第28話 隠し砦の三少女 その4
「温くなってるけど、美味い!」
「うむ、普段ならなんでもない缶詰がこれほどまで美味とは」
「シロップジュースも甘酸っぱくて美味しい……っ」
三人で分け合って食べる。すぐになくなった。
しかしこれはこれで大変満足だった。
こんな状況でも腹を空かせて喉も渇く。生きているのだから当然だ。
いつか読んだ本では、
『女は嬉しくても悲しくても、怒っても恐怖を感じても、腹を減らして飯を喰う』
などと、多少侮蔑気味に書かれていた。
それなら男はどうなのさ、と小一時間問い詰めてやりたいが、まずそれは横に置いてしまおう。男より女の方が、生存に貪欲かつ生命力が強いのは明白だからだ。
なぜって、わたしたち女は、子を産むという物凄い能力が付与されている。
男は
「次はどうする。そろそろ実働に向かわねばいかんと思うが」
「はーい、被試練対象者のミコトに提案がありまっす」
「え、わたし……?」
「いや、だって、これミコトの試練だし。つまり、主人公は、アナタです!」
「タマちゃんに主人公の権利上げちゃダメ……? わたし、ついていくから……」
「ごめん、無理。失踪した母さんの血を引く以上、わたしには資格がない」
「加えるとわたしもだ、ミコト。ただこの場合は、イヌガミを使役する才がちと足りていないという理由からではあるが。なんでも住人の血の親和性が薄いらしい」
「えぇ……」
美琴は不安そうに萎れた。
少々サディスティックに思われるのを覚悟で今の気持ちを打ち明ければ、この気弱な美少女の困り切った姿を見るというのは、ある種の愉悦だった。
つまるところ可愛いのである。
色々と世話を焼いて、助けてあげたいのである。
堪らんのである。心が滾るのである。
女なのに気持ちは男子のそれに似通っているのかもしれない。ああ、おっぱい揉みたい。それはともかく、わたしは、美琴の手を取って、大丈夫と頷いた。
「じゃあさ、わたしとサキ姉ちゃんが提案するから、良いか悪いかだけ判断して」
「それって実質的な舵取りは、わたしのまま変わってないような気がするよぉ……」
「大丈夫大丈夫。最終判断はミコトだけど、そこに至るまでは三人で考えれば」
「うむ。凡人も人数が揃えば文殊の知恵であるな」
それは下校途中に話題にした、三人揃えば六バカになる例えではなかろうか。もちろん空気を読まずに場の水を差すような真似はしないけれども。
「ハードルが高いなら潜っちゃえ。二者択一なら第三の選択肢を作り出せ。今からわたしたち、ラルヴァンダード、ホルミスダス、グシュナサフの東方の三博士さね」
東方の三博士、または東方の三賢者。
これにちなんだのか、特秘された神話技能知識をふと思い出す。
副王ヨグ=ソトース、始まりの女神シュブ=ニグラス、混沌のナイアルラトホテップの
かくも世界は、闇深い。まあ、わたしにとっては、どうでもいいのだけれども。
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