甕隠

右左上左右右

(SSG)

この地では、昔から子供の神隠しが多かった。


再開発と共に集合住宅と灯りが増えたが、それでも年に数人の子供が行方不明になる。


山寺は継ぐ人間も居らず、三十年程過ぎた或年、寺の本堂が崩れた。

危険なのでと自治体で取り壊しが決定し、着手して直ぐに妙な物が有ると担当者が呼び出された。

床下に無数に並ぶ其れは甕だった。

幾つかは割れていて、恐らく寺が出来た頃と同じ位の年月は経っているのだろう。

新しい物でも30年は前だろう其れは紙で封をして有り、人の名と二つの日付が書いて有った。

曰く、『昭和十一年六月三日 発山観子 昭和十一年十月十六日』……等。


やがて古い書き付けが出てきた。


中には神隠しで消えた子の名前と日付、発見された日付、状態があったが、どれも『軟寒天状』とある。

そして、死体を見せられず甕に入れ床下に納めたと。


だが、割れた甕から続く真新しい小さな足跡は、一体何なのだろうか?

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