第10話 黄金螺旋

 ◇黄金螺旋

 俺達は荷物を部屋に置くとすぐに受付へと戻ってきていた。

 俺は受付の椅子に腰かけ、ゆったりとくつろぎ、テイラーはお店の情報を訊いていた。

「二コラさん、この辺でプレゼントを買えるようなお店でおすすめのところとかてありますか?」

「そうですねぇ、プレゼントと言っても色々ありますけど、プレゼントはそのような方になさるのですか?」

 俺の耳にはよくは聞こえないのだがなにやら話は誰に渡すのか?みたいなことを言っているように聞こえる。

盗み聞きは良くない。良くないことは分かっているがしかし、聞きたい。

「あ、あのですねぇ、実は彼に……」

 テイラーはカウンター越しにいる二コラさんに耳打ちするため身を乗り出すと——

ちょ!見えてる見えてる!俺の目にしっかり映し出されてますよ!ちょ、テイラーさん!真っ白なレース状のそれが見えてますよ!

買い物に行く前に牢屋に行っては敵わないので、慌てて目を逸らす。

それからしばらくテイラーの方へと吸い付く目球を堪え続けるため、それはもう必死だった。

しばらくしてテイラーは話が終わると

「どうしたの」

 と僅か数分の間に廃人のようにやつれた俺に声を掛けてきた。

「……ん、終わったのか。あー俺はちょっと戦争をな」

 俺は……勝ったのか……俺は自分に勝ったんだ!

 などと最前線で生き残った兵士のように疲弊しながらも、心の中で勝利の祝杯を挙げていた。

「あんた何と戦ってんの……」

 呆れたと言わんばかりの表情を向けられたが構うものかと、俺は外へと足を向かわせた。

 

「それでどこに行くんだ?家か?宿か?」

「いや帰らないよ⁉っていうかここまだ宿だからね!ホント宿出て一歩目に出る発言がそれとか信じらんない」

 いかんいかん。普段ならどこか行くと聞かれれば迷わず家に行って昼寝するか、どこか日光にでも浴びながら昼寝でもできる場所に行くので、遂その癖が出てしまった。

「じゃあどこ行くのか決まってるのか?」

「実はここに行きたいの!」

 そういってテイラーが取り出した『黄金工房』と書かれたちらしにはアクセサリーのイラストが描かれていた。

「これね、ネックレスなんだけど、実はお守りで、その、今王都で凄い流行ってるんだって!特にカップルの間では……」

 最後の方に何か言っていたような気もするが、確かにこのアクセサリーは芸術に疎い俺でもなんとなく凄い綺麗なものなんだろうというのは分かった。

「それでね、ここのお店だとこれを自分達でオリジナルのアクセサリーが作れるんだって!」

なるほどそれで自分でハンドメイドしたいということか。

乙女心ってのはよく分からんが、男心的にはハンドメイドのものをプレゼントなんてされちゃ堪らないだろうな。それもテイラーみたいな飛び切り美人な子にプレゼントなんてされたら舞い上がってしまうに違いない。

「そ、それでさ男の子的にはこういうハンドメイドのものってどうなのかな?重いとか思ったりしないかな?」

「そんなこと気にする必要ないと思うぞ。男なんてのは気持ちさえこもってればどんなプレゼントでも喜ぶもんだよ」

「アンディも?」

「ばっか、そりゃ当たり前よ!もし貰えるんだったら俺なら嬉しくて発狂しちゃうね」

「そ、それはちょっとキモいかな……」

 え、なんかドン引きされてます?しょ、しょうがないよね?だ、だって俺プレゼントなんて貰ったことないし!大体男なら皆発狂とかするんじゃないんですか?違うんですか⁉などと自暴自棄になることで、なんとか衝動的に死にたくなるようなことから目を背ける。

「ま、とりあえず行ってみよ!」

 テイラーはそう言って俺の手を取って走り出した。俺は引っ張られる手に危うく転びそうになりながらもなんとか耐えてテイラーと共に走っていった。


 到着した場所は王都の西側に位置する一つの小さな工房だった。看板には『黄金工房』と書かれているが名前通りの豪華絢爛で煌びやかな工房というわけではなく、どこにでもある普通な工房ではあった。だが、そんな普通な工房にはずらりと人が並び、普通ではない程の行列ができている。

「めっちゃ並んでんなぁ」

「めっちゃ並んでるねぇ」

 決して工房が小さいというわけではないのだが、ざっと見ても五十人ほどの人が並んでいた。

 しかしこれは来るべき所を間違えたのではと思うほどカップルらしき人が多い!

