第68話 さっそく使ってみようっ!!

 そんなわけで、さっきまで製作をしていたベンチへと戻って来る。


 あらかじめ雫型に作っておいたピアスの下にあらかじめ雑貨屋で安く仕入れておいた、プラスチック製の下敷きを用意する。隙間ができないよう、しっかり持って、少しずつレジンを枠に流し込む。最初は薄く伸ばして、太陽の光にあてる。


 この待ち時間の間に、ワイヤーを取り出して、ミミー用のティアラの製作をすることにした。


「なんだかとってもわくわくするわっ」


 ミミーはティアラよりも、レジンの方をめずらしがっているようだ。


「ねぇ? このレジンっていうのは、どのくらいでかたまるの?」

「えーと? たしか、忘れた頃にはかたまるかな?」

「なにそれぇー!?」


 そう言いながらも、たのしそうなミミー。久しぶりに見たな、ミミーのこんなたのしそうな顔。やっぱりかわいいや。


「あら? また変わったことをしているじゃない? 今度はなにかしら?」


 そこへ、買い物をすませたらしいマリンとカレンがあらわれた。すまない、カレン。きみにマリンの荷物持ちをさせてしまった。


「これはUVレジンと言って、紫外線でかたまるんだ。だが、買ったことを後悔し始めているんだよな。この天気じゃいつかたまるのかわからない」

「紫外線? そんなのでいいの?」


 そう言いながら、マリンがピアスに手をかざす。


「待った! 待った!! 紫外線だけだぞ?」

「だから、そんなの簡単よ。みんな、目を閉じて」


 えいっとばかりにマリンの手のひらから紫色の光がピアスに飛ぶ。すると、もったりしていた液体が、あっという間にかたまったじゃないかっ!!


「マリン!! 紫外線、一日何回くらい出せる?」

「こんなの余裕よ?」


 赤子の手を捻るようにとはまさにこのことだ。


 おれは、マリンの手を借りながら、染料をレジンになじませながら、初めてにしてはそこそこきれいなレジンのピアスが完成した!!


「うっわ。きれい。ねぇ、これあたしにちょうだい?」

「ああ。そのかわり、これからも紫外線を出してくれると助かる」

「そんなの、簡単よ。あら? 想像していたのよりも軽いわ。これ、たくさん作って売り物になるわね」


 さっすがマリンは守銭奴だ。はじめてのピアスは、本当はお金を出してくれたミミーにあげたかったけれど、なるほど、このデザインだったら、マリンの方が似合うな。


「どう?」


 さっそくピアスをつけてご機嫌なマリン。カレンもすぐにきれいだよと言ってあげている。


「たのしみが増えたわぁー」


 ほくほく顔のマリンをよそに、カレンは心配そうにミミーの様子を伺う。


「ミミー、無理に買わされたりしたのではないか?」


 あ、そこはあまり強く否定できないや。だが、ミミーは天使の笑顔をカレンに向ける。


「ううん。ちょっと貸してあげただけ。あとで倍にして返してくれるみたいよ?」


 うっふふっと、邪気のない笑顔を向けられるが、さすがに倍返しできるかはわからんなぁ。


「ねぇ、マローン? もし、あたしにお金を返せなかったら、結婚してくれるかな?」

「けっ!? けけけけけけけけけけ結婚っ!?」


 それはいくらなんでも無理難題だ。でも、マリンがよろこんでいる姿を見ると、案外すぐに返せるかもしれない。


「なんてね。じょうだんよ」


 ああ、完全にミミーの手のひらの上で転がされてるな、おれ。


 つづく


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