第317話 リドール。
「リドールを起動せよ」
バルバドスの言葉を耳にした部下達はハッとした表情を浮かべて……木箱とボロ服を着た男女が乗っている馬車へと視線を向けた。そして、部下達は周囲の兵士達に命令して馬車から木箱とボロ服の男女を引っ張り出させる。
兵士達が木箱を開けていくと、四つあった木箱すべてにそれぞれ顔の違う精巧に作り込まれた女性の人形が寝かせられていた。
人形を目にした者達は気色悪いと美しいとに分かれ、まさに両極端な反応が見られた。
次いで、ボロ服の男女を人形の前に無理矢理に連れ出し、人形の上……ちょうど人形の口の辺りに来るように手を突き出させた。
兵士達は持っていたナイフでボロ服の男女の指先を傷つけて、血を流させる。
人形の口元にポタポタと血液が落ち……その血液は人形に溶け込むように消えていった。
少しの間の後で……様子をうかがっていたバルバドスの部下の一人が呟いた。
『……何も起きないだと?』
『そ、そんな訳がない。言われた通りに……』
部下の呟きを耳にしたバルバドスは声を荒げて苦しい反論する。
『しかし発掘品と聞いています。故障があっても……』
『く、では……どうする!? 白髪の男はもう近くまで近づいてきているのだぞ! 我が隊の先槍第一騎馬部隊のラース部隊長がやられたと伝令が来たのだ!』
『……』
部下は……イヤ、その場に居た者達は黙った。
くっ……。
戦力は十分に残っているというに、目ぼしい指揮官が次々と倒れてしまっている。
そして、最後の頼みであったリドールも軌道しないとなると……。
この戦場がすでに詰んでいる。
『撤退を……』
バルバドスが撤退を口にしようとした時だった。
ブーンッという独特な音があたりに響いた。
リドールの身に付けていた首輪の紫の宝石が一度光る。
四体のリドールは一斉に目を開き、むくっと起き上がってきた。
リドールが起き上がったのを目にするやバルバドスは転びそうになるほどに急ぎ駆け寄る。
『おぉ、ようやく起きたか! ポンコツが!』
『げ、言語はGRYR-09947を登録。実行。……マスター登録をしてください』
『マスターか? 私に決まっているだろう……さっさと戦え』
『マスター個体名『さっさと戦え』を登録。実行』
『個体名が……まぁよい』
『モードをお選びください。メイドモード・戦闘モード・R18モード・マニュアルモード』
『戦闘モードに決まっているだろうが。なんとしても白髪、白い肌の男を殺せ。どんな手段を使ってもいい』
『……戦闘モード登録。実行を開始します』
四体のリドール達がウィーッと何かが高速で回るような音が響き始める。そして、
『戦闘モード実行に際しの注意点……周りの物への危害を加えてしまう可能性がありますがよろしいですか?』
『……かまわない』
『承りました。マスター、ただいまより戦闘を開始します』
四体のリドールはむくっと立ち上がった。そして、きょろきょろと周りを見回し始める。
『標的個体特徴白髪……白肌……男……検索……検索失敗……検索……検索失敗……検索……検索失敗。マスター、標的個体特徴に合致する者がいないようですが』
『そのうち来る。我々は本陣を少し下げて立て直しする』
バルバドスはリドールをその場に置き……本陣の移動を始めるのであった。
「っとと」
アレンは先ほどまでバルバドスが本陣としていた場所に降り立った。
そして、顎に触れながら呟く。
「んーここら辺が本陣かと思ったが後方に移動していたのか? しかし、盾兵で囲んでいるな
アレンの言葉通り、アレンから半径二十メートルほどの距離を取って兵士達が大盾を構えていた。
「あの盾兵達は俺を閉じ込めたいのか? 今までの戦闘を見ていて盾兵で俺が止められると? 他に目的が? ん? なんだあの箱?」
『標的個体特徴に合致する者……発見。戦闘モードを実行します』
バルバドスがマスターとなったリドールの一体がアレンに高速で接近した。そして身の丈ほどの大きさの大剣をアレンの背後から振り下ろされた。
◆
新作小説
【底辺勇者〜奴隷転生だけど綺麗なお姉さんに拾われたから幸せ異世界ライフ〜】
を書きました。ちなみにですが。私のファンタジー小説は世界線が微妙に繋がっていたりするのでいろいろ楽しめると思うのですが…。よろしければ、ご一読いただけると嬉しいです。(〃ω〃)
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