第49話 同室 

「というわけで――再度お邪魔しまーす」


 結崎が俺の部屋へと入ってくる。


「どうぞ。ってか。なんかごめん」

「なんで松尾君が謝ってるの?」

「いやー、俺が花火の事話さなければこんなことにはならなかったかなー。と。ってかどうする?ばあちゃんとこ行って部屋借りるか?」

「でももう休んでたら悪いから。私はここでいいけど」

「いいのかね」


 現在まだ電車が動いていない為。俺と結崎は田園駅から俺の部屋へと戻ってきた。あのまま駅に居ても暑いだけだったからな。


 涼しさを求めて部屋へと戻ってきて今エアコンのスイッチを入れたところだ。

 そしてこの時間だと――なんか電車動かないままという気がしていたので。俺はこっちに戻って来るときに、じいちゃんばあちゃんのところに行き部屋を借りようか。と言ったのだが。結崎は遠慮した。というのが少し前の事。


 ってか、本当は慣れてるというか。何回も経験があるというのもおかしい気もするのだが。結崎が寝ているところって何度も俺は見ているのでね。結崎が俺の部屋でいいと言っても、とくに何があるというわけでもないという現状。って、やっぱりこれは何回もあったらおかしい事か。


「っか、どうする?マジで――ここ泊まる?」

「私は大丈夫だよ?松尾君だし」

「俺はどう見られているか知らないが……」

「安全な人?」

「いつの間に俺の評価はそんなに上がったのか」

「ずっと高いよ?松尾君の安定感すごいからね。あっ……その前に。お風呂だけ貸してほしいかなー。あっ、着替えも貸してください。かな」

「えっと――体操服でOK?」

「うん。ありがと。また洗って返すね」


 ということで、じいちゃんばあちゃんはすでに夢の中の可能性が高いため。結崎は俺の部屋に泊まることになった。


 着替えを渡すと結崎はこれも慣れている。知っている。って、おかしいかもしれないが。普通に風呂場へと向かって行った。俺が場所を教えることなくね。って、バスタオル渡し忘れた。

 なので俺は結崎を追いかけて――外の風呂場の前で声をかける。


「結崎?」


 明かりの中で影が動いていたので、とりあえず外から声をかけた。多分正しい行動だろう。


「ひゃっ――えっ?な、何?松尾君」


 ちょっと室内からは――バタバタしている感じがあったが。それは気にしないで。


「いや。バスタオル渡し忘れたから」

「あっ、そうか。ありがとう、ちょっと待って」


 それからまたバタバタ音がして――ドアが少しだけ開いたので、バスタオルを結崎にパス。俺はすぐに部屋へと戻った。


 ってかあれは――まあ服をもう一度来ていたな。ってことはまあ触れず。


 ちなみにその時に俺は隣のじいちゃんばあちゃんの方の家を見たが、寝てるな。明かりも消えてるし。静かだった。

 それから俺が部屋でぼーっとしていると。結崎が少しして部屋に戻ってきて、交代で俺が風呂へ向かう。

 ささっとシャワーを浴びて部屋に戻ると。ちょうどドライヤーで髪を乾かしていた結崎——って、ちょうど終えたところだった。

 にしても結崎ドライヤ―の場所よくわか……あっそうか知ってるよな。掃除を手伝ってもらった時にも貸したから覚えていたのか。


「あっ。ごめん勝手にドライヤー借りちゃった」

「いや問題ない。っか、この部屋寒い?」

「うんん。ちょうどいいかな。私普段ガンガンに効かせてるし」


 そんなやりとりを結崎としつつ。俺は飲み物を結崎に渡した。


「飲む?」

「あっ。ありがと」


 それから飲み物を飲みつつ少し結崎と話していると。


「……」

「——落ちたか」


 ベッドにもたれつつ話していたのだが。結崎の返事がなくなったな。と思ったら夢の中のお方が居た。


「結崎。寝るならベッド使え。俺床で寝るから」

「……」

「——完全に寝たのかよ」


 俺の横では完全にお休み中?力の抜けている結崎が居る。っか、無防備すぎない?でもあるのだが。いや、普通に体操服姿なのでまあ普通に肌は見えてますからね。ってちょっと気になったのは、突然泊まった結崎。着替えなんて持ってなかったよな。下着とかどうした?があったが――もちろん聞けず。俺女物なんてないからね?


