第313話 御来光の如き輝き
「じゃあ、八咫烏の羽根のアクセサリーを一番先に作ればいいのね?」
「ああ。プロステスの仕事の方は日程に余裕があるから、多少後回しでも構わない」
「そしたら八咫烏の羽根のアクセサリーは三日で作るわ。その後ライト君の装備品に二週間、凍砕蟲のポンチョ二枚に一週間、計一ヶ月弱の製作期間をちょうだい」
「分かった。そしたらアクセは来週受け取りに来るわ。他のものは二月の頭に来ればいいか?」
「ええ、それでお願い」
レオニスとカイの話がちょうどまとまった頃、ライトとマキシがセイとメイとともに部屋に戻ってきた。
「ただいまー!」
「おう、おかえり」
「採寸終わった後に、ぼくもマキシ君といっしょに作業場の見学させてもらっちゃった!」
「おお、どうだった?」
「専用の道具とかたくさんあって、面白かった!フォルの魔導具に小ブタのモチーフを付けてもらうところも見せてもらったんだ!」
ライトがそれは嬉しそうにレオニスに魔導具を見せる。色とりどりの宝石がついたフォル用の魔導具ネックレスの中央に、ちょこなんと小ブタのモチーフがぶら下がっている。
「セイ姉のアクセ作りの腕は超一流だからな、モチーフ付けるのなんて朝飯前だったろ」
「うん、本当にちょちょいのちょいーって付けてくれたよ!ぼくもマキシ君も釘付けになって見ちゃった!ねー、マキシ君!」
「はい、僕も見学させてもらって楽しかったです!」
「いえ、そんなに大した作業ではないんだけど……でも、ライト君達にとても喜んでもらえて、私も嬉しいわ」
ライトとマキシ、二人して頬を紅潮させながら興奮気味に語る。
そしてモチーフを付けたセイも、二人からの絶賛に少々照れながらも嬉しそうに微笑む。
「じゃ、そろそろ帰るか」
「うん、カイさん達もゆっくりお休みしたいだろうしね」
「あのっ、カイさん、セイさん、メイさん、三日後からよろしくお願いします!」
帰宅直前に、三日後からアイギスでの入店体験が決まったマキシがアイギス三姉妹に向かって改めて頭を下げた。
「ええ、私達もマキシ君といっしょに働けるのを楽しみにしてるわね」
カイがマキシに向かって右手を差し出し、マキシもそれに応えて握手を交わす。
ライトは「マキシ君の就職活動が上手くいくといいな」と思いつつ、アイギス三姉妹の家を後にした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌日早朝。
正月三が日も終わり、世の中も少しづつ動き始める。
冒険者ギルドも仕事始めであるこの日、各支部にて早朝から広間に全員集合して支部長の挨拶で始まる。
ラグナロッツァの総本部でも、朝の四時半から大広間にて全体朝礼が行われていた。
「職員諸君、あけましておめでとう!」
白衣に緋袴、襦袢に緋色の髪留め、まさしく巫女服姿のパレンが壇上で元気よく挨拶をする。
パレンのスキンヘッドから放たれる御来光の如き輝きは、まさしく正月明けに相応しい神々しさだ。ちなみに緋色の髪留めは後頭部につけられているが、どういう原理でスキンヘッドに留められているのかさっぱり分からない。
そしてパレンの巫女服姿に誰一人として驚愕することなく、新年の挨拶を聞き入るギルド職員達。
職員達にとってパレンの巫女服程度など日常茶飯事であり、もはや完全に慣れっこなのだ。そのスルー力はさすがとしか言いようがない。
「―――では諸君、本年もどうぞよろしく頼む。ラグナロッツァの平和を守るため、今年も冒険者ギルド一丸となって頑張ろう!!」
挨拶を終えたパレンが壇上から下り、ギルド職員達も各自持ち場に向かう。
午前五時になれば、営業時間開始だ。年末年始に散々飲み食いして有り金を減らした冒険者達が、仕事を求めて冒険者ギルドに殺到するだろう。
サイサクス大陸一の大国、アクシーディア公国ラグナ暦813年。
休暇も明けて、本当の意味で新しい年の始まりである。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
冒険者ギルドの一日が始まってからしばらくして、レオニスが顔を出す。
時刻は六時半を少し過ぎた頃。レオニスの目的は、パレンに会って諸々の話をするためだ。
パレンへの取次のために、窓口に並ぶレオニス。
