第255話 シャワー室より。
ギルディアとシーザーの奴……慌てて着替え出て行ったが、何かあったのか?
さぁ、わかんねーな。
まぁいいか。
そうだな。そういやぁ聞いたか?
ん? なんだよ?
サンチェスト王国のこと、スゲーことになっているみたいだぞ?
なんだよ。英雄アレンが居なくなって……存続が危ないって言われていたんだっけか?
そうだったんだが……英雄アレンの一番の部下であるホーテが軍総司令に立ってから帝国に連戦連勝だとか?
あの帝国に対して……スゲーな。英雄の部下はやはり只者ではなかったということか。
あぁ只者じゃなかったんだな。それで更にアースト王国と一時的な同盟を結んで……奪われた領地の奪還に動いているという話だぞ?
マジかよ。サンチェスト王国とアースト王国は長年犬猿の仲ではなかったのか? それが同盟って……。
詳しい事情までは聞かないが……サンチェスト王国の現国王がアースト王国に外遊した時に取り付けたそうだぞ?
国王が敵対国に外遊するって聞いたことねーが。命知らずだなぁ。
ハハ、確かに。
サンチェスト王国にはぶっ飛んだ奴が生まれやすいのかも知れんな……とさっさと行くか。
そうだな。
ふぅー行ったか。
急いで髪を染めないと。
それにしても……サンチェスト王国は大丈夫そうだな。
さすがはホーテだ。
しかし、ホーテの性格を知っている俺としてはストレスで死なないか、不安になるんだが。
……大きく時間が空いたら、一回サンチェスト王国に帰ってみるか。
サンチェスト王国に帰っていたホランド達が言うには……今の国王様は俺のことも歓迎してくれるみたいだし。
しかし、今の国王様……ホーテを軍総司令に口説き落としたこともそうだが。
まさか、アースト王国と同盟を結ぶとはやるなぁ。
っと感心している場合じゃない。急がないと……。
アレンは手早く毛染め剤で白銀の髪を赤茶色に染めて……着替えると脱衣所を後にするのだった。
「ん? なんだか騒がしいな」
アレンがギルド会館のロビーに戻ったところで、何やら騒がしかった。
騒ぎの中心に視線を向けるとリナリーとベルディアとがカウンターで話していた。
「何よ。この指名クエストは」
「え、不満あるの? 狩りの警備をするだけで……これだけの大金をもらえるのよ? 破格じゃない」
「う、そうかも知れないけど」
「じゃ、受けるってことでいいわね?」
「えー……」
「もうなんの? 彼らと何かあったの?」
「いや、そういう訳では……ないんだけど」
騒ぎの中心となっているリナリーとベルディアの元へアレンが向かうと、アレンを目にしたリナリーとベルディアから声をかけられる。
「あ、アレン」
「あ、アレン君」
「どうしたんだ? リナリー」
アレンは訳が分からないといった感じで、リナリーには声をかけた。すると、リナリーは視線を揺らして答える。
「ここは私が話を付けておくから……アレンはホップ達と待っていて」
「いや、俺がシャワーを浴びている間もかかっているとしたら時間かかり過ぎじゃない? 俺も話を聞くよ?」
アレンの申し出に対してリナリーはうっと言葉を濁した。すると、ベルディアが頷いて口を開く。
「そうね。アレン君にも聞いてもらいたいわ」
「それで何を話していたの?」
「貴方達、銀翼に指名クエストが出たのよ」
「ん、それって草むしりとか?」
「いいえ、今回は別よ。アレン君は見に行ったかしら武闘会」
「見に行ったよ。それがどうしたの?」
「その武闘会に出場したベラールド王国のラーベルク王子様が狩りに出るから……その護衛を依頼なされたのよ? 確かに責任は大きいでしょうが、金貨五枚って破格じゃないかしら?」
「あぁーなるほど」
ベルディアの説明を受けてアレンは納得したように頷き。そして、リナリーへと視線を向ける。
アレンに視線を向けられたリナリーは視線を逸らして答える。
「な、何よ」
「いや、なんでもないよ。けど……受けるしかないんじゃない?」
「え、えー」
「指名クエストで金貨五枚も出されたらねぇ。それに相手は偉い人なんでしょ? それならよっぽどの理由でもない限り、無理でしょう? ギルドも困っちゃうでしょ?」
「そうなのよ。ギルドも困るのよ」
アレンがリナリーに諭すように話しかけると、ベルディアも同意してウンウンっと頷いた。
「うー」
「これも冒険者の仕事だよ」
アレンはそういうと、リナリーが持っていたパーティメンバーのギルドカードをスッと抜き取ってベルディアに手渡すとクエスト手続を済ませてしまう。
こうして、アレン達冒険者パーティ銀翼はラーベルク王子の狩りに同行することになったのだった。
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