第7話 あたらしい仲間
盗賊に囲まれたおれは、魔剣を鞘から抜いて身構えるも、まったく自由に動くことができない。無理もない。顔と体が後ろ前にくっついてるんだ。思うように動けるわけがないのだ。
ミミーはヒールの術が使えるものの、戦闘はできない。唯一の戦闘力は、ワッシャンの口からビームくらいのものだ。
それでも、なんとかミミーを守れるかどうかといったところだ。
だがそれもつかの間。ついにミミーが賊のひとりに捕まってしまった。
「キャーッ!!」
悲鳴をあげるミミー。盗賊の狙いはおれだ。おれを見世物にして、一稼ぎしようっていうんだ。だったら、ミミーじゃなく、おれだけを見ろよっ!! おれはめちゃくちゃな角度で魔剣を振り回した。
「おい、こいつめずらしい魔剣を持ってやがるぜ?」
「本当だ。魔剣共々、おれたちの手下になりやがれっ!!」
「そこまでだっ!!」
超絶ピンチな状態で、弓矢が飛んでくる。弓はまっすぐ、松の木に突き刺さった。
「なんだ!?」
一同の視線が、白馬に乗った美青年に集まる。とがった耳、白磁の肌を見ると、おそらくエルフだろう。
「おとなしくそのお嬢さんを離せば見逃してやる」
青年はめざとく盗賊のカシラへと矢じりを向けた。
「わ、わかったよう。ついでにこのおっさんもくれてやらぁ!! 撤退だぁ!!」
青年のおかげで、盗賊はバラバラと草原に逃げて行った。
ポイっと放り出されたおれは、不恰好に尻もちをついてしまった。
「マローン、大丈夫?」
「ああ、おれは。それより、あぶないところを助けていただき、ありがとうございました」
優雅な仕草で白馬から降りる青年に、時代劇の決め台詞のようなお礼の言葉を並べた。
青年は、さわやかな笑顔を浮かべながら、こっちに近づいて来る。
「いいえ。当たり前のことをしまたでです。あなた、首が後ろ前なんですか?」
青年の声は、よく通る高めのアルトだった。おれを見るなり、驚きの声を上げる。本当にミミーしか見えてなかったんだな。
「ええまぁ。話せば長くなりますが、首を斬られてしまいまして。で、ヒーラーなもんですから、あわててヒールの魔法を発動したもので、このありさまです」
「あっははっ。おっちょこちょいな人だなぁ。敬語はお互い、なしってことで。ぼくの名前はカレン。こっちは愛馬のホープ」
カレン? おれの頭の中に疑問符が浮かぶ。カレンって、女性の名前じゃありませんか!
「申し訳ございませんでした。おれまた、失礼な失敗をしちまいました」
「ああ、よくまちがえられるから、べつにかまわないさ。それより、きみは?」
「あたしはミミー。こっちはワッシャン。大賢者なのよ」
ミミーがそう言うと、カレンはハッと息を飲んだ。
「きみは、もしかすると――?」
「ダメ、言わないでっ。まだ、その時じゃないから」
うん? なんだか、おれだけ置いてきぼりな会話だけど、二人は知り合いだったのか?
「そうか、うん。そういうことなら、ぜひぼくを仲間にしてくれないかな? こう見えても、少しは役に立つんじゃないかって思ってるんだけど」
カレンの申し出に、ミミーが困ったような顔をおれに向けて来る。
「あの、おれたち魔王城討伐に向かっていて、おれ、こんな状態だし。さっきの盗賊にも狙われてるんだけど、それでもいいのかい?」
「だからこそ、きみを守りたい。いや、守らせてはくれないだろうか?」
カレンはミミーの手を取り、うやうやしくひざまずいた。
「えーと、一応、おれも一緒なんだけど、いいのかな?」
なんとなくお邪魔虫な気がして言ってみれば、カレンはさわやかな笑顔をくずさず、おれに笑いかけてくれる。うぉーっ!! なんだこの雰囲気含めたクオリティー美の高さはっ。
「もちろんだよ。マローンと言ったね。きみが魔剣を使いこなせるように、ぼくなりに協力させてもらうね」
はぁ。いろんな意味でかなわねぇ。いや、カレンとくらべるのもおこがましいんだな、これが。
つづく
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