第24話 気前の良さと、こりない男
えっへんと胸をそらした女神様。いや、ありがたいですよ。ですが、どれだけの対価を求められるかと想像すると、寿命が縮みますぜ? だって、ふつうは対価があるもんだろう?
「マローンは引きつづき、アクセサリー作りにはげんでください。そして約束を忘れないでくださいねっ!! 指輪のサイズはあなたにおまかせいたします。まぁ、初ものならどの指でもかまいませんけどね。……こほん。では、近い将来、またお会いいたしましょう。ごきげんよう」
今回、女神様はかなり取り乱していらっしゃったなぁ。それにしてもドリー、あいつ何者だっ?
カレンが愛馬に背を向けて、ミミーの指輪に強化した守護魔法をかけている時だった。草歯がゆれる。この動きは、ヒロユキ!?
それに最初に気づいたのはミミーだった。ふいに腰を低くかまえて、昨日女神様にもらった日傘をばさっと広げる。
「なんだっ!?」
性懲りも無くおれの首を斬ろうとつめよってきていたヒロユキがたじろぐ。そこにミミーが日傘を振って、出てきたフリルでヒロユキを縛り上げてしまった。一瞬のうちにヒロユキは木に吊るされてしまったのだった。やーい、ざまーみろー!!
「そんなに何回もマローンの首を斬らないでようっ!!」
それはおれのセリフだが。ミミーに先を越されたんなら、それでもいいや。
「おい、ヒロユキ。おまえ、前世でなんのうらみがあってそうおれをねらうんだ?」
とりあえずダメ元で聞いてみた。
「っ!! だれが言うかよっ!!」
「ほう? では、言いたくなるようにしてやろう」
クールに言い放つなり、ヒロユキ目がけてカレンの弓が飛んだ。
「ひぃっ!? な、なんだよ。おっさんのくせに仲間を増やしてるんじゃねぇよっ!!」
「地獄の業火で焼いて見せましょうか?」
うっふふっと、マリンがまんざらでもなさそうな顔をして手のひらに光を集める。それはさすがにやめてやれ。自然環境にあんまりやさしくないからその魔法はやめてくれ。かわりに、ドリーに売りそこなったアンクレットを手渡す。
「あら? ありがとう。ヒロユキって言ったわね? 命拾いしたわね」
そうだ、そうだ!! おれのおかげだろ?
「そんなの、ちっともこわかねぇやいっ!!」
なのにまたヒロユキがあおるから、今度はジョージが剣を向ける。
「あまり荒っぽいことはしたくないんだけど、仲間をこきおろされたらさぁ。だれだって怒るよね?」
はっ。ここまでいっしょにいて、本気のジョージを今、はじめて見た。こいつ、敵に回したくねぇな。
「わ、わかったっ。言うからおろしてくれよ。でないとしゃべらない」
「本当だな?」
言うが早いか、おれが止まる間も無く、ジョージはヒロユキの体に巻きつくレースを切ってしまった。
「いてっ。へへん。とうへんぼくめっ。おっさんの愛人なんかに聞かせるわけねぇだろっ!!」
そう言うとまた、こりもせず、おれの首を斬った。すぐにヒールをかけて首を元にもどす。さすがになれてきたせいもあり、今度はちゃんとくっついた。
「おめぇ、いいかげんにしろよ?」
おれの怒声を聞くと、ヒロユキはびくっと体をすくめてからへぼへぼと立ち去って行ってしまった。
「ごめん、マローン。逃しちゃった」
「いいんだ、ジョージ。それより。愛人ってのは誤解だからな?」
おれは笑顔がかたまった状態の女性陣に誤解を解こうとこころみた。
ヒロユキの野郎!! よりによって、ジョージがおれの愛人だとぉ!? いいかげんにしろよっ!!
つづく
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