第271話 コニー。
「うーん、ふふふ」
酒瓶を抱えたカトレアが気持ちよさげに眠っていた。
カトレアを前にしてアレンは腰に手を当てて考えている。
「どうするかな? 小屋に運ぶか? いや、焚火の前の方が温かいか……」
アレンは座り直した。
そして、脇に置いてあった木のカップを手に取って……木のカップに入っていた酒をグイッと飲み干す。
「ふはぁーこのワインはなかなかうまいな。……しかし出会って一日の男の前でここまで酔うかな? こういうところじゃないかな? 見た目綺麗なのに結婚できないのは……まぁ、面白い奴でよかったか」
苦笑した表情でアレンはカトレアに視線を一回向けた。そして、視線を上げて、星で埋め尽くされた空を見上げる。
「さてさて、この死地から生き残ることができるのか」
アレン達が砂漠地帯に飛ばされ二日目の早朝。
ここは切り取られた土地で……その中にあった小屋の前。
「【サモン】」
アレンが地面の書かれた魔法陣に手を置いて【サモン】と唱える。すると、白い煙と共に青い羽根を大きく広げたコニーが姿を現した。
コニーの姿を目にしたカトレアは目を見開いて驚きの表情を浮かべる。
「まさか、青い鳥……」
ただ当のコニーはカトレアを気にすることなく、飛び上がった。そして、立ち上がったアレンの手の上に飛び乗る。
「こんばんは、アレン。けど、ずいぶん夜中に呼び出してくれるじゃない。驚いたわよ」
「ごめん。朝早すぎた? けど、もう日が出ているんだけどな?」
「ん? 私が居た山は確かに真っ暗だったわよ?」
「そうなのか、時間の流れが違うのだろうか?」
「何かあったの? ここもの暑いけど? どこなのここ?」
「あぁ……今はすごーく面倒な状況でな。時空間魔法で、どこにあるかも分からんすごく暑い砂漠ってところに飛ばされてしまった。食料も水も……手で数えるほどの日数分しかない。そして、見た感じ……補給する場所もない。ここは死地だ。何とか……この状況を打開したくコニーを呼んだわけ」
「それは大変ね。私に渡す果物は用意できるの?」
「ちょっと厳しいが、コニーに渡すくらいの果実は用意できる」
「厳しいのね? そうね……帰った後に私のお願いを聞いてくれるなら、しばらく付き合ってあげるわよ?」
「……困り事か? どんな願いだ?」
「私の同胞が人間に捕まったの。それを逃がしてあげてくれないかしら?」
「誰に捕まっているか分かっているのか?」
「ええ、もちろん」
「分かった。できる限りのことはしよう」
「ピピ、決まりね」
コニーは羽ばたき、アレンの手から飛び上がる。そして、アレンの頭上をクルクルと旋回し始めた。
「よろしく頼む」
「それで? 私は何をすればいいのかしら?」
「ちょっと、待って……カトレア」
アレンはアレンとコニーのやり取りを黙って見守っていたカトレアへと声をかける。アレンに声をかけられたカトレアはビクンと体を震わせて返事する。
「は、はい」
「何か紙とペン……それからコンパスはあったか?」
「ありました。持ってきます」
カトレアは兵士達の遺留品を保管している小屋の中へと急ぎ入って行った。カトレアを見送るとコニーが首を傾げた。
「いつものメンバーじゃないのね?」
「あぁ、アイツはカトレア……魔法の巻き添えになった不幸な奴だ。仲良くしてやってくれ」
「嫌よ。興味をそそられないわ」
「そうか」
そっぽを向いたコニーに対して、アレンは苦笑を浮かべていた。
それから、カトレアが持ってきたコンパスを手にしたアレンはコニーに視線を向ける。
「コニー、まずはこの周辺地理を把握したい。俺を連れて、できるだけ高く飛んで調べてくれ」
コニーがアレンの頭上に飛び上がる。すると、アレンはコニーの足を掴んだ。
それから、コニーはアレンを連れて大きく羽を羽ばたかせ上空へと飛んでいった。
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