「よう、クレナ。一昨日ぶりだな」
「あら、レオニスさん。先日はライト君とのご挨拶とともに、素敵なお年賀までいただきありがとうございました」
「気に入ってくれたなら何よりだ。ところでマスターパレンには話を通しておいてくれたか?」
「もちろんですとも。マスターパレンは今執務室におられるはずですので、そちらに向かってくださればすぐにお話できるかと」
「そうか、ありがとう」
レオニスはクレナに礼を言うと、すぐさま執務室に向かった。
扉をノックしてから入室すると、そこには巫女服姿でバリバリと書類仕事をこなすパレンの姿があった。
「おお、レオニス君か。あけましておめでとう!今年もよろしく頼むぞ」
「こちらこそよろしく頼む。マスターパレンも書類に埋もれて大変だな」
「なぁに、書類に目を通して全文チェックして、問題がなければ判子を押して承認するだけの簡単な仕事だよ」
「ぃゃぃゃ一枚二枚の書類ならともかく、この量はおかしいだろ……」
パレンの執務机の上には数多の書類の束が積み重ねられ、まるで棒グラフさながらの様相である。この書類全てに目を通すだけでなく、問題点の有無までをもチェックするとかもはや超人技に等しい。
少なくともレオニスにはできる気がしない。書類の三枚目あたりで頭痛が起きて、五枚目にはもうギブアップするだろう。
だが、レオニスと同じく筋骨隆々の超肉体派元冒険者でありながら事務仕事も完璧にこなしてしまうのが、マスターパレンのすごいところなのだ。
シュパパパパッと書類仕事をこなしながら、パレンがレオニスに問う。
「して、レオニス君。本日の用向きは何だね?年末の例の調査結果の話かい?」
「ああ、例の件についての報告だ」
「そうか、なら人払いをせねばならないな。しばらくしたらシーマ君が書類の整理と追加に来るから、しばしそこで待っていてくれたまえ」
「了解」
パレンの指示に従い、応接ソファに座り待機するレオニス。
はー、やっぱり今日のマスターパレンのファッションは巫女服だったか、俺やクレナの予想通りだったなー。去年の正月の巫女服はブーツにタイツといろいろ混ざってたが、今年は足袋と草履でより統一感を重視したんだな。つか、いつも思うんだけど、その巫女服どこで買ってんの?マスターパレンのその体格のサイズで既製品ってあんの?
今日も待機しがてらマスターパレンのファッションショー観察に勤しむレオニスである。
五分ほど待っていると、パレンの第一秘書シーマが入室してきた。パレンの言っていた通り、パレンの捺印済みの書類を引き取り新たな書類の山を積み上げていくシーマ。
「シーマ君。私はレオニス君と内密の打ち合わせがあるので、今から三十分ほど小休憩させてもらうよ」
「畏まりました。お茶をお持ちいたしましょう」
「いや、お茶はいい。国家機密レベルの打ち合わせなのでな。休憩の間は誰が来ても執務室に入れないでくれたまえ」
「レオニスさんが執務室からお出になるまで人払い、ということでよろしいですか?」
「それで頼む」
「では三十分後にまた参ります。どうぞごゆっくり休憩なさってください」
「ああ、ありがとう」
パレンがシーマに人払いを頼み、シーマが大量の書類の山を持ち執務室を退室していく。
扉が完全に閉まったことを確認した二人は、早速本題に入る。
「……で。調査はどんなものだったかね?」
「まずは午前中に行ったラグナ教プロステス支部の方を話そうか」
レオニスは先日のラグナ教プロステス支部での調査結果を話すことにした。
「まず、結論から言おう。プロステス支部の教会堂の聖具室で、新たな聖遺物を発見した」
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マスターパレンのお約束の巫女服姿のお披露目会です。
筋骨隆々の神主に続き、これまたムキムキマッチョなスキンヘッド巫女。一体どこに需要があんの?という疑問の声が聞こえてきそうですが。
需要云々以前にですね、私の脳内でマスターパレンがしきりに『巫女服!巫女服!』と訴えてくるんですもの……_| ̄|●
作者の頭脳の安寧を得るには、マスターパレンの願いを叶えるしかないのですぅぅぅ(;ω;)
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