第58話反抗したくなる虫
本庁の建物内部にある警視総監室。
このやたらと
越智警務部長。苦手なんだよね。
「さて、香絵はなぜ今日ここに呼ばれたか分かっているな」
女の子を立たせたままで、フッカフカのソファーに座った越智だぬきがあたしに
まあ、上司みたいなもんだからね。
当然なんだけど。
「はい。
先月の渋谷区の通り魔の1件でしょうか」
事前に確認しといてよかったぁ。
危うく「心当たりはありません」って言っちゃうところだよ。
「あの件は、非公式とはいえ警察官としての心がけの出来た上出来の1件だ」
おおおっ!
珍しく越智だぬ……警務部長があたし達を褒めてくれてる。
「しかし」
……あ、このパターンね。
「女子高校生の大立ち回りは世間の目を引き過ぎだ。自分達の立場をわきまえろ。
渋谷署も、断りもなく警視総監賞などとのたまわりおって。
不要な注目は引かないに限る。
来週中に警視総監賞の受賞告知が届くから、『身に余る為辞退します』と申し出ろ」
え~。
まぁ元々受ける気もなかった賞だけど、なんか命令されると反抗したくなる虫がうずうずうず。
あ。なんか、視線が痛いんだけど。
ちらりと見上げたリカコさんが『
〈おじいさま〉は完全に
んー。
あ。そうだー。
「じゃあ、こういうのはどうでしょう」
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「お帰りぃ。
思ったより元気そうだね」
あたしに気が付いたジュニアがぶんぶんと両手を振ってお出迎えしてくれた。
あ。イチが戻って来てる。
地下の食堂で時間を持て余していたらしい男子3人は、あたしがあんまりヘコんでいなかったことに不思議顔。
「リカコは?」
空いていたカイリの隣に座ると、カイリがあたしに視線を向けてくる。
「鑑識に寄ってから来るって。
葵ちゃんとお話があったみたいだよ」
あたしの回答にイチがビクッと反応して、ついついみんなで笑いをこらえちゃう。
「ふふふーん。
葵ちゃんのとこね」
ジュニアはこらえる気はないみたいだけど。
「カエはお説教じゃなかったの?
もっとヘコんで帰ってくると思ってた」
「にひひ。
ここじゃちょっと話せないから、後で教えてあげるね」
さすがに庁内の食堂で、おおっぴらに総監や警務部長の
ジュニアに笑いかけたあたしに、LINEが着信を知らせる。
「リカコさんだ。
地下の駐車場で落ち合おうって」
「じゃあ、正面に回るように言って。
真影さん車を上に出してくれてるんだ」
「ん」
ジュニアに返事をしてLINEを返信。
立ち上がるみんなと一緒に、あたしも食堂を後にした。
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