第42話  グループ決め


「新入生レクリエーション?」




中央委員会があった次の日、望月先生はパイプ椅子の上でこう言った。




「はい!

来週の月曜日から!!


新入生が早く学校生活に馴染めるようにと、毎年、生徒会の方々が企画してくださる宿泊型のレクリエーションです!




その年、その生徒会役員の雰囲気によって、全く違ったレクリエーションになるんです!

去年は、体育会系のレクリエーションだったらしいです!

先生はまだ、経験したことはありませんが、随分楽しいと、先輩の先生から聞きました!!


ですから、その楽しい新入生レクリエーションを全力で楽しむために!


だいたい、男女3人、計6人のグループを作ってください!!!」



グループを自由に作ってください。


うわ。



俺は、昔から思う。

自由に、好きなように.............。この言葉が嫌いだ。





そりゃ、自分が好きなように羽を伸ばせるって言うのは良いことだと思う。

一定の考えに凝り固まった作品より、一風変わったものの方が、人の目に留まりやすい。




ただ、この世の中で、自由にして良いと言われ、自由に出来る者は勝ち組の上位者だけ、ほんの一握りだ。





それ以外の負け組には、自由を与えられても、うまく使い分ける技術も知識も無い。

つまり、負け組に自由を与えられても、それこそが、縛りであり、自由では無くなってしまうのだ。

だから、俺は、自由に、が嫌いだ。



と、まあ、かっこ良く言ってみるが、実際、ただの根暗がすることである。


グループを好きに組め、この事で、俺がすることは、余り物に徹するという事だけである。




息を潜め、ただひたすらに、グループが出来上がっていくのを待つだけだ。

自分から、グループを創りに行くなんて、馬鹿なことはしない。

誰かが、自分を見つけてくれるなんて、ふんぞり返っているわけでもない。





ただ、何もせず、気配を消す。


最後に、

「まだ、グループが決まっていない人は?」

と聞かれれば、手を上げ、俺のような残り物同士の、残飯グループが完成するのだ。





はぁ。


「俺と一緒のグループにならねー?」

「私、○○くんと一緒がいいな。」

こんなこと、よく言えるものだ。

「嫌だ。」と、否定される可能性は考えていないのだろうか。




俺だったら、絶対無理だ。

きっと、他人に拒否された時点で、塞ぎ混み、二度と立ち直れなくなると思う。

そして、自分がなぜあんなに過信をしていたのか、羞恥にかられ、一生、その光景がフラッシュバックして、後悔し続ける。




まぁ、自分に自信のある奴なら、何の気なしに言えてしまうのだろう。




皆、やはり、思い思い、グループが出来上がる。

もう少しで、残飯処理の時間だ。




まあ、新入生レクリエーションに参加する予定は無いのだから、どのグループでも問題は無い。



そう思いながら、俺は、時が経つのを待つ。




ツンツン。

誰かが、俺の肩を叩いた。

?

もうすぐ、腐敗する俺に何の用だ。




「あ、メガネくん、ひっかかったー。」

振り向いた俺に、彼女はこう言ったのだった。



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