第12話空気読めないっていうか、読まないっていうか
あの後、深雪の話をしっかりと聞いて家まで送って行った。
せりかさんとも確認したけど、やっぱり渋谷の交差点の一件が原因でのPTSDじゃ無いかって事で、深雪と深雪のお母さんには話をして、1度病院で診察する事を約束してくれた。
で、いつもより1時間遅れて定例会に参加。
みんなにはLINEで遅れる事は連絡済み。
まぁ、カイリから話はいってると思うけど。
「負傷の件。リカコから聞いた」
寮のリビングに入るなり、カイリの怖い顔がお出迎え。
「何で土曜日に撤退して来た時点で報告しないんだ」
座る様に促されて、何となく決まっているいつもの席に着く。
「ごめんなさい。
でも、あたしが黙っててってお願いしたの。
ジュニアもリカコさんも悪くないからね」
リカコさんがなんとも申し訳なさそうに見つめてくれる中、カイリとイチにはしっかりと目を合わせて伝える。
「終わった?」
まっったく軽い感じてジュニアが会話に入ってきた。
空気読めないってうか、読まないっていうのはこういうんだろうなぁ。と思いつつ、ちょっと羨ましい。
ちょっとね。
「まだだ」
カイリがあたしに視線を送ってくる。
「友達。大丈夫だったか?」
っ!
カイリって、何だかんだ気配りが優しい。
「……うん。
ちゃんと、受診するって」
「じゃ、改めて。
一昨日の報告はだいたい済みね。
ちょっと気になったのは、2年前に会っていたっていう銀龍会の男と、〈餓狼〉って言うサングラスの男」
ジュニアは、座るパソコンデスクのキーワードを叩く。
「2年前、暴力団絡み、イチ×カエで出ていた現場は2件だけだった。
拳銃の密売絡みの白鳳(はくおう)会。
麻薬の密売絡みの金剛(こんごう)会。
どっちもこれと言う問題なく報告書が上がってる。
記憶ある?」
イチと顔を見合わせるけど、その顔を見るに、記憶にないのは明白で。
「俺のことはうろ覚えだったけど、ニュースで見たカエの顔には見覚えがあったんだろう?」
「そか。じゃああたしメインだね。
覚えてないけど」
「ま。僕だって2年も前の現場なんて記憶にないけどね」
最初から期待はしていなかったんだろうね。ジュニアはあっさりと言い放つとリカコさんに向き直る。
「組対5課は、いつ頃動く予定?」
「明朝には家宅捜索よ。
証拠はあるし、とりあえず形だけ」
証拠の集め方に問題あるけどね。
「餓狼って男……。ジュニアの抑えた映像見たけど、イヤな感じだったな」
イチが思い出す様に言葉を紡ぐ。
「うん。
あたしも、なんか引っかかる」
一昨日の現場。見つかった時の視線を思い出すだけで、寒くなる。
「色々調べたけど、裏ではそこそこの有名人みたいだよ。
元々は暴力団の構成員だったみたい。
武力派が高じちゃっていろんなところで用心棒の挙句、今に至る」
「随分な略歴だな」
カイリの顔も冴えない。
「最後に、鑑識からの報告。
不動産屋は暴力団絡みの取り引きって事は知らなかったみたい。
直接的な関わりも確認できなかった。
現場は弾も
壁を擦った銃痕もヤスリがかけられてて判別不可能。徹底的ね。
明朝の家宅捜索でほぼ片がつくだろうから、それまでは各自気を付けて行動してね。
特にカエちゃん、イチ、ジュニア」
リカコさんの声にも心配が溢れて元気がない。
今回は顔も割れてるしね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます