第51話 あたらしい朝

 どんな状況でも朝は来る。ゆうべはそれなりに眠れたのだと、自己暗示をかけるしかなくて、ミミーのことが心配でたまらない。


 ヒロユキの衣擦れの音で目を覚ました。目覚めにヤツの顔を見るも、一応は仲間なんだし、あいさつぐらいはしておいた。


「意外だったなぁ。栗山ちゃん、あの子のことを思って寝られないのかと思ってた」

「そんなことないさ。でも、そう言うところを見ると、ヒロユキも寝つけなかったのか?」


 こいつがミミーを心配する要素はどこにもないし、むしろ不安があるのだとすれば、魔族との戦いにビビっているといったところか。


「無理について来なくていいんだぞ? 相手は魔族だ。手加減なんてしてくれない。おれも、自分の身を守るのに精一杯だし、おまえのことまで手が回らないから」


 おれが言うと、ヒロユキは心底意外、とでも言いたそうな顔をして破顔した。


「どうした? 栗山ちゃん。突然おれ様の魅力に気づいちゃった?」

「バカを言え。おまえは前世からおれを裏切ってきたんだからな。そう簡単に好意は持てない」

「……そう、だよな。やっぱり」


 言葉をにごしたヒロユキは、ばつが悪そうにうなだれた。ちょっと言いすぎただろうか?


「これで最後になるかもしれないから、一応最終確認ってことで、聞いておいたんだ。もしも栗山ちゃんがその気ならって」

「今、このタイミングで言うことでもないだろう? それに、おまえは油断がならないからな」

「わかってるさ」


 おれたちの声で目を覚ましたジョージが伸びをする。


「おはよーっ!! 今朝は快適だね」


 いつになく目覚めのいいジョージに、おれとヒロユキが笑う。こんなのんきな朝も、これでおわりかもしれない。そう思うと、自然に笑みがこぼれてきた。


「あっははっ。なんで笑うのさ? ははっ」


 そう言うジョージも笑顔がこぼれた。全員の支度がおわった頃、ドアがノックされた。


「おはよう。準備は整ったかい?」


 カレンの顔からはやる気がみなぎっていた。


「ああ、おれたちはいつでも行けるぜ」

「宿主から差し入れがあったの。途中で食べてくれって」


 これはありがたい。さっそく弁当に手が伸びそうになったジョージを、マリンが軽くあしらった。


「まだ食べる時間じゃないわ」

「それじゃ、納屋まで行こうか?」

「おおよっ!!」


 カレンの言葉で気合が入った。みんなに、おれのあたらしい武器――、その身と引き換えにおれに武器をあたえてくれた女神様のことも言わなきゃな。あのダイヤモンドを見たら、目からウロコが落ちるぜ。


 つづく

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