「結崎」

「……」


 再度俺が声をかけたところで結崎は夢の中?で反応なし。


「……ぐっすり寝すぎだろ」


 とりあえず少し起きて移動してほしいのだが。声をかけるだけでは結崎は起きなかった。疲れていたのだろうか?と思いつつ。


 すこし持ち上げてベッドに寝かせるだけなので、そっと結崎の横に。そして体育座りの形で寝ていた結崎の身体をそっと持ちあげた。


「——何してるんだか。俺」


 つぶやきつつ。ベッドに降ろそうとしたら。


「……ホント。私も何してもらってるんだろう」


 突然そんな声が腕の中から聞こえた。


「ちょ――起きてたの?」

「……今……起きた」


 結崎を抱えて立ち上がったら。さすがに起きてしまったのか。抱えた結崎と目が合った。って、おかしいな。こんな光景。今日すでに1回あったような。


「……えっと。現状説明。結崎が寝た。起こしたけど起きなかった。だからベッドにです。はい」

「わかってる。って――ごめん」

「うん?なんで結崎が……ってごめん。まず降ろすわ」

「あっ――ちょっと」

「えっ?」


 結崎を降ろそうとしたらストップ指令が。あれ?これもデジャヴ?


「——写真撮っていい?」

「はい。降ろします」


 この話は聞かなくていいと経験上判断した。


「ちょ、なんでー。奈都とは――」

「もしかして結崎……寝たふりだった?」


 一応確認で聞いてみると――結崎の頬が赤くなった。


「——そうです。ちょっと抱っこされるとか。いいな。で……ずるいことしました。ごめんなさい。重いのに」

「いやいや全く重くないが――」


 なんか俺に抱えられたまま。明後日の方向を見ているお方が居た。って、最近結崎のいろいろな姿見るな。

 って、降ろそうか。多分俺もなんか恥ずかしいし。


「降ろします」

「あっ……」


 結崎何かつぶやいていたが。俺はそっとベッドに結崎を降ろした。


「写真撮ってない」

「なんで長宮さんもだけど写真欲しがるの?」

「……そりゃ――はじめてだから?」

「撮るようなものじゃない気がするんだけど?」


 ベッドに降ろされた結崎は女の子座りの状態になり。なんか俺を見つつ訴えている。


「……ねえ」

「うん?」

「——もう一回ダメ?」

「えっ?」

「写真」


 スマホを抱きしめている結崎。何このかわいい子?


「——なんでさ」

「……あと1回」

「そういうのは――彼氏さんにお願いをするとかですね」

「い、居ないし」

「だからって俺がするのも」

「松尾君は――そりゃ。うん。男の子だけど最近はほら。よく一緒に。友達だから。あと――奈都も撮ってるし」

「なんでそんなに撮りたいのだが」

「……ダメ?」

「——」


 まあ嫌ではないんだが――。


「……撮るだけなら」

「やった。じゃ、その重いけど。お願いします」

「いやいやさっきも言ったけどめっちゃ軽いからね?」


 結局もう一度結崎を抱っこしました。そして結崎が写真を撮りました。のちに――2人とも恥ずかしくて潰れました。

 気が付いたら朝でした。以上こちらからの報告でした。


 ★


 いやなんかね。ミッション終了というのか。写真撮って。なんか2人とも力が抜けて――ベットに俺が転がったら結崎も倒れてきて、俺寝る場所間違った。で、床にとか言っていたら。結崎が『一緒でも――』みたいなことをなんかを言い合っていたはずだが……気が付いたら朝でした。


 記憶がないって怖いね。まあいろいろ精神的に2人とも疲れたんだろうね。間違いない。そして翌朝。かなり早くに目が覚めたので――。


「おばあちゃんたちに迷惑かけちゃうから」


 結崎は言い。ほぼ始発の電車でこっそりと帰って行った。

 ちなみにじいちゃんばあちゃんには結崎が泊ったことは、全く気が付かれていなかったらしい。朝起きているとは思ったが。ホントに知らなかったのかは知らないが、知らないなら知らないでいいか。

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