第17話 二つの腕輪

 せっかくミミーが泣きやんで、めでたしめでたしとなったと思ったら、今度はマリンのやつがグチをこぼし始めた。


「ミミーばっかりずるいです。あたしだって仲間だし、もっと楽な方法で勝ちたいです。そもそも魔法って、体力使うんですよねー」


 いや、盗賊をあらかた黒こげにしておいてそんな言い分ひどいや。やつらにあやまれ。だがマリンはプンと頬をふくらませてかわいいアピール。いや、もうあんた充分美人だし、強いじゃないか。それ以上をのぞむな。


「そうですか。マローン、マリンの装飾品を作りましたか?」


 女神様に問われたおれは、革袋の中から二つの腕輪を取り出した。完成かと問われれば、もう少し凝りたいところだが、おおむね完成だ。


「ジョージとマリンの分です」

「では、わたくしがこの腕輪に魔法をかけましょう」


 そう言うと、女神様はえいやっと二つの腕輪に魔法をかけた。


「魔力増幅の魔法、それに防御魔法も加えておきました」

「わぁ!! ありがとうございます」


 言うが早いか、マリンは二つの腕輪を両方とも右手にはめちまった。おいおい、一個はジョージにやってくれよ。


「あっはははっ。マリンが気に入ったのなら、彼女にあげるよ。そもそもおれは、魔法なんて使えないし、正直アクセサリーって柄でもないから」


 ここで辞めておけば色男だったのに、ジョージは最後に余計なことを言い放つ。


「アクセサリーなんて、戦場では邪魔なだけだろ?」

「もう、ジョージのバカっ!!」

「ぎやっ」


 ばしっとマリンがジョージの頬を叩く。もちろん、腕輪をしている右手でだ。で、さっそく魔法の腕輪の効力をためしたマリンはというと、不思議そうに右手を見つめていた。


「あら不思議。本当に全力でぶん殴らなくても大丈夫なのね」


 それで、ジョージはと言うと。人ならざる雄叫びをあげた後、すっかり気絶してしまった。


「せっかくですからカレン。あなたもなにか願いがありませんか?」

「ぼくは、いいです。ミミーがしあわせなら、それ以上はのぞみません」


 おお、さすがだな。好きな人のしあわせを願うか。素晴らしいな。おいジョージ、今、どんなに意識が飛んでいても、今のカレンの言葉をわすれるなよ? 絶対だぞ?


「そうですか。やさしいエルフ。あなたは、ミミーの正体に気づいていますね?」

「はい、それが真実ならば、おそらく」


 正体? そういや前もなんか話してたっけ?


「女神様、まだその話はしないでくださいっ!!」


 ミミーがまた泣きそうな表情になって、女神様はお茶目にウィンクした。


「あら、そうでしたわね。それでは最後に。マローン。あなた、ブローチを作るための石が欲しいとおっしゃっていましたね?」

「ええ、ああ、はい。ですがおれ、よく考えたら実のところ石の研磨とかできないんですよね」

「でしたらその技術の加護をジョージに託しましょう。石も、あなた方がのぞむ限り、ジョージの皮袋から無限に出てきますし、レベルアップするごとに種類も豊富になります」


 おお、すげぇ。


「マローンには金属の加護を授けましょう。これでブローチの土台になるものも作れますね」


 おおおおっ!! なんだか金のなる木みたいになってきた。さすがは女神様だぜっ!!


「ありがとうございます!!」

「では、またなにかありましたら呼び出してください。ごきげんよう」


 女神様は優雅に微笑んでワッシャンの羽根の中へと消えていった。これ、いつも不思議でたまらないんだよなぁ。


「とにかく、これでミミーは無敵になれたわけだな?」


 カレンに問われて、ミミーは不思議そうに日傘を見つめていた。本当にこの華奢な傘が武器となり、盾となるのだろうか。そうだとしたら、おれなんかよりずっとたのもしい。いや、おれが弱すぎるんだよぉー。


 つづく





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