第91話 義信とヒロユキ
俺の元に武田義信からの使者として甘利信忠がくる。
「信春を差し出せと?」
「そうだ、そして、お前が連れて来るんだ。」
俺は義信からの書状を投げ捨て。
「ふーん、それを俺が聞くとでも?」
「義信様の御命令に背く気か!」
「何故、命令を聞かないといけない。」
「貴様!義信様に逆らうということは武田家に逆らうということだぞ!」
「へー、いつから義信が武田の当主になったのかな?」
「先日、信玄様より譲られたではないか!」
「撤回しただろ?何を当主面している。」
「この陪臣風情が!!後で後悔しても知らんぞ!」
信忠は捨て台詞を吐いて出ていった。
「さて、義信との戦が決まった。
マサムネ、戦の準備を。野戦で片付けるぞ。」
「おう!」
義信が岡崎に着くのに合わせて、俺達も布陣する。
「マサムネ、先陣を景久に任せて良かったのか?」
マサムネの指名で先陣は前原景久となっていた。
「俺の弟子だからな、そろそろ武名を世間に広めるべきだ。
なに、あいつなら出来るさ。」
「そうか?景久はまだ子供じゃないか?」
「そう言ってるのはお前だけだ、既にあいつの武勇は一人前以上だし、それに景久の部隊は特別だからな、義信の奴はビビるぞ。」
「何を仕込んでいる?」
「見てのお楽しみだ。」
マサムネに焦らされるが、戦が開戦となる。
義信の軍の先陣は小山田信茂がつとめている。
こちらも景久が小山田隊に突っ込んでいく。
良く見ると景久の部隊が持っている武器は槍では無く、身の丈を越えるような大剣を持っている。
そして、大剣を凪払うと人が飛ばされていく。
「マサムネ、あれは?」
「力自慢を集めた部隊だ、ちょっと、漫画の大剣の話をしたらみんなが乗り気になってな。」
「なってなじゃないよ、戦えるの?」
「それは問題ない、ちゃんと戦える力は持ってる。」
「でも、あんな大剣を振るうと馬が潰れるだろ?」
「だから、熊に乗っている。」
マサムネの言うとおり、景久の部隊は熊にまたがり、大剣を振るい敵陣を引き裂く、そして、乗られている熊も良く見ると鎧を装備しており、手に持った斧で兵士を蹴散らしている。
「マサムネなにあれ?熊が斧振るってる。」
「景久が仕込んだからな、それなりの武術が出来るぞ。」
「はい?」
「凄いだろ?」
俺達がのんびり話している間も景久は小山田の部隊を倒していっている。
「業盛、景久の後に続け!」
マサムネの指揮に長野業盛が小山田の隊に突っ込み、壊滅的ダメージを与える。
そこに三枝昌貞が小山田の援護に入ったが、
景久の勢いが止まることがない。
「さて、俺も行くか。」
マサムネは遅れながらも突撃しようとしている。
「なあ、なんで今回お前が先陣をしなかったんだ?」
「他の奴等も鍛えないとな、それに俺ばかり武勇伝がたまるのも良くないしな。」
マサムネは爽やかな笑顔で笑いながら、突撃していった。
義信side
「なんだ、あの軍は・・・」
景久の突撃の勢いに驚いていた。
義信にとって警戒すべきはマサムネだけだったのだが、今回先陣をつとめているのはまだ子供の景久だった。
「あり得ない・・・なんだあれは?」
次に目に入るのは鎧を着た熊の暴れぶりだ。
突き出した槍をかわしたり、斧で捌いたりしている姿はまさに猛将であった。
小山田隊はすぐに崩壊、三枝隊が援護に回るが、他の部隊の動きが悪い、熊に面と向かって突っ込む事が出来ないみたいだ。
「誰か奴等を止めろ!」
義信が周囲に命令を出すが、誰も動かない。
「くそっ!なんで誰も動かない!たかが陪臣の兵ではないか!」
義信の兵は数だけは多かったが既に士気は低下していた。
そして、織田と戦う為に集まっていたのに同じ武田のヒロユキを攻める事に違和感があり、戦闘が始まっても動かない将が多くいた。
その為、義信の機嫌が更に悪くなる。
「何故動かんのだ!」
義信の軍が景久、業盛にやられ数を減らしていく。
「防げ!防ぐのだ!」
義信が叫ぶも、士気の下がっている兵は動かない。
「義信様!後方から敵が!」
伝令が走ってくる。
「敵だと、前にいる、敵はヒロユキだ!」
「違います、織田です!織田が攻めて来ました!」
「なっ!」
義信は織田とヒロユキに挟撃される形となり、動かなかった諸将は足早に撤退、ヒロユキに降る。
ヒロユキに降る事が出来ない義信と義信の為に身体を張る、三枝昌貞、飯富虎昌が必死に防ぐが既に兵の数が五千まで減っていた・・・
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