おまけ 伊世早美優の秘密

鳩谷正也と別れた後。



「はぁ~。

ついに、ついに、一つ目の目標を達成しました。

頑張りました!まだまだ、道のりは険しいですが、がんばります!」


私は、自室のベッドに転がった。




「お姉ちゃん。うるさい。」




「雪ちゃん!帰っていたんですね!」

妹の雪が、顔を出した。




「聞いてください!

今日、今日、ねねしま頑張ったんですよ!」





ねねしま。


そう、私には、秘密がある。

家、主に、妹の雪と2人だけの時、一人称が『ねねしま』になる。

ねねしま、とは、お姉ちゃんを意味する言葉で、雪が生まれ、いつしか、自分の中でこの呼び方が定着していた。



さすがに、人前では、わたくしと名乗るが、世間一般が知る伊世早美優は、ただの仮面を被った架空の人物。



いつも、冷静で、落ち着いていて、美しい、品のある人と言われるが、


実際のところ、

いつも、緊張で心臓バクバク、美しいものより、可愛いものの方が好きだし、姉妹だけになれば、騒がしいと妹によく怒られる。






「ねねしま。」

口に出して言ってみる。

響きも柔らかく、口の動きも可愛い。



自分の好きなことは、表に出さなくても、大切にしたいと思う。





「雪ちゃん!

ねねしま、ついに、鳩谷さんに抱き締めてもらったんです。」



鳩谷正也。

彼は、私の父専属の使用人だ。


高卒で働き始めたとは思えないくらいに、頭が良く、たまに、私も勉強を教えていただいている。




見た目も、若く、同年代と言っても通じるほどだ。







「ふーん。」



「むー。

もっと、リアクションしてくれないんですか?」





「よかった。

お姉ちゃんの、鳩谷さんとやりたい100の事。

ようやく、一つ目達成した。」


私が言うと、妹は、感情をあまり表情に出さず、ほぼ棒読みで、返答してきた。



そう。

私には、まだまだ秘密が沢山ある。




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