なんですがね」


 おいおい、この先輩。マジで作業進める気あるんだろうか――窓開けただけで休憩みたいな雰囲気になるとは思わなかった。


「あははー。嘘嘘。なんか後輩くんにそのうち仕事しろ!って怒られそうだからねー。やりまーす。やりますよ。ちょっとまだ暑さもマシなうちにやりますよー。本気出しちゃいますからねー。一気にしちゃうからねー」

「ホントかなぁ……」

「やるから大丈夫!さあさあ後輩くんも作業作業」

「……数秒。数十秒前の雑談とか言っていたんだが――スイッチ入るのだろうか――」

「問題なし!」


 俺がつぶやいていると、石見先輩は元気に返事をしてから椅子に座り。その後は本当に自分の担当の作業を開始した。筆記用具やらを出して、デザインを考えたり。という感じだった。

 石見先輩。とりあえず今のところは真面目に作業をするみたいなので、俺も昨日の続きをするために本棚の方へと移動して――って、脚立必要だわ。などなどという感じで作業が一応始まった。


 ――それから1時間……2時間と時間は経過していき。


 びっくりなことに、と言うと失礼なのかもしれないが。昨日の様子とか。今日のスタート時の様子を俺は見ているのでね。そう思ってしまうのは――仕方ない。ということにしてもらい。

 とにかく。石見先輩は真面目に作業をしていたのだった。黙々とイラストを描いたりということをしていた。

 気が付けば石見先輩の周りには出来上がったものもいくつか置かれていた。

 ちなみにだが、俺も真面目に作業をしていたからな?地味に汗をかきつつ。脚立の上り下りとか。本運び。整理をしていたからな?

 その途中で、ちらちらと石見先輩の様子を見ていただけであるが。いや、ちゃんと作業しているのか。静かだと逆に心配ということもあったのでね。でも、ホント集中していたのか。石見先輩はこちらに話しかけてくることもなく。こちらにちょっかいということもなく。あれからはずっと作業をしていた。

 そういえば途中で鼻歌が聞こえてきていたので、調子よく作業をしていたらしい。


 ちなみに、妨害が無ければ、俺の方もちゃんと作業は進むので、昨日行った作業以上に午前中の間だけで俺の方も作業は進んだりしていた。

 ってか、なんかこの部屋。人が足りない気がするのは気のせいだろうか?と俺は思いつつ。一度手を洗うために廊下の方へと向かう際。石見先輩の横を久しぶりに通ってみると――。


 石見先輩。イラストめっちゃ描いていた。看板用やら。本の紹介用やらやら、めっちゃ書いていた。そしてどれもとてもかわいくて良かった。真面目に1つ欲しいくらいだった。

 石見先輩、作業しだしたらすごいな。と俺は思いつつ。石見先輩の近くで。


「マジか。すごいな」


 そんなことを呟くと石見先輩がこちらを見た。一瞬しまった。邪魔をしたかと思ったが――石見先輩は背伸びをしつつ。


「どしたの?後輩くん?」

「いや、ちょっと埃で手が汚れたので、手を洗いに――と、石見先輩の横を通ったら――なんかすごいというか。めっちゃ進んでいて驚いたというか。石見先輩が真面目過ぎてびっくりしてます」

「なんか失礼な事言われてるなー。私昨日からずっと真面目だよ?」

「……」


 いやいや、あなた昨日の事覚えている?と、思いつつ石見先輩を見ていると。


「……嘘です。ここ数時間だけ頑張りました」

「素直――」

「ってか。後輩くんの方は進んでるの?私が見てないからってサボってない?」

「いやいや、やってますよ。ってか。ホントこっちに石見先輩のちょっかい。邪魔もなくだったので、俺の方も作業。えっと――看板とかの設置は進みましたね。まあ1人何で脚立とか移動させて――で、時間かかってるんでまだ全部は終わってませんが――」


 俺が先ほどまで作業していた方を見ると。まだしないといけないことは残っている。今日で終わるかも――?という感じかな?


「やっぱり私失礼な事言われてるな。これは――指導しないとかな?」

「すみません。昨日とのギャップというか――驚いていたので」

「仕方ないなー。まあ今日は許す。ってか。良いでしょ?」

「すごいです」

「1枚10万円くらいで売れないかなー」

「——なんという自信。ってか高い」

「頑張ったからね」

「でも――まあ確かに先輩のイラストとか。綺麗ですから。欲しいですね」

「はい。10万円」


 俺がつぶやくと何故か先輩が手を差し出してきた。買うとか言ってませんよ?


「……」

「悩んでる悩んでる」

「違います。呆れてるんです」

「えー」


 そんな感じで少し石見先輩と話していると。


「あら、早くから作業してるわねー」


 ここにきて本来開始時に居てもいいだろう。というお方が登場したのだった。ちなみに今はもうお昼前――でいいかな?うん。朝ではない気がする。多分朝から作業していることを知っていたはずなんですがね。石見先輩が許可取ってると思うし。

うん。何で今登場なのか――楚原先生。

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