「なぁ、ここ俺みたいな非リア充の人間が来てよかったんでしょうか?」

「あたしもいるから大丈夫でしょ。それより本当に人多いよね」

 しかしこの店よく並んでいる人を見るとプレイヤーが多い。

「テイラー、この店って普段から王都に住んでる住民には人気ないのか?」

「あー、この店って店主がプレイヤーらしいよ。だからプレイヤーの客が多いんだってさ」

 テイラーはちらしを食い入るように見ながらそう答えた。

 それにしてもプレイヤーなのに店の経営を行っているとは珍しい人もいるものだ。

 しばらくして俺達のところまで順番が回ってきた。

 店に入るとその中では壁中にアクセサリーが飾られていた。

小さいものでは人差し指の先に収まりきるくらいのものや、大きいものでは家の置物にでもするのかと思うほどの大きさのものがあった。

「いらっしゃいおにーさん達。我がオームの『黄金工房』へようこそ。今日はアクセサリー作りの体験かい?それとも武器制作かな?」

 そこにはここの店の娘さんかなと思われる綺麗な碧色のツインテールに翡翠の瞳を兼ね備えた可愛らしい小さな女の子がいた。

「あ、今日は体験をと思って来たんですけど、あの店主さんは……」

テイラーはちょうど俺も気になっていたことを訊いた。

「いや、ウチ店主だから!背は小さいけど!店主だから!」

 なるほど、さてはおままごとをしているんだな。だが残念ながら俺達にはそれほど時間に余裕があるわけではない。心苦しいが今日は断らせてもらおう。

「お嬢ちゃんごめんね!今日は一緒におままごとはできないんだ……今度来た時には絶対に一緒にやるから……」

「だから!ウチは!子供じゃねぇ!」

 オームと名乗った少女は「!」の度に可愛らしく地団駄を踏む。

(な、なんだと……この国では幼女に働かせても良いという法律ができたのか……⁉)

 軽くこの国の労働体系の終末的な様を見せつけられ、一人戦慄していると

「おい!お前今ウチのことロリとか思ったろ!」

「いや決してそんなことは思ってないぞ。俺は飽くまでも幼女と思ったまでだ」

「一緒じゃボケェ‼」

 グフゥッ!

幼女のくせに異常な威力のドロップキックを俺はもろに鳩尾にくらい、一瞬失神してしまった。

なんだよこの幼女見た目によらずとんでもない威力で蹴ってきやがって。

ていうか最近俺の周りの女性陣の強さ、おかしくないですか?インフレしすぎじゃないですか?

「ところでここは武器も作ってるんですか?アクセサリーを作っているのは分かるんですけど武器らしいものが全然見当たらないというか……」

 蹴られたダメージに呻く俺を差し置いて、テイラーはオームに訊く。

 確かにこの店は工房であっても失礼ながら武器制作を行っている工房には見えないな。

「あー、武器を作ってるのはウチじゃないよ。ここでは武器制作のために一部工房の設備を貸してるだけ。それ以外は全部セルフサービスなんだ。一応場所はこの先にある工房の隣の部屋を貸してるからもし武器制作がしたくなったら御贔屓にな。それでえーっと、アクセサリー作りだよな。それじゃ付いて来て」

