第14話 高校生初日が終了

「ただいま。」

俺は、帰ってくるなり、そう呟いた。

もちろん、返答は、期待していない。



「だー。疲れたー。」

手洗いもそこそこに、俺はベッドに倒れこむ。

マジで、今日は、色々あった。



早朝、父親に呼び出された。


「お前のことだ。大丈夫だろうと思ったが、一応、渡しておく。」


何かと思ったが、渡されたのは、俺のクラスの名簿。






名簿を見て、唖然とした。

なぜ、目の前にいる俺の父親は、こんなにも大事なものを、直前で渡すんだ?と。

少し、睨む。



「...、すまん。怒るか?」

「何が?ぜんぜん。怒ってないけど?」



「うほー。目が笑ってない。...ごめんちゃい。」

「男が、可愛く謝っても、効果無い。むしろ、逆効果。」

「はい。すいません。」

父親は、俺より体がでかいくせに、シュンと縮こまった。






プルル。


そして、絶妙なタイミングで父の携帯が鳴った。


「はい。あ、ご無沙汰しております。

はい。はい。あ、かしこまりました。はい。」


急に、男前になる父の背中を見て、さすがだなと感じた。

そして、猫を被るのは、きっと父に似たんだなと思った。



よ、ろ、し、く。口パクで、そう言い残し、裏門に止めてあった高級車に乗り込んだ。


あの、糞親父。逃げたな。






そうこうしているうちに、鳴神美琴にも会うし。

あいつもあいつで、分厚い外面を何枚も塗り固めてるな。

さすが。類は友を呼ぶと言うか...なんというか。




午後からの、モデルの仕事も大変だった。

変に目立たないよう、上手すぎず、下手すぎずを極めるのは、全神経を集中させないと、どっちかに偏るからな。


俺の場合、一般の、普通の雑誌モデルの中に埋もれていくことが目標だから。


はあ。

先は長い。




そーいえば、モデルの仕事が終わって、帰ろうとしたとき、井勢谷桜に呼び止められた。


「いとせくん。明日、予定空いていますか?」

撮影終わりなのに、彼女はまだ余力がありそうだ。


「あ、ごめん。この土日は予定があるんだ。」

こう、返事をしたら、そうですか...とかなりしょげていた。


何だったんだろう。



今度、会ったときにでも、聞いてみよう。

『早く、モデルを引退出来る秘訣』とかかも知れないからな。





取り敢えず、明日から土日だ。

昼まではフリーだ。



午後からは、あいつの家か。

堅苦しくて、やなんだよな。



まあ、休めるときに、ゆっくり休もう。




そう思って、俺は深い眠りについた。

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