56話 配信者の日常
【ぶるんくん:悲鳴代です:¥10,000】
【回族王:すこすこの実:¥1,000】
【♰漆黒の契約者♰ ☆卍☆アルティメット★スターゲイザー☆卍☆:¥200】
【うっつー人:悲鳴助かる:¥5,000】
【ユウリング:その悲鳴で飯が三度食える:¥800】
【ジャスティス後藤:我の金銭を受け取るがいい:¥900】
【種まきお兄さん:汚ねぇ声だな! 可愛い悲鳴だね。幻想曲。¥50,000】
【自滅の刃:頑張ってください!:¥1,000】
【ニッタイなダイスケ:ウッ!:¥1,100】
【坂元両馬:日本の夜明けは近いぜよ:¥10,000】
【暇を持て余したおじさん:\50,000】
この動画サイトには『ウルトラチャット』なるものが存在している。ウルトラチャットは生放送中に好きな文章をコメントして投げ銭をする機能だ。
ウルトラチャットをする金額が高いとコメント欄で目立つ仕組みとなっており、チャンネル主にコメントを呼んで貰いやすくなるのだ。熱烈なファンほどウルトラチャットを利用して目立ちに行く。すると、徐々にチャンネル主に自分の名前を覚えてもらえるのだ。
ファンにとって、自分の名前を呼んでくれるのは死ぬほど嬉しいことだろう。
「ウルトラチャットありがとうございます!」
今日はホラーゲームの生放送だった。終始取れ高の嵐。ウルトラチャットも上々。
「今日はこのへんで終わります!ありがとうございました!さようなら~」
配信終了ボタンを押して、生放送は終了した。それとほぼ同時に栞から着信だ。
『火恋、Vtuberとしてのお仕事は順調なようだね』
「お陰様でね」
『すでにチャンネル登録者数は20万人を突破とはね。さすがにここまで伸びるとは思わなかったなぁ』
「私こそ、こんなことになるなんて思いもよらなかったわよ」
『今後はどうするつもりなの?』
「何も決めてないわよ。気軽にやるだけ」
『もっと上を目指すつもりはないの?』
「ないわよ。まったくない。趣味のひとつに過ぎないわよ」
火恋は今日のチャンネル登録者数と視聴者数の推移を確認する。動画や配信の視聴者は内容によって大きく異なる。様々なベクトルの動画や、配信をして何が面白いのか、どの時間帯にやった方がいいのか、分析をして改善することでチャンネル登録者数が増えていく。
この努力が報われていく作業が、とても楽しいのだ。
『お兄様の為に大変ね』
「は?」
『そろそろ敬愛なるお兄様が帰って来るんじゃない?』
「敬愛なるはいらない! けど、もうそんな時間?」
パソコンの画面上に映る時刻を見ると17時を過ぎていた。
『配信中なんかに帰ってきたら面白いことになるわね』
「想像しただけで嫌な気分よ」
『ありえない話じゃないでしょ。十分気を付けないさいよ』
「言われなくても分かってるわよ。そろそろ通話切るわよ」
『はいはい。お兄様によろしくね』
「何をよろしくすればいいのよ」
火恋は立ち上がって身体を伸ばす。そして、特に意味もなくベッドに寝転んだ。
Vtuberを始めてから時間感覚がおかしくなってきた。元から狂っていたと言われれば否定は出来ないが。
20時を過ぎてからがVtuberのゴールデンタイム。そこから2~3時間ライブ配信をしていると、終わる頃には日付が超えようとしている。そのまま寝ようとするが、ライブ配信の後は配信中に分泌されたアドレナリンが邪魔をしてなかなか眠れない。寝付けないなら仕方が無いと、サムネイル作りなどをしてしまい、結局寝るのは朝方になってしまうのだ。
枕元に置いてあったスマホでツイッターを開く。
「えごさ、えごさー」
配信終わりはツイッターで今日の感想をツイートして、就寝までエゴサに限る。
これがVtuberのリアルである。
<あとがき>
ばーちゃるにいきる
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