 そう言って俺達は彼女の後を付いていくとそこには工房があった。

 工房には工具や切断機の他にも何に使うのかよく分らないようなものが多くあった。

「コホン。それじゃ改めて、ウチはこの店を一人で切り盛りしているオームだ。気軽にオームって呼んでくれていいぜ」

「あー俺はアンドリュー=アインザックだ。よろしく頼む」

「あたしはテイラー=クランドだよ。そのままテイラーって呼んでくれれば」

「それでお二人はカップルか何かかい?」

「ケホッケホッ。いや、ちがうって!ほら、テイラーも何か言えよ!」

 俺は咽ながらも慌ててテイラーの方へと顔を向ける。

 しかし、テイラーはなぜか顔を真っ赤にして俯いていた。

「カ、カップル……」

 テイラーは何やら自分の世界に入ってしまっているようで俺の声は届いていないようだった。しかもなにやら一人でぶつぶつと呟いている。

「それでどんな形を作りたいとか、誰に渡したいとかそういうのある?」

「えーっと、その実は……」

 テイラーは初めは恥ずかしそうに口ごもっていたのだが、すぐにオームに耳を貸すようにして話した。

 オームは最初はニヤニヤしながら話を聞いていたのだが、次第に「あーはいはい」と飽きてつつあるようだった。

「あーじゃあペアで二つをくっつけるとハートになるタイプのネックレスで良いか?一応今カップルさんの間だと一番流行ってるし」

「それじゃそれでお願いします」

「ちなみに全く同じ材料でつくって最後に半分で割るってやり方と別々の材料で作るってやり方もあるけどどっちがいい?」

 テイラーとオームは本格的に作成の話に入ってきたし、まぁ他人のプレゼントをじろじろ見てるのも野暮だし俺は外にでも出て待ってるとするか。

 と考えて外へ出ようとしたとき俺を呼ぶテイラーの声が聞こえた。

「どこ行くの、アンディ?あんたも作るんだよ?」

「は?誰のを?」

「あたしのを」

 え、俺が?お前のを作るの?

「まぁいいや。お前がそれでいいっていうなら手伝うよ」

「はいはい、じゃあ二人とも作業を始めるぞ!」

 そういってオームは工房の奥からいくつか金属の塊を持ち出してきた。

「これはメモリアライトっていう特殊な金属で、魔力で加工することができるんだ」

 金属はすべて同じメモリアライトというモノらしいが一つ一つ色が違う。

オームはメモリアライトを一つ取り出して魔力を籠める。

メモリアライトは籠められた魔力に応じるように形を変えていく。

そしてやがてメモリアライトはユリの花へと姿を変えた。

「す、すげぇ……」

「ほ、ほんとだね……」

「ま、こんな感じに魔力を籠めながらイメージして形を変えるんだけど——君達魔力使えるかい?」

 オームのアクセサリーに素直に関心していると彼女はそう訊いた。

「使える?」

「分かんない」

「使える?」

「分からん」

 俺達はお互い顔を合わせたが、俺は勿論テイラーも使えるか分からないのであった。

「じゃあ二人とも補助道具渡しとくな」

そういってオームは俺達に軍手を放り投げた。

「それは既に魔力が含まれている特殊な軍手で装着すると勝手に魔力が徐々に放出される仕組みになってるから、ってことで制作のコツをレクチャーしてくぞ。っていっても作り形は頭でイメージするだけだから簡単だと思うぞ。魔力の方は指先に集中させるといいぞ。もっと言えば魔力を指先に集中させればさせるほど良いモノができるぞ」

 さてどの色のメモリアライトを使おうかと悩んでいるとテイラーは一つ黄金色のメモリアライトを持って俺の方へ来た。

「ねえ、どうせなら一緒の色にしたいんだけどいいかな?」

俺はどんな色でも問題は無いので快諾するとテイラーはすぐに作業に取り掛かり始めた。

 テイラーの魔力が徐々に籠められていく。最初は小さな光だった。しかしその蛍火のような小さな光はやがて月のような輝きを放った。

「な、なんだ、この光⁉」

「魔力を持ってたんだよ!ってやばいやばい、魔力持ってたのか!」

 オームはすぐさま盾を取り出し

なんだその慌てよう。やばいやばいってなにがやばいんだ?

