第28話 王様ゲーム③

「では、晴れて、使用人さんをバックハグするのは.......!?」



デレレレレー、デン!!



山口一は、こんな効果音が聞こえてきそうな間を充分に取ってから、23番に挙手を促す。



「.......。わ、私です。」


また、俺の隣で、小さく声がした。


見ると、隣の、伊世早美優が、くじの札で、顔を隠しながら、言った。



「私が、23番です。」



か、可愛い。この、震える指、恥ずかしいと訴えかける目!!


コホン。

いけない。目を輝かせるところだった。




「では!!

長らく、お待たせしましたが、やっと、選手が出揃いました!!



神の人選に、狂いは無かったようです!!」





「見てください!この、2トップ女子たちの顔ぶれ!!」


「やべー。」

「ハイスペックだぜ。」

「いいなー。」

「やっぱ俺も、17番当たりたかった!!」



伊世早美優が手を挙げたところで、会場はさらに騒がしくなる。


おいおい。

人選に狂いが無いとか、神は、俺を見捨てたのか?



でも、まあいい。

これから、俺は、2人の妹たちに癒されるのだから。

ちょっと、人前で、晒し者にさせられるところは、嫌だが.......。





うん。

楽しみだ。

顔には出さないが、心はウハウハである。









脳裏で、何度もシュミレーション再生していると、斜め右に座っている、鳴神美琴と目があった。




右手で右側の首を触わっている。

周囲には、首筋が痒くて掻いたようにしか見えない、そんな自然な動作だった。



だが、俺には見えた。

首を触ったまま、小指だけをを突き立てた。


ほんの一瞬だけ。

彼女の髪の間から、一瞬だけ延びる小指。



そして、腕を元に戻すと、彼女の口は、動いた。口パクで、こう言ったのが分かった。

『バカ。死んできて。』





無理、無理、無視、無視。




王様ゲームで指名された、井勢谷桜と伊世早美優は、恥ずかしがりながらも、皆の円の中央へ向かっていた。



俺も、そうするつもりだった。





ブー、ブー。


俺のズボンが震えた。


これで、俺は、全てを悟る。





やはり、神は、俺に背くのだと.......。





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