第76話 いざ、洞窟へ!!

 それからみんなと食事をした。これが最後になる。そう思うといたたまれなくなって、宿主に断って納屋でワッシャンたちと一緒に食べた。


 みんなあかるくしていたけれど、本当は不安でいっぱいなはず。洞窟だって、罠かもしれないし、古代竜なんてのもいないかもしれない。


 もしかしたらすべてが罠で、古代竜に焼き殺されてしまうかもしれない。


 それでも、行くしかなかった。ミミーとワッシャンを人間の国王陛下とお姫様に戻すために、ヒロユキを土の中に還してあげるために、選択肢は他になかった。


 食事を終えると、食器類を片付けて、出かける準備をした。


 そしてもう一度、納屋に集まると、ワッシャンがけわしい目つきでワープととなえた。その瞬間、重力がめちゃくちゃになり、目も開けていられなくなった。


 やがて苦痛が通り過ぎた頃目を開けると、そこはたしかに洞窟の前だった。全員無事にそろっている。


「どこか痛いところとかはないか?」


 おれがめずらしく気を利かせて言ったのだが、ワッシャンの気には触ったようだ。


「わたしの魔法で痛めることなどあるものか」


 それはさながら、国王陛下の口ぶりだった。


 洞窟に入るにあたり、ワッシャンの目からライトが役に立つ。もしものためにと先頭を歩くおれの肩に乗り、前方を照らしてくれた。洞窟はどこか湿っぽく、足場も悪かったけれど、馬に乗っていたのでは頭が引っかかってしまう。そんなわけで、ミミーとカレンも馬の背に手を預けて歩いていた。


 やがて、洞窟の最奥と見られるカーブの先からとてもあかるい光がただよってきた。


「うむ。古代竜は本当にいるらしいな」


 ワッシャンはみんながいきなり攻撃をしかけられないようにと、羽根を広げくれている。が、その羽根がおれの目に刺さる、刺さる。と、まぁそんなことは置いといてだ。


「古代竜の洞窟へようこそ」


 目の前にはおよそ二メートルはある白いコブラの口から、少し舌足らずで中性的な声が聞こえてきた。


「はぁ?」


 そうだよなぁ、いきなり古代竜には会わせてくれないわなぁ。そりゃあ、なにかしらの犠牲がなければ会わせてくれないよなぁ。


「おっさんでよければ、おれを食ってくれ」


 いきなり切り出したおれに、白コブラは爆笑した。おい、前世も含めて今が一番受けたぞ。


「やぁーだ、もう。りゅんりゅんおっさんは食べないー」


 ギャル? ギャル語? でも声は中性的。もしかしてこのコブラ――!?


「古代竜ですかっ!?」


 いきなりの敬語にまたしても白コブラ爆笑。こんなに受けるのなら、次に生まれてくる時にはコブラがいいな。


「そう、一応りゅんりゅんが古代竜だよ。って言っても、信じてくれないかなぁ?」


 りゅんりゅん――、そうか、りゅうだからりゅんりゅんかぁっ!!


「そうそう。おっさんのそういう素直なところ、りゅんりゅんは好きだなぁ。ああ、気にしないで。何千年とここにいるから、栄養不足でコブラの大きさに縮んじゃったの。きみたちが来なかったら、ミミズくらいになっちゃってたかも?」


 あっはははっとたのしく笑う古代竜。


「それで? ここまで来る経緯は、あなたたちの頭の中から聞き出したけれど、本質的になにしにきたわけ?」


 いよいよ、その時がやってきたっ!!


 つづく

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