「お、おい、なに慌ててんの?」

「爆発するぞ」

 その瞬間光は今までで一番の光を放つ。

 ——終わった。と思った刹那、光は急速に縮小し、やがて一切の光は何事もなかったように消え去り静寂な空間だけが残った。

「おい、爆発してないんだが?」

「あ、あれ?なんでだ今までこういうふうに光るときまって爆発してたんだけどなぁ……」

 嘘を吐いているようには見えなかったが——まぁ、結果的に何事もなかったのだから結果オーライってことで。

「あれ、皆なんでそんなに離れてるの?」

 テイラーは俺達が離れたり、盾を構えたりしていることにようやく気づいた。

「え、お前何も気づいてないの?」

「えーっと……メモリアライトが光ったこと?ごめん集中しててあのとき全然聞こえなかったんだよね」

「マジか。んでさ、どんなやつ作ったんだ?」

 テイラーの作ったアクセサリーはまるで植物の蔓のように細く螺旋状に伸び、形は向日葵の種のような形状をしていた。

「……すげぇ」

 それはアクセサリーというにはあまりに美しく、見るもの全てを魅了し息を呑まずにはいられない神の創造物のような絶妙な曲線を描いていた。

「テイラー君!こんな技術どこで磨いたんだ⁉今までも色んな人のアクセサリーを見たけどこれほどまでに綺麗なやつをウチは見たことないぞ!」

「いやいや、初めてですから磨くも何も。っていうかアンディも今からこれ作ってもらうんだからね!」

 テイラーは物凄い勢いでその技術の秘訣を教えろとばかりに迫ってくるオームを躱そうと無理矢理俺との話に話題を変えた。

「いや俺が作ってもこのレベルにはならんぞ?」

「いいの!っていうか細かいことは気にしちゃ負けだよ!」

 全くあのアクセサリーをプレゼントしてもらえるやつはホントに幸せ者だな。

 ここは一つ俺も気張ってやるか。

 俺はラプラスの目をこれまで何度か使用してこれについて少し理解した。

 まずこの目で見る未来の形というのはラプラスの目で見える結果の一つであってそれが全てでは無い。ラプラスの目で見る未来は二つの要素の組み合わせである。

一つが全てを認識する能力。この能力で俺は一時的に世界の全てを把握できる。いかに物体が早く動こうと俺は世界の裏側からそれを観測することで全てを俯瞰的に把握することができる。

そしてもう一つが解析する能力。これがあることで把握した対象の状態、運動などの全てを解析し、未来を見ることを可能とした。

ならば今回、この解析の能力だけを使えば、物体の性質、状態の変化を見ながらやったほうができるんじゃないのか?

——《叛逆の絶対権=全知の悪魔・完全分析〈ジ・アナライザー〉》

 完全分析で俺が最初に目を向けたのはテイラーのアクセサリーだった。

 テイラーのアクセサリーには目を見張るものがあった。

アクセサリーを仮に四角形で囲うとする。その時、四角形の縦横の比率は一対一・六一八になっている。そして、その箱の中で作れる最大の正方形をその箱から抜き出したとき、そこでできる四角形もまた縦横の比率は一対一・六一八。これが何度も何度も終わりが見えなくなるところまで続いているのである。

