第111話 駅で休憩3

 その後の事を話すと。もちろんだが、帰ることになった。そして、どうやら今日は俺は1人で田園駅方面の電車に乗ることになりそうだ。

 結崎は石見先輩と帰ることになったのでね。石見先輩がずっと結崎に『おいでおいで』と言っていたので、最終的に結崎が折れた形となった。


 ちなみにそのあとすぐに結崎がコソコソと俺のところへとやってきて……。


「ま、松尾君」

「あ、う、うん。何?」


 あっ、やっぱり来るか。ここで解決しに来るか。などと俺が思っている。予想通りらしく。結崎はちょっと恥ずかしそうに。


「あ、いや、昨日のこと……なんだけど」


 などと言いだしたのだが。忘れてはいけない。俺達の周りには――人が居る。こういう話が好きな人が居る。当たり前と言うか。予想通りまた俺と結崎の会話中に妨害が入り。


「おっ、何々?告白の返事?返事?おーどうなるどうなる?」


 石見先輩が結崎にもたれながらそんなことを言い出したのだった。めっちゃ結崎石見先輩にほっぺをぐりぐりとされていて――石見先輩の手を結崎は止めようと押し返していた。

 ……って結崎よ。このタイミングは無理だろ。外野がウザいから。


「さあ、松尾君。こういう時はとっととOK言ったらいいじゃん」


 すると、長宮さんも俺の肩に手を置きつつそんなことを言ってくるもので。場の空気がおかしいというか。これは今じゃないよな。という感じになり。さすがに結崎もわたわたしつつ。


「ち、違う!あー、えっと、その――も、もう。その!松尾君。昨日の話はとりあえず凍結!ってことを――」

「ゆえいいの?先輩強そうだよ?」


 凍結?うん?


「奈都うるさい!」

「にひひー」

「あー、今日は終わり。なし!もう帰ろう――ごめん松尾君。周りが――」


 結局結崎はバタバタ。ちょっかいをかけ続けている2人の相手をしつつそんなことを言ってきたのだった。現状なんかいろいろあったから――こうなるか。


「あー、ゆえがチャンス逃した」


 そして、何故か俺の横で長宮さんが『面白くないなー』とつぶやきながら、うなだれていた。ってか、でもうなだれつつ。笑顔?だったように見えたのは――いやいやってか、いろいろ含めて何で?と俺が思っていると。

 結崎にちょっかいをかけていたもう一人のお方。石見先輩がこちらへと寄って来た。


「じゃ凍結中の後輩くん私と付き合って!」

「……」


 明らかに冗談で言っているだろう。という感じで目の前まで移動してきたのだが――それをガッツリ真に受けたらしい結崎は。


「な!?だ、ダメ――ではないか。私には関係ない――って、私は何も――」


 パニックだった。いや、助けた方がいいのだろうと思ったが――何だろう。俺自身も結崎ゆえという人をわかって来たのか。今の雰囲気の結崎は面白いというか――なんかかわいいな。と、思いつつ何も言わなかったのだった。

 すると石見先輩は結崎の肩を叩きながら。


「嘘だよ。ゆえちゃん焦りすぎー。かわいいー!」

「い、いろは先輩!」

「かわいいかわいい。よしよし」


 完全に結崎を馬鹿にしている――と言っていいのかはわからないが。とりあえず石見先輩の前では、結崎が顔を赤くしてプルプルしていた。

 そんな中そろそろ結崎が爆発かな?と俺が考えていると。俺はもう一人の存在を一瞬忘れていた。


「松尾君松尾君。私もこの流れ的に告白したらいい?」

「……長宮さん。乗らなくていいから」


 長宮さんはニヤニヤと俺の横に来てそんなことをさらっと言ってきたのだった。なんというメンバーに囲まれているのか俺。


「後輩くんが一気にハールムハーレム」

「石見先輩。お静かに」

「ごめんごめん。勢いで。で、ゆえ付き合わないの?」

「い、今は……って何で話が戻るんですか!」


 本当に結崎が倒れないか心配だよ。めっちゃ2人に振り回されているからな。ってか。これ――結崎がもし噴火。暴走したら――誰も止められないことをこの2人覚えているのだろうか?確か少し前に結崎が強い。的なことを聞いたような。あっ。蓮花寺さんが止めれる?って、そのお方居ないし。俺知らないよ?


