第73話 罠狩猟とボンクラ女子高生 その4

「絶対に、ミコトのことを守ってあげる。だから、もう少し様子を探ってほしい」

「タマちゃんのお願いなら、なんでもするよ……全力で……っ」

「えっ、ちょっ、全力って」


 しまった、と思った。


 じん、と下腹部に深く甘い刺激が湧き上がる。うかつだった。

 美琴は自身とわたしに取り憑かせた三体のイヌガミを一気に放っていた。するとどうなるか。ティンダロスの呼び声が、身体中に響き渡ってくるのだった。


 抗いがたい、淫らな気持ち。下腹に桃色の衝撃が。


 使役する瞬間が分からなくても、どうやら呪術師そのものに触れていると感応してしまうらしい。わたしは自分でも驚くほど湿っぽいため息をついた。


 抱きつく美琴を見る。

 彼女は三体のイヌガミを絶賛使役中でこちらに意識は回していない。


 どうしよう、めちゃくちゃ、セックスしたい。下腹が疼いて仕方がない。


「お、おい。タマキ、大丈夫か?」

「サキ姉ちゃん……わたしダメかも……身体が切ないよぉ」

「う、む、むう。やらかしてしまったのか……」


 二人ともノーブラで上はカッターシャツだけなのだ。

 触れ合う乳房。擦れる乳首と、乳首。

 秒ごとに入道雲の如く盛り上がる性欲ボルテージ。


 これを耐えろというのは、例えるなら散々腹を減らした飼い犬が、食事を用意したご主人の気まぐれでマテをされるくらいにキツイ。


「あっ、あっ、もう、気が狂いそう。えっちしたくて、頭がっ! 沸騰するっ!」

「まったくもって、さもありなん。ならば、しかたあるまい」


 咲子はわたしの腰に手をやり、そうしてさわさわと尻を撫でた。

 跳ね上がるキモチに涙が零れた。


「ほれ、もっと尻をこちらに向けるがいい。優しく慰めてやろう」

「うう、サキ姉ちゃん本当にごめん。女同士で、こんなこと、したくないよね……」


 三体のイヌガミを全力索敵に当たらせている美琴は、脳内の画像処理に懸命でこちらへの反応が一切ない。この状況でティンダロスの呼び声を処理できるのはわれらが同胞はらからであり、一族の知識と理解があり、かつ、血の親和性が薄い咲子だけだ。


 しかし彼女を、役目とはいえ性処理を願うのは、こちらとしては心が痛む。


 朦朧とするわたしは、気力を絞って美琴のカッターシャツのボタンを外した。ぽろりと弾力に満ちた、形の良い胸が零れ出る。身をかがめ、彼女の乳首を口に吸う。


 咲子には悪いが、百合属性マシマシの美琴で、なんとか気を抑えようと思う。


「だから我慢するなと。いいからわたしを頼れ。見ろ、精神汚染寸前ではないか」

「――にゃあんっ」


 下腹部に、衝撃に近い快感が貫いた。

 咲子が、ついに、わたしのオンナノコに触れたのだった。


 彼女はじんわりとわたしの背に身を寄せてきた。

 柔らかく、触れるか触れないかくらいの感覚でわたしのソコに触れてくる。腰が砕けそうだ。もう、ガクガクする。キモチイイよぉ、キモチイイよぉ。堪らないよぉ。


「サキ姉ちゃん、サキ姉ちゃん……ああ、うう。凄い、凄い。堪忍してぇ……っ」


 涙がとめどなく溢れてくる。

 この、背徳感を伴う強烈な快楽に身悶えが止まらない。


「大丈夫だ。可愛いわが義妹よ。心置きなくわが身をこちらに任せるがいい」


 何を口走っているのかわからないわたしに、安心感の塊のような自信をもって咲子は力強く頷いてくれた。わたしは美琴の乳首を吸い、咲子に秘部を触れられていた。


 どれくらいそうしただろう、たぶん五分も経っていないはずだ。

 頭の中で、花火のような何かがパンと弾けた。わたしは絶頂を迎えていた。


 しっとりと気怠く溢れる満足感。

 ときおり痙攣するが如く、心地よさに浸るわが身体。


 脱力したわたしを、咲子はぐっと力を寄せて支えてくれた。

 ありがとうお姉ちゃん。大好き。わたしは礼を述べる。すると咲子はこちらに顔を寄せ、ついばむように頬に唇を当てた。


「わたしはお前の監督役。いわば保護者のようなもの。存分に頼りにするが良い」


 諭しつつ頭を撫でてくれた。そして、ハンカチでわたしの下腹部を拭ってくれる。


 さらに数分後、全力で索敵していた美琴がわれに返った。抱きつかれ、胸をはだけている彼女はこちらを見るや濃厚にキスをしてきた。

 わたしは彼女の乳首を指先で弄ぶ。と同時にちゅっちゅっと口を吸い合う。


 しばらくそうして気が済んだ美琴は、ひと言、周囲に人はいない、と報告した。


「ふ、ふむ。おほん、んん、おほん。と、なると、野生か……?」


 わたしの性的処理を済ませ、しかし残響のように興奮を隠せない咲子は、しどろもどろに頷く。


「パ、パックで行動するところを見るに、あるいはニホンオオカミやもしれん。あれは柴犬より少し大きい十二キロから十五キロ辺りで、体毛は赤毛だ……」


「犬さんたちは、明らかにこちらに気づいていたみたいだけど、しばらく鼻をスンスンさせてくしゃみをして、身を翻してどこかへ移動していったの……」


 様子を見ていて、突然、雌同士が盛り出したらそりゃあ怪しんで近寄らないか。


「じゃあひとまずこれで、世はなべてこともなしって判断していいのかな……」

「天に神はましまして、か。うむ、まずは警戒を一段階下げても良かろう。それで仕掛けた罠は、また三人で夕刻にでも見回っておこうではないか」


 わたしたちは、一度、拠点へと戻ることにした。

 ああ、いきなり全身がぐったりする……。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る