テイラーのアクセサリーの解析を一通り終えた所で俺は軍手を嵌めた。

その手でメモリアライトを持ち上げると思っていたより柔らかい。おそらく魔力が軍手から放出され続けているからだろう。

俺はテイラーの作ったアクセサリーをイメージしながら解析で得た情報を落とし込み、よりテイラーのアクセサリーへと近づけていく。

「ふぅ……」

なんとか完成し、一先ず急激に疲労を感じたからか溜息が漏れてしまった。

実際、テイラーのアクセサリーほどとは行かなかったが、それでも最大限できることはやりきったので悔いもない。まさに刀ではないが渾身の一振りと言ったところだろう。

「うん、アンドリューも凄いうまいな!軍手は勿論、魔力持ちの人でもここまでうまくできる人はなかなかいないぞ!」

 よし、第一段階としては上々のようだな。

さて、では本命の方のお目鏡に叶うだろうか。

「テイラーはどうだ?こんな感じで」

「最高だと思うよ!凄い綺麗!それにどことなくアンディっぽさが出ていてあたしは好き」

「俺っぽさ?」

 そんなところあっただろうか。形はテイラーの作ったものをイメージしたものだし……

「ほら、細部まで忠実に加工してるでしょ。アンディの真面目さって言うのが伝わってくるよ」

 自分のことはよく分っているつもりだったが、やはりテイラーには敵わんな。

「へぇ、テイラー君はよ~く彼のこと見てるんだなぁ」

「そ、そんなことはないって!ただ普段から共に過ごすことが多いから気づいたってだけだよ!」

「ふぅん。じゃ、そういうことにしとくー」

 オームは揶揄うように言うとテイラーは慌てるようにブンブンと手を振って否定した。

「ほ、ほらもうそろそろ約束の時間だよ!」

 確かにルネの言っていた約束の時間は迫っていた。

「あれ、この後なんかあるのか?」

「はい、この後友人が食事場所に連れてってくれるみたいなんです」

「へぇ、そりゃ遅刻できないな」

 オームは他愛もない話をしながらも手を進め、アクセサリーを小包に詰めようとした。

「あ、ちょっと待って」

 すると横からテイラーは近寄ってオームを止める。

「ねぇアンディ、今日ってなんの日か知ってる?」

 急にテイラーはそんなことを訊いてきたが、なんかあったか?

 特別なことは何も無かった気がするのだが俺はなんとか思い出そうとする。

「正解は君の誕生日だよ。ほら今日でアンディは十六でしょ?」

 ああそうか。今日は俺の誕生日だったのか。毎年基本的に誰かに祝われるようなことって無いし、そもそも祝ってくれるような友達もいないから、最終的に母さんに簡単に祝福されるだけでほとんど印象に無いんだよな。

「それじゃ、ちょっと失礼」

 そう言ってテイラーは俺の首へと腕を伸ばす。

(うおっ⁉何、何⁉)

 テイラーの顔が俺の顔にグッと近づく。

 俺は慌ててそこから少し目を逸らし、次に胸元へと視線を移すとそこにはついさっきテイラーが作ったネックレスが俺の首元に掛けられていた。

「おま、これって、このネックレスって誰か他の好きな人とかにあげる予定のやつじゃないのか?」

 どうして、どうしてと理解が追いついていない中で、更に緊張感や嬉しさと共に、他に何か得も言われぬ安心感があった。

「え⁉あ、いや、間違ってないけど、間違ってるっていうか……そうじゃなくて!これはアンディへのプレゼントにと思って作ったんだよ!ほら、今度はあたしにこれ付けてよ」

 そう言ってテイラーは俺にネックレスは渡す。

と、とりあえず落ち着け、落ち着くんだ。そうしたら後はテイラーの首に掛けてあげるだけだ。なにをそんなに緊張しているんだ。

俺は震える手でゆっくりとテイラーのその細く白い首元へと掛ける。

「こんな物を貰えるとは思ってもみなかった。嬉しいよ」

 自分に掛けられたネックレスを見てそう言う。

 今まで村では同年代の人達と関わるより一人でいることが多かった。

 それは勿論俺が一人の方が好きだと言うこともあるが、それ以上にプレイヤーのことであいつらを関わらせたくはないと思っていたからだ。

 だから俺は普段では極力他人と距離を取ったりしていたのにも関わらず、テイラーは俺の為にとプレゼントを選んでくれたのだ。

そこには色んな感情が込み上げてきていた。

「あれアンディ、顔赤くない?」

「気のせいだろ」

 俺は直ぐに顔を逸らすとそれを見ていたオームは僅かに笑みを浮かべるとオームは

「それにしてもNPCでもこんなに面白い子がいるんだなぁ……」

 俺とテイラーは一瞬背筋が凍えるような心地がした。

「ん?ああごめんごめん、独り言だから気にしないでくれ。はい、これアクセサリーな。それじゃ、またなにかあれば立ち寄ってくれ」

「ああ、また機会があれば立ち寄らせてもらうよ」

「機会が無くてもまた立ち寄ります!」

 よかった。気づいていないようだな。

 俺は少し安堵をしつつ、オームに一礼し、外への扉を開けた。

 オームは俺達を面白いNPCと言っていたが、俺達からしてもああいう人間が心底面白いと思った。こんなプレイヤーがいるのなら——

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