「ポンコツゆえだー」

「奈都!調子乗らない!」


 ……でも、今のところ大丈夫そうかな?かなりびしっと長宮さんをにらむ結崎だったが――噴火はして無さそう。いや、小規模噴火してるか?そのうち長宮さんが泣かされるかも。


「わわわ、松尾君パスパス」

「パスしないように」


 長宮さんはそう言うと、何故か俺の後ろに隠れて――俺を盾にしてきたのだった。って、俺がそんな3人の様子を見ていると、結崎が慌てつつ。


「と、とにかく松尾君……言い出したの私だけど――ちょっと待ってください」

「あ、いや、大丈夫だけど……今大変そうだから」

「ごめん――ホント。大変」

「……お疲れ様です」

「——とりあえずいろは先輩黙らすから」

「……結崎。強くなったな」


 俺はこの場面。いろいろ言われている中でも。頑張る結崎を見てつぶやくと。


「強くなったね。ゆえ」


 俺の後ろにまだ隠れつつ結崎を見ている長宮さんも頷いているのだった。


「あれ?私ゆえちゃんに怒られる?お仕置き受けちゃう?調子乗りすぎた?」

「石見先輩。頑張ってください」

「後輩くんに見捨てられた!?もしかして私ゆえちゃんの逆鱗触れた?触れたの?ねえゆえちゃん!」


 いやいや石見先輩。本人に聞くんですか?

 って、多分逆鱗とかには触れてないと思うけど。いや、俺もわからないからな。触れてる?っか、あまり結崎にいろいろ言うと、爆発はあるかもだから。わからないときは変に口を出さない方がいいということで、その後結崎と石見先輩がなんやかんやとまだ言い合っていたのだが。大人しく見守った俺だった。

 ちなみに長宮さんはちゃっかり俺に隠れつつスマホで写真を撮っていたというね。

こっそり何をしているのか聞いたところ。


「澪に送るためにね。にひひー」

「拡散してるよ。ってやめなさい。また揉めるよ?」

「あっ、松尾君をめぐる戦いってタイトルにしておくから」

「話を聞いてないし――って、長宮さん。やめなさい」

「にひひー。松尾君の盾があるからね。今なら何とかなる。ってやりたい放題」

「いやいやバレているかと――いや、結崎、石見先輩と言い合ってるから……意外と気が付いてないか」


 長宮さんと話しつつふと結崎と石見先輩の方を見たが。あれは――気が付いてないかもしれない。

 石見先輩は、こっちの様子に気が付いてそうだったが。結崎はバタバタというか。必死に岩見先輩に攻撃を――なんでね。俺がそんなことを思っている間も俺の後ろでは長宮さんが撮影をしていたのだった。


「松尾君のインタビューとかも入れる?」

「何を作ってるの?」

「嘘嘘ー。あっ、タイトルは入れるから」

「だから、やめなさい」

「ひひひー」


 みんなそれぞれ楽しむのが上手というのか。ずっと盛り上がっている3人だった。


 とまあ、いろいろありまして、俺の初——彼女?いや、そうなるはずだった?は……一時中断。凍結に。

 って、なんだこれ!?凍結?うん。何でそうなった?と後から思った俺だが。でもバタバタしてるのはわかっているので、落ち着いてがいいのだろうと解釈した俺だった。

 なんかいろいろ損したような――って損ではないが。何だろうね?逆に周りに人が居た方がその後がスムーズというか。経験のないことは難しいから変に考えない方がいいか。


 ちなみに、まさかこの返事。とでもいうのか。このあとの事が進むのがかなり。ホントかなり後になるとは――さすがに俺もこの時は思ってなかったがね。

 いや、周りが賑やかな夏休みが始まったため。なんというのか。いろいろな事がどんどん起こって、落ち着いた。というのがなかなかなかったんだよ。

 おまけに天にも見放された――というのか。大きなことも起こりまして――って何で俺は未来の事を語っているのかは知らないが。とりあえずは今か。そうだな。今が大切だな。


 その後のことを言うと結崎と石見先輩は、言い合いながら2人で帰って行き。俺と長宮さんは2人と別れた後駅のホームへと移動したのだった。


 ってか、マジで俺たちは駅の前で何分。何十分いや何時間話していたのだろうか?ちゃんと時間を見ていた者はいなかったので正確な時間を知るものはないなかった。

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