第94話 義信の通過を認める
「ヒロユキ殿、義信様の降伏を許して貰えぬか。」
飯富虎昌が武田義信以下三百の兵を岡崎郊外に待機させたまま、使者として訪れていた。
三万を越える軍勢で意気揚々と攻めていた男が数百の兵となり、降伏してきた姿は情けなかった。
「虎昌殿、通過は許す、さっさと帰国したらいい。」
俺は降伏を受け入れないが通過を認め、帰国させる事にした。
「ヒロユキ殿、信玄様に助命を願えませんか?」
虎昌はヒロユキに頭を下げ、頼み込むが・・・
「攻めて来ておいてそれは無視が良すぎるだろ?」
「それは・・・ごもっともですが、どうか、其処を曲げてお願い致す。」
「断る!まがいなりにも味方であったはずの俺達に攻めて来るような奴の助命などするか!
そのまま首を取ってもいいのだぞ!」
虎昌は肩を落として義信の元に戻っていく。
そして、トボトボと駿河に向かい進み出した。
「ヒロユキ良かったのか?」
「流石に味方に攻めて来るような奴を弁護することなんて出来ないよ。
さて、次は信玄の出方だな。
元忠、安祥城は任せる、取り敢えず城の修復をしてくれ。
守綱は岡崎の守備をそのまま、安祥城の防衛にも協力してくれ。
まあ、織田が来るとは思えないが・・・」
俺は鳥居元忠と渡辺守綱に守りを任せる。
「残りは吉田に向かう、どう出るかわからんが、対応できるようにしておこう。」
俺達は吉田に主力を向ける。
信玄との一戦も覚悟の上だ。
吉田に来ると住人達に加え、修験者達が集まっておりその数二万を越えていた。
「なにこれ?」
俺は戸惑う。
「ヒロユキ様、我等も戦います!どうか、降伏など止めてください!」
「武田に攻められたのでしょう?、我等も戦いますので身を差し出すような真似はお止めください!」
どうやら、情報が錯綜しており、俺が武田に降伏して処罰されるという話になっているようだった。
「大丈夫だ、降伏はしない。
確かに、信玄の出方次第では戦になるかも知れない、だが、負ける事は無いと皆に誓おう!
みんなは安心して仕事に励んでくれ。」
俺は集まっている民を一度解散させる。
「・・・マサムネ、どうしよう、武田と戦に突き進みそうだよ。」
「覚悟を決めるか?俺はどっちでもいいぞ?」
「まあ、信玄の出方かな?嫡男の義信とやり合ったからね、さて、どうなるかな?」
俺は信玄率いる、武田家との戦争も視野に入れていた。
その為、俺は馬場信春に事情を説明して、吉田からの退去を薦める。
「信春殿、このままだと我等は武田と戦になるかも知れません、今のうちに領地に戻られますか?」
「何を言う、そもそもヒロユキが義信様と戦になったのはワシをかくまったからであろう。
その恩を忘れて逃げる訳にはいかん、戦になればヒロユキの味方につこう。」
「宜しいのですか?信玄公と戦をすれば戻れませんよ。」
「致し方あるまい、ただ信玄様は愚かでないはず、戦にならんと信じておるよ。」
馬場信春は信玄を信じて、また、俺への恩から吉田に残る事を選んでいた。
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