油断をしちゃあいけないよ 編

第28話 襲撃!!

 宿に泊まっているから安心、と完全に油断していた。宿屋といえども、人目にさらされながら、金になるアクセサリーを売り、大金を手にしたところを、きっとだれかしらに見られていた可能性があった。そのことを忘れたわけじゃなかったけれど、油断してなかったと言ったら嘘になる。


 要は、寝込みを襲う度胸があるか否かだ。


 この宿屋には、その度胸がある者がいたってわけで、こうして今、ジョージと狭い部屋の中で、はてなき戦いを繰り広げている。


「くっそ。ミミーたちは大丈夫だろうか?」


 宿屋の中では、マリンの大技は使えないし、カレンの弓もせまい部屋ではあぶなくて使えない。ミミーには日傘があるけれど、殺傷能力はない。無限とも思える盗賊相手に、フリルのロープはまかないきれるだろうか。


 おれたちは背中をあずけあった状態でドアまで近づき、少しでもミミーたちの部屋に行こうとこころみる。


 なにしろ、売上金を持っているのはカレンとマリンだし、女性陣をねらうのが賊の常套句だと思ったからだ。


「おい、そいつらを部屋から出すなっ!!」

「金目のものはすべてうばえっ!!」


 怒号が飛び交う中で、おれはやみくもに剣に振り回されていた。なにしろ、持っているだけで敵を斬ってくれる魔剣だ。これだけでも奪われてしまったら、かなりの痛手になる。なにしろ、女神様からの借り物なんだから。きちんと返さなくちゃならない。


 あまりにもしつこい賊どもに、目くらましとしてさっきまで作っていたアクセサリーをばらまいた。


「ほらよ。好きなだけ持っていけ」


 ただし、アクセサリーにはちゃっかりナンバリングがほどこしてある。賊がどのルートを使ってこれらを売りさばくかは知らないが、少なからず三十番台からのものは盗品ということに決まっている。


 しかも、どれもあと一歩のところで完成してないんだよな。これ、素人にはわからない仕組みになってるんだ。だからほれ、好きなだけ持っていけ。


「もっとあるだろ!? 出せっ!?」

「おう? おっさんが出せるものっつたら、あとはもう下ネタしかねぇぜ? あん?」


 それだけは幅広い意味でさけなければならない。だが、そんなダジャレは賊は気にもとめない。なおも抵抗するおれたちのふところを遠慮なくあさってくる。


「よしっ、そろそろずらかるぜ」


 そうしてやっと解放されたのと同時に、女性陣の部屋にあわてて入った。


「えっ!?」


 そこには、かわいいピンクのドレス姿のミミーが、とてもかわいらしい髪飾りをつけて立っていた。


「あのっ。大丈夫、か?」

「っ!? きゃーっ!!!」


 ところが、顔を真っ赤にしたミミーに悲鳴をあげられ、おれたちはあわてて退散。どうやらこちらは襲撃されなかった模様。だが、ミミーの心の傷は深いぞ。おれ、またやらかしちまったぁ……。


 つづく

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